車のエアコン添加剤・蛍光剤|「とりあえず入れる」前に確認したいこと

カーエアコン技術編・第21話

「少し冷えが悪いから、添加剤を1本」「毎年のメンテナンスとして蛍光剤も入れておこう」。エアコンの調子が気になると、手軽に追加できる製品を試したくなるかもしれません。

しかし、何が入っているか、どれだけ入っているかを確認せずに追加すると、その後の点検や修理も難しくなります。添加剤は何を改善するために使うのか。蛍光剤は、いつ漏れ点検をするために使うのか。まずはここを確認しましょう。

「とりあえず1本」の前に、メーカー指定と投入歴を確認。

太田美品通商では、使用目的や適合、過去の投入量が分からないまま追加することはおすすめしません。指定された冷媒・オイルを規定量で管理し、冷え不良や漏れがあれば、その原因を点検することが基本です。

こんな理由で追加しようとしていませんか?

追加を考える場面 先に確認したいこと
冷えが悪いから添加剤を入れたい 冷媒量・漏れ・送風や放熱の状態
念のため蛍光剤を入れておきたい 漏れ点検の目的と使用の可否
去年も入れたが、今年も追加したい 製品名・投入量・すでに入っているもの
対応品と書いてあるから使いたい 車両・コンプレッサーメーカーの指定
すでに入れてしまった 追加を重ねず、施工内容を工場へ伝える

添加剤・蛍光剤・漏れ止め剤は、目的が違います

種類 主な目的と確認事項
潤滑性能などをうたう添加剤 摩擦低減などを目的とした製品。成分、対象冷媒、指定オイルとの適合を確認します。
蛍光剤(漏れ検知用) 漏れた油などに含まれる蛍光剤を、対応するUVライトで確認するためのもの。冷えを改善したり、漏れを止めたりする目的ではありません。
漏れ止め剤 漏れの抑制を目的とした製品。蛍光剤とは用途が異なり、併用・配合されている製品でも使用条件を個別に確認します。

「エアコン用」という表示だけでは中身は分かりません。冷媒を含む缶入り製品もあれば、別の方法で注入する製品もあります。商品名だけで判断せず、成分・用途・注意事項を確認してください。

車両・コンプレッサーメーカーは、どう案内している?

DENSOは、車両またはコンプレッサーメーカーが承認したオイルを使い、異なる種類のオイルや万能オイルの混用を避けるよう案内しています。製品側の「対応」という表示と、車両側の使用承認は区別して確認する必要があります。[資料1]

また、DENSOの故障診断資料では、漏れ止め剤やコンディショナーの追加による化学反応で、制御バルブやエキスパンションバルブなどが詰まる事例を挙げています。指定外の追加剤を、通常のメンテナンスとして気軽に入れてよいとはいえません。[資料2]

この資料から「すべての市販添加剤が必ず故障を起こす」とまではいえません。ただ、販売店で施工していることや、添加剤メーカーが効果を説明していることだけを根拠に、その車両での使用が認められていると考えるのは避けたいところです。

使用する場合は、車両・コンプレッサーの整備要領と製品の適合条件を照合します。HV・EVも、車種名や「電動コンプレッサー対応」の表示だけで選ばず、指定オイルの種類・規格を確認してください。

蛍光剤は、入れた後の漏れ点検までがセット

蛍光剤は、整備工場で漏れ箇所を探すために使います。漏れを調べる予定もなく、予防のつもりで毎年追加する使い方は避けてください。

American HondaのAcura向け整備資料「A/C Leak Detection」(2020年版)には、指定蛍光剤と適用車種の一覧があり、使用を認めていない車種も掲載されています。さらに、すでに蛍光剤が入っていれば追加せず点検へ進むこと、過剰添加がコンプレッサー故障につながり得ることが示されています。これは同資料の対象車についての指示であり、ほかの車種へそのまま当てはめるものではありません。[資料3]

工場へ依頼するときは、「この車で使えるか」「すでに入っていないか」「投入後、いつ点検するか」を確認しましょう。漏れの状態によっては後日の再点検が必要になります。

同資料には、エバポレーターのドレンチューブ付近をUVライトで調べる方法もあります。奥に隠れた部品の漏れを探す手段の一つですが、蛍光剤は電子式リークディテクターを補うものとして扱われています。対象車両の整備要領に沿って、工場で確認してもらいます。[資料3]

毎年の追加や、投入歴が不明なままの追加は避ける

「前の工場で何か入れた」「中古車なので分からない」という場合は、そのまま伝えてください。分からない分を念のため補う、という考え方で追加しないことが大切です。

冷媒やオイルを含む製品では、添加剤を入れるとそれらの量も増えます。DENSOは、冷媒やオイルの過充填も故障原因として挙げています。缶の本数だけで判断せず、回路内に残る量と今回加わる量を考慮する必要があります。[資料2]

コンプレッサー交換時にも、以前入れた添加剤・蛍光剤・オイルの情報が必要です。新品部品に入っているオイルと、車両側の残留油を確認する手順は、第15話「エアコンコンプレッサー交換時のオイル量」で紹介しています。

エアコン添加剤や蛍光剤を入れる前に確認する、使用目的・メーカー指定・投入歴・投入後の点検
製品名と施工記録があれば、次の点検や修理にも情報を引き継げます。

冷えが悪いときは、追加する前に原因を点検

冷え不良の点検では、冷媒の不足や漏れだけでなく、フィルターやブロアによる風量、コンデンサーの放熱状態なども確認します。添加剤の追加を先に決めず、症状に合った点検を依頼してください。

冷媒を含む製品を入れた後に冷えが変わったとしても、冷媒量の変化などと添加成分の効果を分けて考える必要があります。「冷えたから故障が直った」とは限りません。補充後にまた冷えなくなる場合は、漏れ箇所の点検が必要です。

第8話「カーエアコンのガス漏れ」、第18話「車のエアコンの風が弱い」もご覧ください。

すでに入れた場合は、製品名と量を工場へ伝える

入れたことだけで、すぐに故障しているとは限りません。まずは追加を重ねず、容器や作業明細が残っていれば確認してください。点検・修理を依頼する際は、冷媒の回収や部品交換の作業に入る前に、使った製品を伝えます。

整備工場へ伝えるメモ

  • 製品名・メーカー名。分からなければ容器やラベルの写真
  • 入れた時期・量・本数、過去にも追加したか
  • 蛍光剤や漏れ止め剤が含まれているか
  • 同時にガス補充やオイル追加をしたか
  • 施工前後の冷え・異音などの変化

使用歴が分からない場合は「不明」で構いません。回路の洗浄や部品交換が必要かどうかは、製品の成分と実際の状態を調べて判断します。

必要なものを、必要な作業のために使う

蛍光剤は、使用できる車両で漏れを調べるために。冷媒・オイルは、メーカー指定に沿って量を管理するために。目的や過去の投入量を確認しない「とりあえず1本」は避けましょう。

冷えが悪い、補充してもまた効かなくなる、異音が出るといった症状は、追加剤で様子を見る前に工場へ相談してください。

点検で交換が必要になった部品の適合確認

太田美品通商では、点検で交換が必要と分かったコンプレッサー、エバポレーターなどの適合・在庫確認を承ります。実車の測定・故障診断・施工は整備工場へご依頼ください。

お問い合わせには、車台番号全桁、現品ラベル・刻印の品番、部品全体や接続部の写真をご用意ください。コンプレッサー交換の相談では、使用した添加剤・蛍光剤や、工場で確認された回路の状態もお知らせください。現品が見えない場合は、車両情報と工場で分かっている情報からご相談いただけます。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

適合確認フォーム LINEで適合確認 メールで相談

参考資料

資料の適用車種・地域・発行時期はそれぞれ異なります。実際の整備では、対象車両と搭載コンプレッサーの最新の整備要領を確認してください。

アイキャッチはイメージで、特定商品を示すものではありません。本文図解は相談時の確認事項をまとめたもので、注入作業の手順ではありません。