カーエアコンのガス漏れに補充だけはNG?過充填のリスクと修理時の確認ポイント

カーエアコン技術編・第8話

カーエアコンが冷えなくなったとき、「ガスが減っているのでは?」と考えて、とりあえず冷媒を追加するケースがあります。

しかし、当社では冷媒漏れが疑われる状態での安易な「追いガス」はおすすめしていません。
冷媒が減っているのであれば、まず「どこから漏れているのか」「なぜ漏れたのか」を確認する必要があるためです。

冷媒は、足せば足すほど冷えるものではありません。

残量が分からないまま追加すると、規定量を超える「過充填」となり、高圧異常や冷え不良を招くおそれがあります。

この記事では、補充だけで対応するリスク、冷媒漏れとコンプレッサーオイルの関係、修理時に確認したいポイントを解説します。

安易な冷媒補充が危険な理由

カーエアコンには、車両ごとにメーカーが定めた冷媒の規定充填量があります。
冷えが悪いという症状だけで、冷媒不足と決めつけることはできません。

残量を把握せずに追加すると、過充填になる可能性があります。
過充填はコンデンサーでの放熱・凝縮に影響し、高圧側の圧力上昇などを招くことがあります。

過充填などで起こりうるトラブル

  • 冷え不良
  • 高圧異常
  • コンプレッサーへの負担増加
  • ホースやシール部への負担増加
  • 保護制御によるコンプレッサー停止

冷媒の残量が分からないまま補充するリスクと、漏れの確認・修理・規定量充填の流れを示した図
図:安易な冷媒補充のリスクと、漏れの原因確認・修理の考え方。配管を開ける作業の前には、残っている冷媒を適切に回収します。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。
圧力やサイトグラスだけで冷媒量を決めない

停止時の圧力だけでは、冷媒の残量を判断できません。
また、サイトグラスがある車両でも、その見え方だけで適正量と判断せず、対象車両の整備要領に従って管理することが重要です。

高圧・低圧がともに低いときは、漏れ跡も確認

指定条件で測った高圧・低圧がともに低く、冷えが弱い場合は冷媒不足を疑います。配管接続部、シール部、ホースのカシメ部などに油染みや汚れの集中がないか確認し、車両に適した漏れ点検につなげます。

油染みは点検する場所を絞る手掛かりです。漏れが確認できたらその箇所を修理し、規定量を重量管理して充填したあと、圧力・冷え具合・漏れの有無を再確認します。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

冷媒が漏れると、オイルも失われることがある

コンプレッサーオイルは、コンプレッサーの内部だけに留まっているわけではありません。
一部は冷媒とともに冷凍サイクル内を循環しています。

そのため、漏れ方や漏れ箇所によっては、冷媒とともにコンプレッサーオイルも系外へ失われることがあります。

冷媒漏れでは、冷媒量だけでなくオイルの状態にも注意が必要です。

オイルが不足すると潤滑不良を起こし、摩擦や内部温度の上昇を経て、コンプレッサーの損傷・焼付きにつながるおそれがあります。

漏れて減った冷媒だけを追加すれば、すべて解決するわけではありません。
ただし、冷媒漏れがあれば必ずオイル不足になるという意味ではなく、漏れの状態や整備内容に応じた確認が必要です。

オイルが漏れ出るだけでなく、戻りが悪くなることもあります

オイルの一部は冷媒とともに循環してコンプレッサーへ戻ります。冷媒不足で循環が悪くなると、オイルが回路内に残り、コンプレッサーへ十分に戻らなくなることがあります。これは、オイルが外へ漏れて総量が減る問題とは別です。潤滑・冷却不足を防ぐため、漏れ修理と指定冷媒量の管理、オイルの種類・量・循環状態を確認します。オイルを感覚で追加して解決しようとしないでください。詳しくはロック・焼付きと再発防止の記事をご覧ください。
技術参考:DENSO コンプレッサー故障診断資料

冷媒はどこから漏れる?

冷媒漏れは、コンプレッサー本体だけでなく、配管や熱交換器などでも発生する可能性があります。

主な確認箇所

  • コンプレッサーのシャフトシール部(シャフトシールがある構造の場合)
  • コンプレッサー本体の接合部
  • Oリングや配管接続部
  • ホースやカシメ部
  • コンデンサー
  • エバポレーター
  • サービスバルブ周辺

考えられる原因

  • シールやOリングの経年劣化
  • 振動や腐食
  • 飛び石などによる損傷
  • 接続部の不具合
  • 異常高圧による負担

漏れている部位だけでなく、なぜ漏れが発生したのかも確認することが大切です。

異常高圧が冷媒漏れにつながることもある

高圧側の圧力が異常に高くなると、ホース・Oリング・シール部・コンプレッサー接合部などに通常以上の負担がかかります。

その結果、劣化していた部分などから漏れが発生したり、既存の漏れが悪化したりすることがあります。

高圧異常で確認したい原因候補

  • 冷媒の過充填
  • コンデンサーの放熱不足
  • 電動ファンの作動不良
  • 冷凍サイクル内の流路制限

※流路制限による圧力の現れ方は、制限箇所や作動条件によって異なります。

すべての冷媒漏れが、異常高圧によるものではありません。

経年劣化、振動、腐食、シール不良、飛び石などでも漏れは発生します。漏れがあるという理由だけで、高圧異常と決めつけないことが重要です。

補充だけでは根本修理にならない

冷媒を追加して一時的に冷えるようになっても、漏れ箇所が残っていれば、再び冷媒が減少します。

漏れの原因に高圧異常や放熱不良が関係している場合は、その原因を残したまま補充しても、同じトラブルを繰り返す可能性があります。

大切なのは、「冷媒が減っているか」だけでなく、「なぜ減ったのか」まで確認することです。

漏れが疑われるときの確認・修理の流れ

以下は、整備時に確認したい基本的な流れです。実際の点検方法や作業順序は、車両の状態とメーカーの整備要領に従います。

1.作動状態を確認する
作動条件を確認したうえで、高圧・低圧、吹出口温度、ファンの作動などを点検します。圧力だけで冷媒不足や故障箇所を断定しません。

2.漏れ箇所と原因を確認する
配管・接続部・コンプレッサー・コンデンサー・エバポレーターなどを点検します。放熱不良や高圧異常が関係していないかも確認します。

3.配管を開ける前に冷媒を回収する
配管の取り外しや部品交換の前に、残っている冷媒を適切な回収機器で回収します。

4.必要な修理・部品交換を行う
漏れ箇所と原因に対応し、対象車両・部品の整備基準に従ってオイルの種類・量も確認します。

5.真空引き・漏れの確認を行う
指定された手順で系統内の空気や水分を除去し、漏れの確認を行います。

6.指定冷媒を規定量充填する
車両指定の冷媒を使用し、メーカー指定量を重量で管理して充填します。

7.修理後の作動状態を確認する
高圧・低圧、吹出口温度、冷却ファンの作動、漏れの有無などを確認します。

オイルも「とりあえず足す」ものではありません

冷媒漏れに伴ってオイルが失われた可能性があっても、感覚で追加すればよいわけではありません。

コンプレッサーオイルは、少なすぎれば潤滑不足につながり、多すぎても冷房性能などに悪影響を与える可能性があります。

冷媒とオイルは、どちらも指定に合わせて管理します。

部品交換や漏れ修理では、対象車両・コンプレッサーの整備基準に従って、適切なオイルの種類と量を確認することが重要です。

冷媒漏れで覚えておきたいポイント

  • 冷え不良だけで冷媒不足と決めつけない
  • 残量不明のまま補充すると、過充填になる可能性がある
  • 過充填は高圧異常や冷え不良につながることがある
  • 冷媒漏れに伴い、オイルも失われることがある
  • 漏れ箇所だけでなく、漏れた原因も確認する
  • 補充だけでは、漏れの根本修理にならない
  • 修理時は冷媒の回収・真空引き・規定量充填を適切に行う
  • オイルの種類・量も、整備基準に従って管理する

冷媒漏れが疑われるときは、
漏れ箇所と原因を確認し、
修理と適切な冷媒量・オイル量の管理につなげましょう。
ご注意
本記事は、カーエアコンの冷媒漏れについて代表的な考え方を解説したものです。
冷媒の種類・指定充填量、コンプレッサーオイルの種類・量、点検方法は、車種やシステムによって異なります。
実車の整備では、対象車両および部品メーカーの整備要領・指定値に従ってください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

適合確認フォーム LINEで適合確認 メールで相談