カーエアコンのレシーバータンクとは?役割とコンプレッサー交換時に同時交換が必要な理由

レシーバータンクのイメージと、気液分離・一時貯蔵・ろ過・乾燥の4つの役割を紹介する画像。

カーエアコンの冷凍サイクルには、レシーバータンク(レシーバードライヤー)と呼ばれる部品があります。

筒状のタンクをイメージする方も多いかもしれませんが、単に冷媒をためるだけの部品ではありません。


レシーバータンクは、液冷媒の一時貯蔵・気液分離・ろ過・乾燥を行い、エキスパンションバルブへ液冷媒を安定して供給する重要部品です。

内部の乾燥剤には吸湿能力の限界があり、フィルターには異物が蓄積する可能性があります。そのため、修理時には消耗部品として交換を考える必要があります。

特にコンプレッサー交換時は、古いレシーバータンクに異物や水分を残したまま、新しいコンプレッサーを取り付けてしまわないことが重要です。

この記事では、レシーバータンクの役割、同時交換が重要な理由、一体型の構造、アキュムレーターとの違いを解説します。

レシーバータンクは冷凍サイクルのどこにある?

一般的なエキスパンションバルブ(TXV)方式では、レシーバータンクはコンデンサーの後、エキスパンションバルブの前に配置されます。

別体レシーバータンクを使用する代表的な流れ

  1. コンプレッサーで冷媒を圧縮する
  2. コンデンサーで放熱・凝縮する
  3. レシーバータンクを通る
  4. エキスパンションバルブで減圧する
  5. エバポレーターで車室内の熱を吸収する
  6. コンプレッサーへ戻る

レシーバータンクがあるのは高圧側です。コンデンサーで凝縮された冷媒を受け取り、エキスパンションバルブへ液冷媒を送ります。

エキスパンションバルブの入口までは高圧側で、冷媒が低圧になるのは、バルブを通過して減圧された後です。


カーエアコンのレシーバータンクの4つの役割、内部構造のイメージ、同時交換の理由、アキュムレーターとの違いをまとめた図
図1:レシーバータンクの役割と同時交換の重要性。内部構造は車種によって異なります。図中の同時交換条件は、太田美品通商の条件です。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

レシーバータンクの4つの役割

① 液冷媒を一時的に貯蔵する

コンデンサーで凝縮された液冷媒を一時的に保持します。冷房負荷や運転条件によって冷媒の状態が変化するなかで、エキスパンションバルブへの安定した供給を支えます。

② 気体と液体を分離する

冷媒を気体と液体に分離し、エキスパンションバルブへ液冷媒を送り出します。バルブ入口へ高圧の液冷媒を安定して供給することが、冷凍サイクルの安定につながります。

③ 異物をろ過する

内部のフィルターは、冷媒回路内の異物を捕捉します。故障や摩耗によって発生した金属粉・摩耗粉・スラッジなどが、エキスパンションバルブなどの細い流路へ流れるのを抑えます。

④ 冷媒回路内の水分を吸着する

内部には乾燥剤(デシカント)が入っており、冷媒回路内の水分を吸着します。

水分の混入は、腐食やオイル劣化のほか、条件によっては膨張部付近での氷結や流路障害などにつながる可能性があります。

レシーバータンクを消耗部品として扱う理由

消耗部品というのは、タンク本体がタイヤのように摩耗して減っていくという意味ではありません。重要なのは、内部の乾燥剤とフィルターの状態です。

  • 乾燥剤:吸着できる水分量には限界があります。
  • フィルター:冷媒回路内の異物が蓄積している可能性があります。

乾燥剤は回路内の水分を吸着し、回路を開放して外気に触れた場合にも湿気を吸着します。使用期間や開放履歴などによって、内部の状態は変わります。

外観がきれいでも、乾燥剤やフィルターが正常とは限りません。

見た目だけで再使用を判断せず、故障状況や対象車両の整備要領、交換条件を確認することが重要です。

コンプレッサー交換時に同時交換が重要な4つの理由

コンプレッサーを新品やリビルト品へ交換する際は、元のコンプレッサーが故障した原因と、故障によって回路内に残った汚染物を確認する必要があります。

① 故障したコンプレッサー由来の異物が残ることがある

コンプレッサーが焼き付いたり内部破損したりすると、金属粉・摩耗粉・劣化オイルなどが冷媒回路へ流出する場合があります。

レシーバータンクのフィルターが異物を捕捉していれば、古いタンクの再使用によって、汚染物を回路内に残す可能性があります。

② 乾燥剤の吸湿能力には限界がある

コンプレッサー交換では冷媒回路を開放するため、外気中の湿気が侵入する可能性があります。

すでに使用された乾燥剤の状態も考慮し、新しい乾燥剤を備えた部品へ交換することが、冷凍サイクルを正常な状態へ戻すうえで重要です。

③ 内部を洗浄して再使用する部品ではない

冷媒回路の一部では、構造やメーカー指定に応じてフラッシングを行う場合があります。

ただし、レシーバータンクには乾燥剤とフィルターが内蔵されています。内部を洗浄して新品同様の状態へ戻し、再使用するという考え方の部品ではありません。

④ 新しいコンプレッサーの再故障を防ぐため

新品やリビルト品へ交換しても、異物・水分・流路制限の原因が回路内に残っていれば、新しいコンプレッサーへ悪影響を与える可能性があります。

故障原因や汚染物を、交換後の冷凍サイクルへ持ち越さないことが重要です。

古いレシーバータンクに問題が残っていた場合のトラブル

異物や水分、流路制限などが残っている場合、次のようなトラブルにつながる可能性があります。

  • 異物が回路内を循環し、新しいコンプレッサーへ流入する
  • エキスパンションバルブなどの流路が詰まる
  • 冷媒循環が不足し、冷えが悪くなる
  • 水分による腐食や氷結が起こる
  • 冷凍サイクルの圧力に異常が生じる
  • コンプレッサーへの負担が増える

ただし、圧力異常や冷え不良だけでレシーバータンク不良と断定することはできません。コンプレッサー、コンデンサー、冷却ファン、冷媒量、エキスパンションバルブ、エバポレーターなどを含めて診断します。

レシーバーの詰まりは、前後の温度差と霜の位置を確認

レシーバー内部で冷媒の流れが妨げられると、入口と出口に温度差が生じることがあります。DENSOの診断表でも、低圧側の圧力低下に加え、レシーバー前後の温度差や出口側の強い霜付きが、詰まりを確認する手掛かりとして示されています。

圧力の数値とともに、入口・出口の配管温度、霜が付いている位置を記録します。単に「配管に水滴がある」という状態と区別して確認することが大切です。コンデンサー一体型など、車両によって構造が異なるため、対象車両の整備要領に沿って点検します。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

レシーバーとエキパンを交換するだけで大丈夫?

レシーバータンクとエキスパンションバルブの交換は重要ですが、それだけですべての再故障原因がなくなるわけではありません。

コンプレッサーが焼き付いたり、内部破損によって大量の金属粉が発生したりした場合は、回路内の汚染範囲を確認します。あわせて、故障を引き起こした作動条件にも注意が必要です。

汚染の確認

  • コンデンサー内部
  • 配管・ホース内部
  • エバポレーター側

作動条件の確認

  • 冷却ファンの作動と放熱状態
  • 高圧異常の有無
  • 冷媒の過充填・不足
  • コンプレッサーオイルの量・種類

交換部品の選定とあわせて、なぜ元のコンプレッサーが壊れたのかを確認することが、再故障防止につながります。

独立したレシーバータンクが見当たらない車両もある

車両によっては、レシーバードライヤー機能がコンデンサー側へ一体化されており、独立した筒型タンクが見当たらない場合があります。

サブクールコンデンサーには、側面のモジュレータ内部などに乾燥剤やフィルターを組み込んだ構造があります。

  • 乾燥剤カートリッジなどを交換できるもの
  • 単体交換ができず、コンデンサーASSYで交換するもの

独立したタンクがない場合も、対象車両の部品構成と整備要領を確認してください。交換できる範囲や作業方法は、車種・製品によって異なります。

レシーバータンクとアキュムレーターの違い

見た目が似ている場合がありますが、取り付け位置と主な役割が異なります。

部品 主な位置 主な役割
レシーバータンク
(レシーバードライヤー)
高圧側
コンデンサー後
液冷媒の保持・気液分離・ろ過・乾燥
アキュムレーター 低圧側
エバポレーター後
気液分離により、液冷媒が大量にコンプレッサーへ戻るのを防ぎ、主にガス冷媒を送る

一般的に、レシーバードライヤーはエキスパンションバルブ方式、アキュムレーターは固定オリフィス方式などで使用されます。

冷媒がR134aかR12かといった、冷媒の種類だけで区別するものではありません。対象車両のシステム構成で確認します。

太田美品通商のコンプレッサー交換時の条件


当社では、A/Cコンプレッサー交換時に、レシーバータンク(レシーバードライヤー)とエキスパンションバルブの同時交換を最低限必要としています。

旧部品に異物・水分・流路異常を残したままコンプレッサーだけを交換すると、新しく取り付けたコンプレッサーの再故障につながる可能性があるためです。

新品・リビルト品を正常に使用するために、同時交換とあわせて、冷凍サイクル全体の点検・整備を行うことが重要です。

まとめ|内部の異物や水分を持ち越さないために

  • レシーバータンクは、一般的なTXV方式ではコンデンサー後の高圧側にあります。
  • 液冷媒の一時貯蔵・気液分離・ろ過・乾燥を担います。
  • 乾燥剤の吸湿能力には限界があり、フィルターには異物が蓄積する可能性があります。
  • 内部をフラッシングして再使用する部品ではありません。
  • コンデンサー一体型では、車種によって交換可能な部品や作業方法が異なります。
  • アキュムレーターとは、位置と役割が異なります。
  • 当社では、コンプレッサー交換時にレシーバーとエキパンの同時交換を最低限必要としています。
  • 再故障防止には、交換だけでなく、故障原因と冷凍サイクル全体の確認が必要です。

レシーバータンクは目立たない部品ですが、冷媒回路内の異物や水分への対策を担っています。コンプレッサー交換時には、古い部品に残る問題を持ち越さないことが重要です。

車種ごとの構造・交換方法について

本記事は、代表的なエキスパンションバルブ式カーエアコンを中心に解説しています。レシーバータンク、レシーバードライヤー、モジュレータ、乾燥剤カートリッジ、アキュムレーターなどの構造・配置・交換方法は、車種・年式・冷媒・システム構成によって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書およびメーカー指定の作業内容を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンのコンデンサーとは?冷却方式・サブクール構造と高圧異常の確認ポイント

カーエアコンのコンデンサーをイメージした画像。レシーバー・サブクール構造と高圧異常の確認ポイントを紹介。

カーエアコン技術編・第3話

コンプレッサーから吐き出された高温・高圧のガス冷媒が、次に向かうのがコンデンサーです。

コンデンサーは、冷媒の熱を外気へ放出し、ガス冷媒を液冷媒へ変える熱交換器です。

冷え不良や高圧異常では、コンデンサーの放熱・通風状態も確認します。

コンプレッサーが正常でも、コンデンサーで十分に放熱できなければ、冷凍サイクルに影響します。

この記事では、コンデンサーの役割、前置き・サイド配置と冷却ファンの違い、レシーバーとサブクール方式の仕組み、故障診断で確認したいポイントを解説します。

コンデンサーの役割と「凝縮」の仕組み

エバポレーターで車室内の熱を吸収した冷媒は、低圧のガス状態でコンプレッサーへ戻ります。そこで圧縮され、高温・高圧のガス冷媒となってコンデンサーへ送られます。

コンデンサーでは、冷媒が外気へ熱を放出しながら、気体から液体へ変わります。この状態変化を「凝縮」と呼びます。

コンデンサー内の冷媒の変化

  1. 高温・高圧のガス冷媒が流入する
  2. 外気へ放熱し、凝縮が始まる
  3. 気体と液体が混在する状態になる
  4. さらに放熱し、高圧の液冷媒になる

コンデンサーの内部を流れる冷媒は、入口から出口まで同じ状態ではありません。十分に凝縮させるためには、コンデンサーに必要な量の空気を通し、熱を外へ逃がすことが重要です。

配置によって異なるコンデンサーの冷却方式

コンデンサーの取り付け位置は車両によって異なります。車両前面に配置するもののほか、トラックなどでは車体側面やキャブ周辺に配置する構成もあります。


前置き・サイド配置のコンデンサーと、走行風・共用ファン・専用ファンによる冷却を比較した図
図1:コンデンサーの配置と冷却方式の代表例。必要な風量が確保されているかを確認することが重要です。青い矢印は空気の流れる向きを表し、空気が冷える意味ではありません。コンデンサーでは冷媒が熱を放出し、通過する空気がその熱を受け取ります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

前置きコンデンサー

多くの乗用車では、コンデンサーは車両前方の冷却モジュール内に配置されています。走行中は前方から入る走行風を利用して放熱します。

停車中や低速走行時は走行風が少なくなるため、冷却ファンによる強制通風が重要になります。

専用ファンがなくても、共用ファンで冷却する構成がある

コンデンサー専用の電動ファンが見当たらなくても、ファンによる冷却を行っていないとは限りません。

車種によっては、ラジエーターファンやエンジン冷却ファンを利用して、ラジエーターとコンデンサーの両方へ通風します。

点検では、専用ファンの有無に加えて、コンデンサーに必要な風量が確保されているかを確認します。

サイドコンデンサー

トラックや一部の商用車では、車体側面やキャブ周辺などにコンデンサーを配置します。こうしたものをサイドコンデンサーと呼びます。

正面からの走行風を利用しにくい構成もあるため、専用電動ファンによる強制通風が特に重要になる車両があります。

ファンが回っていても、風量が十分とは限らない

サイドコンデンサー車で冷え不良や高圧異常が発生した場合は、コンデンサー本体とあわせて、次の項目を確認します。

  • ファンモーターの作動、回転数、回転方向
  • ファンブレードの損傷
  • ヒューズ・リレー・配線の状態
  • 電源電圧
  • ファン制御の状態
  • 圧力センサー/スイッチなどの入力
  • 通風経路の状態と実際の風量

回転数不足や通風経路の異常によって、ファンが回っていても必要な放熱能力を確保できていない場合があります。

走ると冷えるのに、停車すると冷えにくい場合

走行中は冷えるのに、信号待ちやアイドリングでは冷えにくい場合、停車時に必要な強制通風を確保できていない可能性があります。

冷却ファン・ファン制御・コンデンサーの目詰まり・周辺の通風状態を確認します。ただし、この症状だけでファン不良と断定せず、冷媒量やサイクル全体の状態も含めて診断します。

「板コンデンサー」とマルチフロー構造

整備現場では、サイドコンデンサーと区別する意味などで、前面に配置された平板状のコンデンサーを「板コンデンサー」と呼ぶことがあります。

「板コンデンサー」は、統一された正式な構造分類名ではありません。

実際の構造を確認するときは、冷媒通路の構造を示す「マルチフロー」や、過冷却部を持つ「サブクール」といった特徴を区別して確認します。

マルチフローコンデンサーは、多数の細いチューブへ冷媒を分けて流す構造です。細い冷媒通路と多数のフィンによって熱交換面積を確保し、コンパクトなサイズで放熱できるよう設計されています。

一方、冷媒通路が細いため、コンプレッサーの内部破損などで金属粉や異物が流入した場合は、内部汚染に注意が必要です。

外部の目詰まりと、内部の詰まり・汚染

外部の目詰まり:空気の通り道を確認する

虫、泥、ホコリ、枯れ葉、綿ぼこり、油分を含んだ汚れ、フィン潰れなどによって、通風が悪くなることがあります。空気が十分に通らなければ、放熱能力が低下します。

コンデンサーとラジエーターが近接している車両では、両者の間に汚れが溜まることもあります。正面から見える表面だけでなく、通風経路全体を確認します。

内部の汚染:金属粉や摩耗粉に注意する

コンプレッサーが焼き付いたり内部破損したりすると、金属粉や摩耗粉が冷媒回路へ流出することがあります。これらがコンデンサーの細い通路へ入り込むと、流路制限や詰まりの原因になる可能性があります。

構造によっては内部を十分に洗浄することが難しいため、汚染の程度やメーカーの指示により、コンデンサー交換が必要になる場合があります。

レシーバータンク/レシーバードライヤーの役割

従来型のレシーバーサイクルでは、コンデンサーの後にレシーバータンク(レシーバードライヤー)が配置されます。

主な役割

  1. 液冷媒を一時的に保持する
  2. 気体と液体を分離する
  3. エキスパンションバルブへ液冷媒を安定して供給する
  4. ストレーナ/フィルターで異物を取り除く
  5. 乾燥剤で水分を吸着する

水分を取り除く理由

冷媒回路への水分混入は、内部腐食、オイルや冷媒の劣化反応、膨張部付近での凍結、流路制限などの原因になり得ます。そのため、レシーバードライヤーには乾燥剤(デシカント)が使用されています。

配管を外したまま長時間放置すると、外気中の湿気が入り込みます。部品交換時は、配管や部品の開口部をできるだけ速やかに塞ぐことが重要です。

レシーバーとアキュムレーターの違い

見た目が似ていても、配置と役割が異なります。

部品 配置 主な役割
レシーバードライヤー 高圧側 液冷媒の保持、気液分離、乾燥、ろ過
アキュムレーター 低圧側 気液分離により、液冷媒がコンプレッサーへ大量に戻るのを防ぐ

サブクールコンデンサーとモジュレータ

コンデンサーの後に独立したレシーバーを配置する方式のほかに、レシーバー/ドライヤー機能と過冷却部をコンデンサー側へ組み込んだ、サブクールコンデンサーがあります。


別体レシーバーを使用する方式と、モジュレータ・過冷却部を備えるサブクールコンデンサー方式の比較図
図2:従来型とサブクールコンデンサー方式の冷媒の流れと各部の役割を比較した概念図。実際の構成は車種・年式・メーカーによって異なります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

モジュレータの役割

サブクールコンデンサーには、側面などにモジュレータと呼ばれる気液分離部を一体化した構造があります。

モジュレータは、従来型のレシーバードライヤーに近い役割を持ち、気液分離、冷媒保持、異物除去、水分吸着を行います。

乾燥剤やフィルターを交換できるタイプがある一方、内部だけを交換できず、コンデンサーASSYで交換する構造もあります。対象製品の構造と整備手順を確認してください。

サブクール=過冷却とは?

過冷却とは、凝縮した液冷媒を、その圧力に対応する凝縮温度よりも低い温度まで冷却することです。

代表的な冷媒の流れ

  1. 凝縮部でガス冷媒を液化する
  2. モジュレータで気体と液体を分離する
  3. 過冷却部で液冷媒をさらに冷却する
  4. エキスパンションバルブへ送る

液冷媒を過冷却することで、エキスパンションバルブへ安定した液冷媒を供給しやすくなります。

サブクール度は、車種や条件に合わせて判断する

専門的な診断では、サブクール度(過冷却度)を確認することがあります。

サブクール度 = 凝縮飽和温度 − コンデンサー出口の液冷媒温度

適正値は、冷媒、車種、システム構造、運転条件によって異なります。すべての車両を同じ温度差で正常・異常と判断することはできません。

サブクール度や気泡だけで、冷媒を追加しない

過冷却度は大きければ大きいほどよい、というものではありません。サブクール方式では、サイトグラスの気泡が消える点と適正充填量が一致しない場合があります。気泡が消えたことだけで充填を終了したり、過冷却度を増やす目的で追加したりせず、車両指定量を重量管理します。

高圧異常は、放熱不足以外でも起こる

高圧側の圧力は、コンプレッサーだけで決まるものではありません。コンデンサーで十分に放熱できなければ凝縮状態に影響し、高圧側の圧力上昇につながります。

放熱不足による圧力上昇の例

冷却ファン不良 → 風量不足 → 放熱不足 → 凝縮状態の悪化 → 高圧上昇

冷媒の過充填

冷媒は多いほど冷えるものではありません。過充填は、高圧側の圧力が異常に上昇する原因になります。

冷えないからといって感覚やサイトグラスだけで追加せず、車両メーカー指定の充填量を基準に管理することが重要です。

空気などの非凝縮ガスの混入

冷媒回路に空気などが混入すると、通常の作動条件では冷媒のように凝縮せず、高圧側の圧力上昇などの原因になります。

部品交換後は、適切な真空引きで空気や水分を取り除いたうえで、指定量の冷媒を充填することが重要です。

高圧異常で確認したい項目

  • 冷媒の過充填
  • コンデンサーの放熱不足
  • 冷却ファンの不良や風量不足
  • フィンの目詰まりや通風経路の異常
  • コンデンサー内部の汚染・流路制限
  • 空気などの非凝縮ガスの混入
  • 高圧側配管の流路制限
  • 外気温や運転条件
高圧が高いという理由だけで、コンプレッサー不良と断定しないことが重要です。

圧力・温度・風量を組み合わせて診断する

高圧・低圧ゲージは重要な診断材料ですが、圧力は冷凍サイクルの状態を示す情報の一つです。次の項目を組み合わせて判断します。

  • 高圧・低圧の測定値
  • 外気温と運転条件
  • 冷媒充填量
  • コンデンサー入口・出口の温度
  • 冷却ファンの作動と実際の通風状態
  • 配管温度
  • エバポレーター側の状態

サブクールシステムでは、必要に応じて過冷却状態も確認します。測定方法と判定は、対象車両の整備要領書に従ってください。

高圧・低圧が両方高いときに確認すること

高圧・低圧がともに高い場合、DENSOの診断表では冷媒の過充填やコンデンサーの冷却不足が挙げられています。まず充填量の記録を確認し、コンデンサーのフィンに汚れや目詰まりがないか、冷却ファンが正常に作動して風が通っているかを確認します。

冷媒量の問題と放熱の問題では、必要な作業が異なります。原因に応じた処置をしたあと、整備要領の測定条件で高圧・低圧と冷え具合を再確認します。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

コンプレッサー交換時にもコンデンサーを確認する理由

高圧側の圧力が異常に上昇すると、コンプレッサーの駆動負荷が大きくなり、本体やマグネットクラッチに過大な負担を与える可能性があります。

故障につながる流れの例

コンデンサーの放熱不足 → 高圧異常 → コンプレッサーへの過大負荷 → コンプレッサー/クラッチの損傷

このような場合、コンプレッサーだけを交換しても、放熱不足という原因が残ってしまいます。

また、コンプレッサー内部の破損によって金属粉が流出していれば、コンデンサー内部も汚染されている可能性があります。

部品交換とあわせて、故障の原因を確認することが重要です。

コンデンサーの取り付け位置、風の当たり方、実際の放熱状態まで含めて、冷凍サイクル全体を確認します。

まとめ|コンデンサーは放熱と通風が重要

  • コンデンサーは放熱により、高温・高圧のガス冷媒を液冷媒へ変えます。
  • 前置き・サイド配置やファン構成によって、冷却の方法が異なります。
  • 専用ファンの有無や回転だけでなく、実際の風量と通風経路を確認します。
  • 「板コンデンサー」は現場で使われる呼称で、正式な構造分類名ではありません。
  • 外部の目詰まりと、内部の汚染・流路制限を分けて確認します。
  • レシーバードライヤーは、冷媒保持・気液分離・乾燥・ろ過を担います。
  • サブクール方式では、モジュレータや過冷却部を組み込む構成があります。
  • 冷媒過充填や非凝縮ガスの混入も、高圧異常の原因になります。
  • 圧力だけで部品不良を断定せず、温度・風量・充填量などをあわせて診断します。

冷え不良や高圧異常では、コンデンサーが十分に熱を外へ逃がせているかを確認することが重要です。故障部品とあわせて原因を調べることが、修理後の再発を防ぐうえでも大切になります。

次回のカーエアコン技術編

第4話:レシーバータンクの役割と同時交換の理由
液冷媒の保持・気液分離・ろ過・乾燥と、交換時の確認事項を解説します。

車種ごとの構造・指定値について

本記事は、一般的・代表的なカーエアコンの冷凍サイクルを中心に解説しています。コンデンサーの配置、ファン構成、レシーバー/モジュレータ構造、冷媒、適正圧力、充填量、サブクール度などは、車種・年式・メーカー・システムによって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書、メーカー指定値、冷媒・オイルの指定を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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