カーエアコン技術編・第10話
カーエアコンの点検で高圧側の圧力が高いとき、確認するのはコンプレッサーの良否ではなく、まず冷媒を冷やして熱を逃がす側の状態です。
高圧が高くなる主な要因は、コンプレッサーが送り出した冷媒をコンデンサーで十分に放熱できているか、電動ファンが適切に作動しているか、冷媒量が車両指定量に合っているかといった、冷凍サイクルの放熱側・充填状態にあります。
高圧異常は、コンデンサーで熱を逃がせない、電動ファンが十分に作動しない、冷媒量が適正でないなど、冷凍サイクルの放熱側・充填状態を確認する症状です。
この記事では、高圧が高いときに確認する順序を、コンデンサー・電動ファン・冷媒量を中心に解説します。圧力計の数値だけで、交換する部品を決めるための記事ではありません。
高圧側とは?コンプレッサー吐出側からエキパン入口まで
カーエアコンでは、コンプレッサーが低圧側から吸い込んだ冷媒を圧縮し、高温・高圧の状態で送り出します。一般的なエキスパンションバルブ方式では、コンデンサーとレシーバーを通り、エキパンの入口までが高圧側です。
図解|高圧が高いときに優先して確認する3つ
放熱を確認
・リキッドパイプ
バルブ
汚れ・フィンの状態・通風を確認します。
必要な条件で十分に風を送れているか確認します。
回収後、車両指定量を重量管理して確認します。
※高圧の数値だけで、交換する部品は決めません。
コンデンサーは、送り出された冷媒の熱を車外へ放出し、冷媒を液化させる部品です。ここで十分に熱を逃がせなければ、冷媒は凝縮・液化しにくくなり、高圧側の圧力が上がりやすくなります。
つまり高圧が高いときは、まずコンデンサーで放熱できているかを確認します。
冷凍サイクル全体の流れは、カーエアコンの仕組みと冷凍サイクルの記事で解説しています。
高圧が高いときに確認する主な原因
1.コンデンサーの放熱不足
コンデンサー表面の汚れ、フィンの腐食・変形、コンデンサーとラジエーターの間にたまったごみなどは、通風を妨げます。熱を逃がせなければ冷媒は十分に凝縮・液化しにくくなり、高圧側の圧力が上がります。
↓
冷媒が十分に凝縮・液化しにくい
↓
高圧側の圧力が上がりやすくなる
2.電動ファン・冷却ファンの作動不良
停車中や低速走行中は、コンデンサーへ当たる走行風が少なくなります。このとき放熱を支えるのが、電動ファンや冷却ファンです。
ファンが作動しない、回転が弱い、必要なタイミングで作動しない場合は、コンデンサーの放熱不足につながります。「走行中は比較的冷えるが、渋滞や信号待ちでは冷えが弱い」場合は、ファンの作動とコンデンサー周辺の通風を確認します。ただし、この症状だけでファン不良と断定することはできません。
3.冷媒を入れすぎている(過充填)
冷媒の充填量は車両ごとに指定されています。残量が分からないまま冷媒を追加し、指定量を超えると、コンデンサーでの放熱・凝縮に影響し、高圧側の圧力が上がる原因になります。
冷媒を適切に回収し、必要な真空引きを行ったうえで、対象車両の指定量を重量管理して充填します。
圧力の測定結果だけで「過充填」と断定することもできません。外気温、測定条件、ファン作動、制御状態などを確認し、車両の整備要領に従って判断します。冷媒漏れ時の補充については、カーエアコンのガス漏れに補充だけはNG?の記事もご確認ください。
4.空気などの非凝縮ガスが混入している
冷媒回路に混入した空気は、通常の作動条件では冷媒のように凝縮しません。高圧上昇の原因候補になるため、回路を開けた修理や充填の履歴、真空引きの実施状況も確認します。高圧が高いだけで空気混入とは断定せず、放熱状態や充填量とあわせて点検します。
空気混入が疑われる場合は、整備工場で冷媒を適切に回収し、メーカー指定の手順で真空引き・規定量充填を行います。冷媒を大気へ放出したり、圧力だけを見て抜き足ししたりしないでください。
技術参考:DENSO コンプレッサー診断表(原因候補の参考。実車の数値・手順は車両メーカーの整備要領を優先します)。
「詰まり」と高圧異常を混同しない
レシーバータンク、リキッドパイプ、エキスパンションバルブ、配管などで冷媒の流れが妨げられると、詰まりの位置や程度によって圧力の出方が変わります。
たとえばフィルタードライヤーの制限では、高圧・低圧とも低く出たり、制限部の後で霜付きが出たりすることがあります。流路制限は、圧力・配管温度・霜付き・冷え方を総合して確認します。
レシーバータンクやエキスパンションバルブの役割は、レシーバータンクの記事、エキスパンションバルブの記事で解説しています。
車両によっては圧力スイッチや圧力センサーで異常を検出し、コンプレッサーの作動を停止・制限します。停止したことだけで本体故障とは判断せず、停止前の圧力、ファン作動、センサー情報を確認します。作動させるために保護回路を短絡・無効化しないでください。作動条件やしきい値は車種ごとに異なります。
高圧・低圧が両方高い場合の見分け方
高圧だけでなく低圧も高いときは、過充填と放熱不足の両方を点検します。追加充填の履歴があるなら規定量との照合、コンデンサーに汚れがあるなら通風状態、ファンなら必要な条件で十分に風を送れているかを確認します。
「両方高い」という同じ測定結果でも、必要な対応は冷媒量の是正、清掃、ファンやその電気系統の修理などに分かれます。冷媒量と放熱状態をそれぞれ確認することが、交換部品を選ぶ前の切り分けになります。
技術参考:DENSO コンプレッサー診断表
高圧が高いときの確認順序
外気温、回転数、冷房設定、冷却ファンの作動などを確認して測定します。
2.コンデンサー周辺の放熱状態を確認する
表面の汚れ、フィンの損傷、ラジエーターとの間の詰まり、通風状態を確認します。
3.電動ファン・冷却ファンの作動を確認する
作動の有無だけでなく、必要な状態で十分に回転しているかを確認します。
4.冷媒を回収し、指定量で充填されているか確認する
冷媒量は感覚で補充せず、対象車両の指定量を重量管理します。回路開放・充填の履歴を確認し、空気混入が疑われる場合は適切な回収・真空引き・再充填につなげます。
5.必要に応じて配管温度・霜付き・流路の状態を確認する
流路制限が疑われる場合は、制限位置を含めて冷凍サイクル全体を確認します。
高圧・低圧の基本的な見方は、カーエアコンの高圧・低圧の記事も参考にしてください。
まとめ|高圧が高いときは、まず放熱側と冷媒量を確認する
・高圧が高いときは、まずコンデンサーの放熱状態、電動ファン・冷却ファンの作動、冷媒量を確認する
・冷媒量は、回収・真空引き後に車両指定量を重量管理して充填する
・空気などの非凝縮ガスの混入と、圧力保護制御も確認する
・流路制限は位置によって圧力の出方が異なり、「詰まり=高圧が高い」ではない
・圧力の数値だけで、交換する部品を決めない
適合確認や交換前の確認でお困りの場合は、品番・車両情報・現品写真をご用意のうえお問い合わせください。
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本記事はカーエアコンの高圧側の圧力が高い場合に確認する代表的な項目を解説したものです。圧力値、点検条件、冷媒種類、指定充填量、制御内容は車種により異なります。実車の整備では対象車両および部品メーカーの整備要領を確認してください。

