エキスパンションバルブとは?エキパン不良の症状・エバポレーターの仕組みと交換時の注意点

カーエアコンのエキスパンションバルブをイメージした画像。減圧・流量調整の役割と交換時の確認ポイントを紹介。

カーエアコン技術編・第5話

コンデンサーやレシーバーを通過した高圧の液冷媒が、次に向かうのがエキスパンションバルブ(エキパン)です。


エキスパンションバルブは、高圧の液冷媒を減圧し、エバポレーターへ送る冷媒量を調整する部品です。

詰まり・固着・開きすぎなどが起きると、冷え不良や圧力異常、液戻りなどにつながる場合があります。

この記事では、エキパンの役割と不良時の症状、エバポレーターの働き、過熱度や凍結の仕組み、コンプレッサー交換時にエキパンを同時交換する理由を解説します。

エキスパンションバルブの役割

コンデンサーで放熱・凝縮された冷媒は、高圧の液冷媒としてエキスパンションバルブへ送られます。

エキパンは冷媒を狭い流路に通して減圧し、低圧・低温の状態でエバポレーターへ供給します。

冷媒の状態変化

  1. 高圧の液冷媒がエキパンへ入る
  2. 狭い流路を通って減圧される
  3. 一部の液冷媒が気化する
  4. 低圧・低温の液体とガスが混在した状態で、エバポレーターへ入る

減圧すると、なぜ低温になる?

冷媒が高圧側から低圧側へ減圧されると、一部の液冷媒が気化し、低温の液体とガスが混ざった状態になります。

圧力が低くなることで、エバポレーター内では冷媒が低い温度で蒸発できるようになります。

冷房負荷に応じて冷媒量を調整する

一般的な感温式エキスパンションバルブ(TXV)は、エバポレーター出口側の冷媒状態に応じて開度を変え、送り込む冷媒量を調整します。

冷房負荷に対して冷媒が少なすぎると、エバポレーター全体を十分に使えず、冷房能力が低下します。反対に多すぎると、冷媒が蒸発しきれず、液戻りのリスクが高まります。

過熱度とは?液戻りとどう関係する?

過熱度は、ガス冷媒の温度が、その圧力に対応する蒸発温度(飽和温度)より何度高いかを表します。


過熱度 = ガス冷媒の温度 − その圧力に対応する飽和温度

エバポレーターでは、液冷媒が熱を吸収して蒸発します。蒸発し終えたガス冷媒がさらに熱を受けると、過熱度が生じます。

冷媒の供給が過剰になると、十分に蒸発しきれず、過熱度が不足する場合があります。その状態では、液冷媒がコンプレッサー側へ戻る可能性に注意が必要です。

適正な過熱度や測定方法は車種・システム・運転条件によって異なります。固定の数値だけで判断せず、対象車両の整備要領書を確認します。

エキパン不良で起こる症状


エキスパンションバルブの役割、詰まり・閉じすぎ・開きすぎによる影響、交換時の確認事項をまとめた図
図1:エキスパンションバルブ不良による影響の概念図。圧力や症状の出方は、車両や運転条件によって異なります。図中の同時交換条件は、太田美品通商の条件です。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

① 詰まり・閉じすぎ

流路が詰まったり、必要以上に閉じた状態になったりすると、エバポレーターへ供給される冷媒量が不足します。

  • 低圧側の圧力が低下しやすくなる
  • エバポレーター全体を十分に使えなくなる
  • 吹出口温度が下がらず、冷房能力が低下する
  • 条件によっては高圧側の圧力が上昇する場合がある

ただし、詰まると必ず高圧が上がるわけではありません。冷媒が上流側に滞留する条件では高圧が上昇することがありますが、詰まりが強く、循環量が極端に減った場合などは、高圧側も十分に上がらないことがあります。

圧力の出方だけで、エキパン不良と断定しないことが重要です。

高圧・低圧、冷媒量、配管温度、霜付き、エバポレーターの風量などを組み合わせて判断します。

② 開きすぎ・開いたままの固着・制御不良

エキパンが必要以上に開くと、エバポレーターへ冷媒が過剰に供給される場合があります。

  • 冷媒が十分に蒸発しきれなくなる
  • 過熱度が不足する
  • 低圧側の圧力が高めになる場合がある
  • 冷えが弱くなったり、不安定になったりする
  • 液冷媒がコンプレッサー側へ戻るリスクが高まる

コンプレッサーは、基本的にガス冷媒を吸入する前提で作動します。液冷媒が大量に戻ると、液圧縮や潤滑状態の悪化により、内部へ大きな負担を与える可能性があります。

なお、エバポレーターの凍結は、開度だけで判断できません。蒸発圧力、風量、温度センサー、凍結防止制御なども確認します。

低圧と配管温度から、開きすぎ・詰まりを確認する

低圧が高く、低圧ホースやサービスバルブ付近が異常に冷たい場合は、エキパンの開きすぎを確認します。外付け感温筒を使う構造では、感温筒と配管の接触状態も点検対象です。通常の結露と、異常な冷え・霜付きを区別して記録します。

低圧が低く、エキパン付近に霜が付く場合は、詰まりや凍結を確認します。配管温度、冷媒量、エバポレーター側の風量と合わせて、冷媒の供給が不足している箇所を調べます。

点検時は「霜があった」だけでなく、エキパン本体・入口側・出口側のどこに出たかを記録してください。確認できた場所が分かる写真と、同時に測った高圧・低圧があると、相談時に状態を伝えやすくなります。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

エバポレーターは車室内の熱を吸収する

エバポレーターは、車室内側の空調ユニット内部に設置される熱交換器です。

エキパンを通過した低圧・低温の冷媒が入り、空気から熱を吸収しながら蒸発します。ブロワによって送られた空気は、エバポレーターを通る際に冷やされ、車室内へ送られます。


エバポレーターでは、冷媒が蒸発するときに空気の熱を吸収しています。

冷房と同時に除湿も行う

湿った空気が冷たいエバポレーターを通ると、条件に応じて空気中の水分がフィン表面で結露します。この水がドレンホースから車外へ排出されることで、除湿も行われます。

エアコン作動中や作動後に車両の下へ落ちる水は、正常な結露水である場合があります。

エバポレーターが凍る「フロスト」

エバポレーターの表面温度が下がりすぎると、水分が霜や氷になって付着します。この状態をフロストと呼びます。

フィンが氷で覆われると空気の通り道が狭くなり、吹出口の風量や冷房能力が低下します。

凍結時に見られる症状の例

  1. 最初はよく冷える
  2. エバポレーターが徐々に凍結する
  3. 吹出口の風量が弱くなり、冷えにくくなる
  4. エアコンを止めて氷が溶けると、再び冷える

こうした症状では、エキパンだけでなく、エバポレーター温度センサー、ブロワ風量、キャビンフィルター、冷媒量、制御系も確認します。

凍結を防止する仕組み

車種やシステムによって、次のような装置や制御を用いて、エバポレーター温度や蒸発圧力が下がりすぎないようにしています。

  • エバポレーター温度センサー/サーミスタ
  • マグネットクラッチのON・OFF制御
  • 可変容量コンプレッサーの制御
  • EPR(エバポレーター圧力調整弁)

すべての車両に同じ装置が備わっているわけではありません。対象車両の構成を確認します。

固定オリフィスチューブを使う方式もある

すべてのカーエアコンが、開度を変えるエキスパンションバルブを使用しているわけではありません。

固定オリフィスチューブは、固定された小孔で冷媒を減圧します。一般的なTXVのように開度を変えて流量を調整せず、アキュムレーターやコンプレッサー制御などと組み合わせて冷凍サイクルを構成します。

コンプレッサー交換時にエキパンも交換する理由


太田美品通商では、A/Cコンプレッサー交換時に、レシーバーとエキスパンションバルブの同時交換を最低限必要としています。

① 細い流路に異物が入り込む可能性がある

コンプレッサーが焼き付いたり内部破損したりすると、金属粉、摩耗粉、劣化オイル、スラッジなどが冷媒回路へ流出する場合があります。

エキパン内部には、流量を調整する狭い流路やニードル機構があります。異物が入り込むと、詰まり・固着・作動不良の原因になる可能性があります。

② 細かな内部機構を十分に洗浄することが難しい

冷媒回路をフラッシングする場合でも、エキパンを通したまま回路全体を洗浄するのではなく、取り外しや交換を含め、メーカー指定の手順に従います。

エキパンの細かな内部機構に異物が残っていないことを、洗浄だけで確実に確認するのは困難です。

③ エキパンの異常が、元の故障原因だった可能性がある

コンプレッサー故障によってエキパンが汚染される場合だけでなく、エキパンの異常が先に発生していた可能性も考えます。

詰まり・閉じすぎの場合

冷媒循環量が減り、冷媒やオイルの戻り、コンプレッサーの潤滑・冷却条件が悪化する可能性があります。

開きすぎ・制御不良の場合

冷媒の過剰供給によって過熱度が不足し、液戻りによるコンプレッサーへの負担が増す可能性があります。

新しいコンプレッサーを取り付ける際には、異物や作動不良などの原因を残さないことが重要です。

同時交換とあわせて、冷凍サイクル全体を確認する

レシーバーとエキパンを交換すれば、すべての原因が解消するわけではありません。コンプレッサー故障時には、次の項目も確認します。

  • コンデンサー内部の汚染と放熱状態
  • 冷却ファンの作動
  • 異常高圧の有無
  • 冷媒の過充填・不足
  • コンプレッサーオイルの量・種類
  • 配管内部の詰まり
  • 水分や空気の混入
  • エバポレーター側の状態

壊れた部品を交換するだけでなく、なぜ壊れたのかを確認することが再故障防止につながります。

冷え不良だけでエキパン不良と決めつけない

冷え不良は、冷媒不足・過充填、コンプレッサーの能力不足、コンデンサーの放熱不足、冷却ファン不良、レシーバーの詰まり、配管の流路制限などでも起こります。

また、エバポレーターの凍結、ブロワ風量不足、各種センサーや制御の異常も確認が必要です。


圧力値や症状を、一つだけ見て故障部品を断定しないことが重要です。

高圧・低圧、冷媒量、配管温度、霜付き、吹出口温度、風量などを総合して診断します。

まとめ|エキパンは減圧と冷媒流量の調整を担う

  • エキパンは高圧の液冷媒を減圧し、エバポレーターへ送る量を調整します。
  • 詰まりでは冷媒供給が不足し、低圧側が低下しやすくなります。
  • 詰まり時の高圧側の挙動は、循環量や運転条件などで変わります。
  • 開きすぎでは、過熱度不足や液戻りに注意が必要です。
  • エバポレーターでは、冷媒の蒸発による吸熱と、結露による除湿が行われます。
  • 凍結による風量低下では、温度センサー・風量・制御系なども確認します。
  • 当社では、コンプレッサー交換時にレシーバーとエキパンの同時交換を最低限必要としています。
  • 再故障防止には、冷凍サイクル全体から原因を確認することが重要です。
次回のカーエアコン技術編

第6話:カーエアコンのエバポレーターとは?
空気を冷やす仕組みと除湿、凍結による風量低下、点検時の確認ポイントを解説します。

車種ごとの構造・指定値について

本記事は、代表的な感温式エキスパンションバルブを使用するカーエアコンを中心に解説しています。バルブ構造、オリフィスチューブ方式、圧力挙動、過熱度、凍結防止制御などは、車種・年式・冷媒・システム構成・運転条件によって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書およびメーカー指定値を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンのレシーバータンクとは?役割とコンプレッサー交換時に同時交換が必要な理由

レシーバータンクのイメージと、気液分離・一時貯蔵・ろ過・乾燥の4つの役割を紹介する画像。

カーエアコンの冷凍サイクルには、レシーバータンク(レシーバードライヤー)と呼ばれる部品があります。

筒状のタンクをイメージする方も多いかもしれませんが、単に冷媒をためるだけの部品ではありません。


レシーバータンクは、液冷媒の一時貯蔵・気液分離・ろ過・乾燥を行い、エキスパンションバルブへ液冷媒を安定して供給する重要部品です。

内部の乾燥剤には吸湿能力の限界があり、フィルターには異物が蓄積する可能性があります。そのため、修理時には消耗部品として交換を考える必要があります。

特にコンプレッサー交換時は、古いレシーバータンクに異物や水分を残したまま、新しいコンプレッサーを取り付けてしまわないことが重要です。

この記事では、レシーバータンクの役割、同時交換が重要な理由、一体型の構造、アキュムレーターとの違いを解説します。

レシーバータンクは冷凍サイクルのどこにある?

一般的なエキスパンションバルブ(TXV)方式では、レシーバータンクはコンデンサーの後、エキスパンションバルブの前に配置されます。

別体レシーバータンクを使用する代表的な流れ

  1. コンプレッサーで冷媒を圧縮する
  2. コンデンサーで放熱・凝縮する
  3. レシーバータンクを通る
  4. エキスパンションバルブで減圧する
  5. エバポレーターで車室内の熱を吸収する
  6. コンプレッサーへ戻る

レシーバータンクがあるのは高圧側です。コンデンサーで凝縮された冷媒を受け取り、エキスパンションバルブへ液冷媒を送ります。

エキスパンションバルブの入口までは高圧側で、冷媒が低圧になるのは、バルブを通過して減圧された後です。


カーエアコンのレシーバータンクの4つの役割、内部構造のイメージ、同時交換の理由、アキュムレーターとの違いをまとめた図
図1:レシーバータンクの役割と同時交換の重要性。内部構造は車種によって異なります。図中の同時交換条件は、太田美品通商の条件です。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

レシーバータンクの4つの役割

① 液冷媒を一時的に貯蔵する

コンデンサーで凝縮された液冷媒を一時的に保持します。冷房負荷や運転条件によって冷媒の状態が変化するなかで、エキスパンションバルブへの安定した供給を支えます。

② 気体と液体を分離する

冷媒を気体と液体に分離し、エキスパンションバルブへ液冷媒を送り出します。バルブ入口へ高圧の液冷媒を安定して供給することが、冷凍サイクルの安定につながります。

③ 異物をろ過する

内部のフィルターは、冷媒回路内の異物を捕捉します。故障や摩耗によって発生した金属粉・摩耗粉・スラッジなどが、エキスパンションバルブなどの細い流路へ流れるのを抑えます。

④ 冷媒回路内の水分を吸着する

内部には乾燥剤(デシカント)が入っており、冷媒回路内の水分を吸着します。

水分の混入は、腐食やオイル劣化のほか、条件によっては膨張部付近での氷結や流路障害などにつながる可能性があります。

レシーバータンクを消耗部品として扱う理由

消耗部品というのは、タンク本体がタイヤのように摩耗して減っていくという意味ではありません。重要なのは、内部の乾燥剤とフィルターの状態です。

  • 乾燥剤:吸着できる水分量には限界があります。
  • フィルター:冷媒回路内の異物が蓄積している可能性があります。

乾燥剤は回路内の水分を吸着し、回路を開放して外気に触れた場合にも湿気を吸着します。使用期間や開放履歴などによって、内部の状態は変わります。

外観がきれいでも、乾燥剤やフィルターが正常とは限りません。

見た目だけで再使用を判断せず、故障状況や対象車両の整備要領、交換条件を確認することが重要です。

コンプレッサー交換時に同時交換が重要な4つの理由

コンプレッサーを新品やリビルト品へ交換する際は、元のコンプレッサーが故障した原因と、故障によって回路内に残った汚染物を確認する必要があります。

① 故障したコンプレッサー由来の異物が残ることがある

コンプレッサーが焼き付いたり内部破損したりすると、金属粉・摩耗粉・劣化オイルなどが冷媒回路へ流出する場合があります。

レシーバータンクのフィルターが異物を捕捉していれば、古いタンクの再使用によって、汚染物を回路内に残す可能性があります。

② 乾燥剤の吸湿能力には限界がある

コンプレッサー交換では冷媒回路を開放するため、外気中の湿気が侵入する可能性があります。

すでに使用された乾燥剤の状態も考慮し、新しい乾燥剤を備えた部品へ交換することが、冷凍サイクルを正常な状態へ戻すうえで重要です。

③ 内部を洗浄して再使用する部品ではない

冷媒回路の一部では、構造やメーカー指定に応じてフラッシングを行う場合があります。

ただし、レシーバータンクには乾燥剤とフィルターが内蔵されています。内部を洗浄して新品同様の状態へ戻し、再使用するという考え方の部品ではありません。

④ 新しいコンプレッサーの再故障を防ぐため

新品やリビルト品へ交換しても、異物・水分・流路制限の原因が回路内に残っていれば、新しいコンプレッサーへ悪影響を与える可能性があります。

故障原因や汚染物を、交換後の冷凍サイクルへ持ち越さないことが重要です。

古いレシーバータンクに問題が残っていた場合のトラブル

異物や水分、流路制限などが残っている場合、次のようなトラブルにつながる可能性があります。

  • 異物が回路内を循環し、新しいコンプレッサーへ流入する
  • エキスパンションバルブなどの流路が詰まる
  • 冷媒循環が不足し、冷えが悪くなる
  • 水分による腐食や氷結が起こる
  • 冷凍サイクルの圧力に異常が生じる
  • コンプレッサーへの負担が増える

ただし、圧力異常や冷え不良だけでレシーバータンク不良と断定することはできません。コンプレッサー、コンデンサー、冷却ファン、冷媒量、エキスパンションバルブ、エバポレーターなどを含めて診断します。

レシーバーの詰まりは、前後の温度差と霜の位置を確認

レシーバー内部で冷媒の流れが妨げられると、入口と出口に温度差が生じることがあります。DENSOの診断表でも、低圧側の圧力低下に加え、レシーバー前後の温度差や出口側の強い霜付きが、詰まりを確認する手掛かりとして示されています。

圧力の数値とともに、入口・出口の配管温度、霜が付いている位置を記録します。単に「配管に水滴がある」という状態と区別して確認することが大切です。コンデンサー一体型など、車両によって構造が異なるため、対象車両の整備要領に沿って点検します。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

レシーバーとエキパンを交換するだけで大丈夫?

レシーバータンクとエキスパンションバルブの交換は重要ですが、それだけですべての再故障原因がなくなるわけではありません。

コンプレッサーが焼き付いたり、内部破損によって大量の金属粉が発生したりした場合は、回路内の汚染範囲を確認します。あわせて、故障を引き起こした作動条件にも注意が必要です。

汚染の確認

  • コンデンサー内部
  • 配管・ホース内部
  • エバポレーター側

作動条件の確認

  • 冷却ファンの作動と放熱状態
  • 高圧異常の有無
  • 冷媒の過充填・不足
  • コンプレッサーオイルの量・種類

交換部品の選定とあわせて、なぜ元のコンプレッサーが壊れたのかを確認することが、再故障防止につながります。

独立したレシーバータンクが見当たらない車両もある

車両によっては、レシーバードライヤー機能がコンデンサー側へ一体化されており、独立した筒型タンクが見当たらない場合があります。

サブクールコンデンサーには、側面のモジュレータ内部などに乾燥剤やフィルターを組み込んだ構造があります。

  • 乾燥剤カートリッジなどを交換できるもの
  • 単体交換ができず、コンデンサーASSYで交換するもの

独立したタンクがない場合も、対象車両の部品構成と整備要領を確認してください。交換できる範囲や作業方法は、車種・製品によって異なります。

レシーバータンクとアキュムレーターの違い

見た目が似ている場合がありますが、取り付け位置と主な役割が異なります。

部品 主な位置 主な役割
レシーバータンク
(レシーバードライヤー)
高圧側
コンデンサー後
液冷媒の保持・気液分離・ろ過・乾燥
アキュムレーター 低圧側
エバポレーター後
気液分離により、液冷媒が大量にコンプレッサーへ戻るのを防ぎ、主にガス冷媒を送る

一般的に、レシーバードライヤーはエキスパンションバルブ方式、アキュムレーターは固定オリフィス方式などで使用されます。

冷媒がR134aかR12かといった、冷媒の種類だけで区別するものではありません。対象車両のシステム構成で確認します。

太田美品通商のコンプレッサー交換時の条件


当社では、A/Cコンプレッサー交換時に、レシーバータンク(レシーバードライヤー)とエキスパンションバルブの同時交換を最低限必要としています。

旧部品に異物・水分・流路異常を残したままコンプレッサーだけを交換すると、新しく取り付けたコンプレッサーの再故障につながる可能性があるためです。

新品・リビルト品を正常に使用するために、同時交換とあわせて、冷凍サイクル全体の点検・整備を行うことが重要です。

まとめ|内部の異物や水分を持ち越さないために

  • レシーバータンクは、一般的なTXV方式ではコンデンサー後の高圧側にあります。
  • 液冷媒の一時貯蔵・気液分離・ろ過・乾燥を担います。
  • 乾燥剤の吸湿能力には限界があり、フィルターには異物が蓄積する可能性があります。
  • 内部をフラッシングして再使用する部品ではありません。
  • コンデンサー一体型では、車種によって交換可能な部品や作業方法が異なります。
  • アキュムレーターとは、位置と役割が異なります。
  • 当社では、コンプレッサー交換時にレシーバーとエキパンの同時交換を最低限必要としています。
  • 再故障防止には、交換だけでなく、故障原因と冷凍サイクル全体の確認が必要です。

レシーバータンクは目立たない部品ですが、冷媒回路内の異物や水分への対策を担っています。コンプレッサー交換時には、古い部品に残る問題を持ち越さないことが重要です。

車種ごとの構造・交換方法について

本記事は、代表的なエキスパンションバルブ式カーエアコンを中心に解説しています。レシーバータンク、レシーバードライヤー、モジュレータ、乾燥剤カートリッジ、アキュムレーターなどの構造・配置・交換方法は、車種・年式・冷媒・システム構成によって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書およびメーカー指定の作業内容を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンの仕組みとは?冷凍サイクルと5つの主要部品の役割

カーエアコンが冷える仕組みを紹介するアイキャッチ。吹き出し口から車内へ広がる冷風のイメージ

カーエアコン技術編・第1話

車のエアコンをONにすると、吹き出し口から冷たい風が出てきます。では、カーエアコンはどのように空気を冷やしているのでしょうか。

カーエアコンは、車室内の熱を冷媒に吸収させ、その熱を車外へ放出することで冷房を行います。

この仕組みを支える冷媒の循環と状態変化を「冷凍サイクル」といいます。

今回は、コンプレッサー、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターの役割と、冷媒が循環する仕組みを解説します。

基本例として、レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な構成を取り上げます。実際の構造や制御方法は、車種やシステムによって異なります。

冷媒は5つの主要部品を通って循環する

代表的なレシーバーサイクルでは、冷媒は次の順番で流れ、再びコンプレッサーへ戻ります。

  1. コンプレッサー:ガス冷媒を圧縮する
  2. コンデンサー:熱を車外へ放出し、冷媒を液化させる
  3. レシーバータンク:液冷媒を一時的に蓄える
  4. エキスパンションバルブ:冷媒を減圧し、流量を調整する
  5. エバポレーター:空気から熱を吸収し、冷媒を蒸発させる

エバポレーターを出たガス冷媒は、再びコンプレッサーに吸い込まれます。

コンプレッサー、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターを循環する冷媒の流れと状態変化
レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な冷凍サイクル。冷媒が圧縮・凝縮・減圧・蒸発を繰り返し、車室内の熱を車外へ運びます。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

冷媒は、圧力・温度・状態を変えながら熱を運ぶ

冷媒は、同じ状態のまま循環しているわけではありません。サイクル内で圧力や温度が変わり、気体・液体・両方が混在した状態へと変化します。

工程 主な部品 冷媒の変化
圧縮 コンプレッサー 低圧のガスから、高温・高圧のガスになる
凝縮 コンデンサー 熱を放出し、ガスから高圧の液体へ変化する
減圧 エキスパンションバルブ 高圧の液体から、低温・低圧の液とガスが混在した状態になる
蒸発 エバポレーター 空気から熱を吸収して液体が蒸発し、低圧のガスになる

この「圧縮・凝縮・減圧・蒸発」を繰り返すことで、車室内の熱を車外へ運んでいます。

① コンプレッサー|ガス冷媒を圧縮する

コンプレッサーは、エバポレーターから戻った低圧のガス冷媒を吸い込み、圧縮して高温・高圧のガス冷媒にします。

圧縮された冷媒は、次のコンデンサーへ送り出されます。

コンプレッサーの役割は、冷媒を圧縮し、サイクル内を循環させることです。

コンプレッサーが直接、冷たい空気を作っているわけではありません。

コンプレッサーには、斜板式、スルーベーン式、スクロール式など、さまざまな構造があります。コンプレッサーの種類や容量制御方式、交換時の注意点は、カーエアコンのコンプレッサー解説もご覧ください。

② コンデンサー|冷媒の熱を車外へ放出する

コンデンサーには、コンプレッサーから高温・高圧のガス冷媒が入ります。

走行風や冷却ファンの風によって熱が車外へ放出され、冷媒はガスから液体へ変化していきます。この変化を「凝縮」といいます。

コンデンサーは、冷媒が運んできた熱を車外へ放出する熱交換器です。

放熱不足や冷却ファンの不具合は、冷媒圧力や冷房性能に影響します。冷却方式と高圧異常の確認ポイントは、コンデンサーの解説をご覧ください。

③ レシーバータンク|液冷媒を一時的に蓄える

コンデンサーで液化した冷媒は、レシーバータンクへ送られます。

レシーバータンクは、冷房負荷に応じて冷媒を供給できるよう、液冷媒を一時的に蓄えます。内部にストレーナや乾燥剤を備え、異物や水分を取り除く構造のものもあります。

ストレーナ
冷媒回路内の異物などを取り除きます。

乾燥剤
冷媒回路内の水分を吸着します。

すべての車両に、独立したレシーバータンクがあるわけではありません。車種によっては、コンデンサーと気液分離器(モジュレータ)を組み合わせたサブクールコンデンサー方式などが採用されています。構造や交換時の確認点は、レシーバータンクの役割と同時交換についてもご覧ください。

④ エキスパンションバルブ|冷媒を減圧し、流量を調整する

レシーバータンクを通過した高圧の液冷媒は、エキスパンションバルブへ送られます。

冷媒がバルブの絞りを通過すると圧力が下がり、低温・低圧の液とガスが混在した状態となってエバポレーターへ入ります。

また、エキスパンションバルブは、エバポレーターの状態に応じて冷媒の流量を調整します。構造や不具合時の確認点は、エキスパンションバルブの解説にまとめています。

主な役割は2つです。
  • 高圧の液冷媒を減圧する
  • エバポレーターへ送る冷媒量を調整する

⑤ エバポレーター|空気の熱を冷媒に吸収させる

エキスパンションバルブを通過した低温・低圧の冷媒は、エバポレーターへ入ります。

ブロワによって送られた空気がエバポレーターを通過すると、その空気の熱が冷媒に吸収されます。熱を奪われた空気は温度が下がり、車室内へ送られます。

一方、冷媒は熱を吸収して蒸発し、ガスとなってコンプレッサーへ戻ります。

エバポレーターは、空気から熱を吸収する熱交換器です。除湿・凍結・冷え不良の確認点は、エバポレーターの解説もご覧ください。

カーエアコンが除湿できる理由

エバポレーターには、空気を冷やすとともに除湿する働きがあります。

湿った空気が冷たいエバポレーター表面に触れて冷やされると、条件に応じて空気中の水分が結露し、水滴になります。この水はドレンホースを通って車外へ排出されます。

夏場、エアコンを使用した車の下に水が落ちていることがあります。正常なエアコン作動による結露水であれば、異常ではありません。

この除湿作用は、雨天時などの窓ガラスの曇り取りにも役立ちます。

高圧側と低圧側はどこで分かれる?

冷凍サイクルでは、コンプレッサーで冷媒の圧力が上がり、エキスパンションバルブで圧力が下がります。この2つを境に、高圧側と低圧側に分けて考えます。

区分 範囲 主な冷媒の状態変化
高圧側 コンプレッサー吐出側から、エキスパンションバルブ入口側まで 高温・高圧のガスから、高圧の液体へ
低圧側 エキスパンションバルブ出口側から、コンプレッサー吸入側まで 低温・低圧の液とガスが混在した状態から、低圧のガスへ

高圧側と低圧側の圧力は、故障診断の重要な情報です。ただし、圧力だけで故障部品を断定することはできません。

冷媒圧力は、外気温、コンプレッサーの作動条件、冷媒量、コンデンサーの放熱状態、冷却ファン、エキスパンションバルブの状態などによって変化します。

冷媒は多く入れるほど冷えるわけではない

カーエアコンには、車両ごとに指定された適正な冷媒量があります。

冷媒が不足している場合
エバポレーターへ十分な冷媒を供給できず、冷房能力が低下する原因になります。

冷媒を入れすぎた場合
高圧側の圧力が異常に高くなる原因となり、冷房性能の低下や、コンプレッサー・配管・コンデンサーなどへの過大な負担につながる可能性があります。

冷媒は、対象車両の指定充填量と整備要領に従って充填することが基本です。

「冷えないから、とりあえず追加する」という判断では、冷媒量が適正になるとは限りません。

サブクールコンデンサー方式などでは、従来のレシーバーサイクルと冷媒量の確認方法が異なる場合があります。対象車両の方式と指定値を確認してください。

冷えないときは、冷凍サイクル全体を確認する

コンプレッサーが正常でも、次のような原因で冷房能力が低下することがあります。

  • コンデンサーが十分に放熱できていない
  • 冷却ファンが正常に作動していない
  • 冷媒量が適正でない
  • エキスパンションバルブに異常がある
  • エバポレーターが正常に熱交換できていない
  • 冷媒回路や制御系に異常がある
「エアコンが冷えない」という症状だけで、コンプレッサー故障と決めつけることはできません。

冷媒量、圧力、放熱状態、関連部品の作動などを合わせて確認し、原因を絞り込むことが大切です。

冷凍サイクルを理解することが、診断の第一歩

カーエアコンは、冷媒が圧縮・凝縮・減圧・蒸発を繰り返し、車室内の熱を車外へ運ぶことで冷房を行います。

5つの主要部品の役割
  • コンプレッサー:ガス冷媒を圧縮する
  • コンデンサー:車外へ熱を放出して冷媒を凝縮させる
  • レシーバータンク:液冷媒を蓄え、ストレーナや乾燥剤で異物・水分を除去する
  • エキスパンションバルブ:冷媒を減圧し、流量を調整する
  • エバポレーター:冷媒を蒸発させ、空気から熱を吸収する

どこかが正常に機能しなければ、冷房性能が低下する可能性があります。部品交換を判断する際も、冷凍サイクル全体の状態を確認することが重要です。

次回のカーエアコン技術編

コンプレッサーとはどんな部品?種類・構造・役割を詳しく解説

冷凍サイクルの中心となるコンプレッサーについて、構造や方式の違いを解説します。

本記事の説明範囲

本記事は、レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な構成を中心に説明しています。

実際の構造、使用冷媒、制御方法、圧力、冷媒充填量は、車種・年式・システムによって異なります。実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書、メーカー指定値、使用冷媒、指定充填量をご確認ください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

適合確認フォーム LINEで適合確認 メールで相談