車のエアコン添加剤・蛍光剤|「とりあえず入れる」前に確認したいこと

エアコン添加剤や蛍光剤をとりあえず入れる前の確認を伝えるイメージ

カーエアコン技術編・第21話

「少し冷えが悪いから、添加剤を1本」「毎年のメンテナンスとして蛍光剤も入れておこう」。エアコンの調子が気になると、手軽に追加できる製品を試したくなるかもしれません。

しかし、何が入っているか、どれだけ入っているかを確認せずに追加すると、その後の点検や修理も難しくなります。添加剤は何を改善するために使うのか。蛍光剤は、いつ漏れ点検をするために使うのか。まずはここを確認しましょう。

「とりあえず1本」の前に、メーカー指定と投入歴を確認。

太田美品通商では、使用目的や適合、過去の投入量が分からないまま追加することはおすすめしません。指定された冷媒・オイルを規定量で管理し、冷え不良や漏れがあれば、その原因を点検することが基本です。

こんな理由で追加しようとしていませんか?

追加を考える場面 先に確認したいこと
冷えが悪いから添加剤を入れたい 冷媒量・漏れ・送風や放熱の状態
念のため蛍光剤を入れておきたい 漏れ点検の目的と使用の可否
去年も入れたが、今年も追加したい 製品名・投入量・すでに入っているもの
対応品と書いてあるから使いたい 車両・コンプレッサーメーカーの指定
すでに入れてしまった 追加を重ねず、施工内容を工場へ伝える

添加剤・蛍光剤・漏れ止め剤は、目的が違います

種類 主な目的と確認事項
潤滑性能などをうたう添加剤 摩擦低減などを目的とした製品。成分、対象冷媒、指定オイルとの適合を確認します。
蛍光剤(漏れ検知用) 漏れた油などに含まれる蛍光剤を、対応するUVライトで確認するためのもの。冷えを改善したり、漏れを止めたりする目的ではありません。
漏れ止め剤 漏れの抑制を目的とした製品。蛍光剤とは用途が異なり、併用・配合されている製品でも使用条件を個別に確認します。

「エアコン用」という表示だけでは中身は分かりません。冷媒を含む缶入り製品もあれば、別の方法で注入する製品もあります。商品名だけで判断せず、成分・用途・注意事項を確認してください。

車両・コンプレッサーメーカーは、どう案内している?

DENSOは、車両またはコンプレッサーメーカーが承認したオイルを使い、異なる種類のオイルや万能オイルの混用を避けるよう案内しています。製品側の「対応」という表示と、車両側の使用承認は区別して確認する必要があります。[資料1]

また、DENSOの故障診断資料では、漏れ止め剤やコンディショナーの追加による化学反応で、制御バルブやエキスパンションバルブなどが詰まる事例を挙げています。指定外の追加剤を、通常のメンテナンスとして気軽に入れてよいとはいえません。[資料2]

この資料から「すべての市販添加剤が必ず故障を起こす」とまではいえません。ただ、販売店で施工していることや、添加剤メーカーが効果を説明していることだけを根拠に、その車両での使用が認められていると考えるのは避けたいところです。

使用する場合は、車両・コンプレッサーの整備要領と製品の適合条件を照合します。HV・EVも、車種名や「電動コンプレッサー対応」の表示だけで選ばず、指定オイルの種類・規格を確認してください。

蛍光剤は、入れた後の漏れ点検までがセット

蛍光剤は、整備工場で漏れ箇所を探すために使います。漏れを調べる予定もなく、予防のつもりで毎年追加する使い方は避けてください。

American HondaのAcura向け整備資料「A/C Leak Detection」(2020年版)には、指定蛍光剤と適用車種の一覧があり、使用を認めていない車種も掲載されています。さらに、すでに蛍光剤が入っていれば追加せず点検へ進むこと、過剰添加がコンプレッサー故障につながり得ることが示されています。これは同資料の対象車についての指示であり、ほかの車種へそのまま当てはめるものではありません。[資料3]

工場へ依頼するときは、「この車で使えるか」「すでに入っていないか」「投入後、いつ点検するか」を確認しましょう。漏れの状態によっては後日の再点検が必要になります。

同資料には、エバポレーターのドレンチューブ付近をUVライトで調べる方法もあります。奥に隠れた部品の漏れを探す手段の一つですが、蛍光剤は電子式リークディテクターを補うものとして扱われています。対象車両の整備要領に沿って、工場で確認してもらいます。[資料3]

毎年の追加や、投入歴が不明なままの追加は避ける

「前の工場で何か入れた」「中古車なので分からない」という場合は、そのまま伝えてください。分からない分を念のため補う、という考え方で追加しないことが大切です。

冷媒やオイルを含む製品では、添加剤を入れるとそれらの量も増えます。DENSOは、冷媒やオイルの過充填も故障原因として挙げています。缶の本数だけで判断せず、回路内に残る量と今回加わる量を考慮する必要があります。[資料2]

コンプレッサー交換時にも、以前入れた添加剤・蛍光剤・オイルの情報が必要です。新品部品に入っているオイルと、車両側の残留油を確認する手順は、第15話「エアコンコンプレッサー交換時のオイル量」で紹介しています。

エアコン添加剤や蛍光剤を入れる前に確認する、使用目的・メーカー指定・投入歴・投入後の点検
製品名と施工記録があれば、次の点検や修理にも情報を引き継げます。

冷えが悪いときは、追加する前に原因を点検

冷え不良の点検では、冷媒の不足や漏れだけでなく、フィルターやブロアによる風量、コンデンサーの放熱状態なども確認します。添加剤の追加を先に決めず、症状に合った点検を依頼してください。

冷媒を含む製品を入れた後に冷えが変わったとしても、冷媒量の変化などと添加成分の効果を分けて考える必要があります。「冷えたから故障が直った」とは限りません。補充後にまた冷えなくなる場合は、漏れ箇所の点検が必要です。

第8話「カーエアコンのガス漏れ」、第18話「車のエアコンの風が弱い」もご覧ください。

すでに入れた場合は、製品名と量を工場へ伝える

入れたことだけで、すぐに故障しているとは限りません。まずは追加を重ねず、容器や作業明細が残っていれば確認してください。点検・修理を依頼する際は、冷媒の回収や部品交換の作業に入る前に、使った製品を伝えます。

整備工場へ伝えるメモ

  • 製品名・メーカー名。分からなければ容器やラベルの写真
  • 入れた時期・量・本数、過去にも追加したか
  • 蛍光剤や漏れ止め剤が含まれているか
  • 同時にガス補充やオイル追加をしたか
  • 施工前後の冷え・異音などの変化

使用歴が分からない場合は「不明」で構いません。回路の洗浄や部品交換が必要かどうかは、製品の成分と実際の状態を調べて判断します。

必要なものを、必要な作業のために使う

蛍光剤は、使用できる車両で漏れを調べるために。冷媒・オイルは、メーカー指定に沿って量を管理するために。目的や過去の投入量を確認しない「とりあえず1本」は避けましょう。

冷えが悪い、補充してもまた効かなくなる、異音が出るといった症状は、追加剤で様子を見る前に工場へ相談してください。

点検で交換が必要になった部品の適合確認

太田美品通商では、点検で交換が必要と分かったコンプレッサー、エバポレーターなどの適合・在庫確認を承ります。実車の測定・故障診断・施工は整備工場へご依頼ください。

お問い合わせには、車台番号全桁、現品ラベル・刻印の品番、部品全体や接続部の写真をご用意ください。コンプレッサー交換の相談では、使用した添加剤・蛍光剤や、工場で確認された回路の状態もお知らせください。現品が見えない場合は、車両情報と工場で分かっている情報からご相談いただけます。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

適合確認フォーム LINEで適合確認 メールで相談

参考資料

資料の適用車種・地域・発行時期はそれぞれ異なります。実際の整備では、対象車両と搭載コンプレッサーの最新の整備要領を確認してください。

アイキャッチはイメージで、特定商品を示すものではありません。本文図解は相談時の確認事項をまとめたもので、注入作業の手順ではありません。

交換したエアコンコンプレッサーから異音|原因確認と再発を防ぐ点検

コンプレッサーのイメージと、高圧・過熱・潤滑不足の確認を案内する第13話のアイキャッチ

カーエアコン技術編・第13話

「交換したばかりのコンプレッサーから音がする。交換した部品が悪いのでは?」と感じるのは自然なことです。異音があれば、まず発生箇所を確認する必要があります。

ただし、コンプレッサーは単独で働く部品ではありません。車両に残っている冷媒回路につながり、その中の冷媒を圧縮して循環させます。本体を交換しても、放熱不良・冷媒量の不適正・潤滑不足などが残っていれば、交換した本体にも負担がかかります。

音が出ている場所と、音を出させた原因は、同じとは限りません。

そのため、交換後の異音では「本体の状態」と「車両に取り付けた後の作動条件」を合わせて調べます。これは原因を残して再交換し、同じ不具合を繰り返さないための確認です。

太田美品通商では、現場での対応経験から、冷媒量・オイル管理・関連部品の点検など、整備上の不備が関係する異音を多く見ています。この記事では、なぜそうした確認が必要なのか、何を根拠に修理範囲を判断するのかを説明します。

太田美品通商では、コンプレッサーの出荷前に必ず異音のテストも行っています。

出荷前のテストと、実際の車両に取り付けて動かすときでは、冷媒量・オイルの状態・放熱などの条件が異なります。交換後に異音が出た場合は、テスト時にはなかった負担がかかっていないか、車両側の状態と本体の両方を確認します。

大きな異音・焦げ臭いにおい・煙がある場合は、再現確認のために使い続けず、A/Cの使用をやめて整備工場へ相談してください。音が残る、警告灯が点灯するなどの場合は安全に停車し、ロードサービス等へ相談します。

早見表|異音がするときに確認したいこと

当てはまる項目を選ぶと、記事内の詳しい説明へ進めます。点検の手掛かりとしてご覧ください。症状だけで故障部品を決める表ではありません。

症状・知りたいこと 確認する内容
A/Cオン・オフで音が変わる 作動との関係と発生箇所
交換した直後から音がする 交換・補充時の確認事項
ベーン式でジージー音がする 油膜不足などの確認
そのまま使ってよいか知りたい 使用継続と再交換の注意点
本体不良か判断したい 判断に必要な点検結果

動画で見る|交換後の異音と、車両側に残る原因

冷却ファンの不調で放熱が悪くなり、コンプレッサーに負担がかかる流れを動画で紹介します。34秒からは、正常なピストンと過熱したピストンを比較し、熱膨張・油膜・壁との接触を説明しています。

約1分24秒・字幕付き。膨張やすき間は見やすく誇張した模式図です。実際の変化は材質・温度差・潤滑状態で異なります。高圧保護制御による停止動作は省略しています。

動画が表示されない場合はYouTubeで見る

なぜ、コンプレッサー以外も点検するのか

図1|本体を交換しても、車両側の原因は残ることがある
① 交換したコンプレッサー
冷媒を圧縮して送り出す
↓
② コンデンサー・冷却ファン
熱を車外へ逃がす部分
放熱不良が残る → 吐出側の圧力が高くなり、本体の圧縮負担が増す
↓
③ レシーバー/ドライヤー → ④ エキスパンションバルブ
異物・水分の管理、冷媒流量の調整
汚れや詰まりが残っていないか確認
↓
⑤ エバポレーター → ① コンプレッサーへ戻る
冷媒とともにオイルの一部も循環
オイル量・種類・循環が不適切 → 内部の潤滑不足につながる
回路全体で管理するもの:冷媒の種類・充填量/指定オイルの種類・量
これらはコンプレッサーを交換するだけでは適正になりません。

矢印は冷媒の流れです。レシーバー式の概念図で、一体型など実車の構造は異なります。詰まりの点検では、高圧・低圧と各部の温度を合わせて確認します。

異常高圧による異音|なぜ圧力が上がったかを確認

コンプレッサーは、冷媒を圧縮して高圧側へ送り出します。ほかの条件が同じなら、送り出す側の圧力が高くなるほど圧縮に必要な仕事が増え、駆動する側にも負担がかかります。その状態で音や振動が増している場合は、本体だけでなく冷凍サイクルの状態を確認します。

確認項目には、コンデンサーの放熱、冷却ファンの作動、冷媒の充填量、空気の混入などがあります。配管や部品の詰まりが疑われる場合は、高圧・低圧と各部の温度を測り、冷媒の流れが悪くなっている箇所を調べます。詰まる場所や程度によって、圧力の変化は異なります。DENSOの圧力診断資料

高圧保護制御を備えるクラッチ式では、異常高圧の検出時にクラッチを切り、コンプレッサーを停止させます。ただし、保護制御があるから使い続けても安全、という意味ではありません。停止する原因を調べる必要があります。

詳しくは高圧が高くなる原因と確認ポイントをご覧ください。

ベアリングの異音|「熱でグリスが傷む」とは

ここでいうベアリングは、主にベルト駆動のコンプレッサーのプーリー側のベアリングです。コンプレッサー内部の冷媒用オイルとは、潤滑する場所が異なります。

ベアリングの中には、回転を滑らかにするグリスが入っています。高温にさらされてグリスが傷んだり、外へ流れ出たりすると、十分に潤滑できなくなります。その状態で回り続けるとベアリングが傷み、異音につながります。

熱の原因は異常高圧に伴う負荷だけとは限りません。クラッチの滑りなどでも発熱します。ベアリングの損傷や異音だけから、過去の異常高圧を断定することはできません。サンデンの資料では、クラッチの滑りに伴う過熱とベアリングシールへの影響を説明しています。

図2|グリスと冷媒用オイルは、潤滑する場所が違う
外側:プーリーのベアリング

潤滑剤:ベアリングのグリス
プーリーの回転を支える部分。
冷媒回路へオイルを追加しても、このグリスを補充することにはなりません。

内側:冷媒を圧縮する機構

潤滑剤:指定の冷媒用オイル
ベーン・ピストンなどの内部機構。
オイルの種類・量・循環状態を確認します。

位置と潤滑剤の違いを示す概念図です。形状・油面・量は実物を再現したものではありません。

ベーン式のジージー音|油膜不足にも注意

ベーン式は、回転するローターと、そこから出入りする板状のベーンなどで冷媒を圧縮する構造です。部品が擦れ合う面は、薄いオイルの膜で守られています。

太田美品通商では、ベーン式の潤滑不足が関係するケースで「ジージー」と表現される異音を確認しています。ただし、音の呼び方や聞こえ方には個人差があり、その音だけで油膜不足と判断することはできません。

図3|油膜は、擦れ合う面を守っている
油膜が保たれる状態

金属面
相手側の金属面

水色が油膜。金属同士の直接接触を抑えます。

油膜が不足した状態

金属面
相手側の金属面

接触・摩擦が増え、摩耗や異音につながることがあります。

摺動面を拡大・単純化した模式図です。実際の油膜の厚さやベーン形状を示すものではありません。

確認するのは、オイルの量だけではありません。指定の種類・粘度が守られているか、冷媒やオイルの循環が妨げられていないか、漏れや過去の修理で失われた分を適切に管理しているかも重要です。オイルには潤滑と冷却の役割があります。DENSOのコンプレッサーオイル資料

整備不良を防ぐため、交換・補充時に見落としたくないこと

交換した部品が正常でも、取り付け後の冷媒量・潤滑・放熱などが適切でなければ、不具合を起こすおそれがあります。特に整備後から音が出たときは、次の作業内容と記録を確認します。

整備時の確認項目

  1. 冷媒量を感覚で決めていないか
    冷媒の種類と車両指定量を確認し、必要な回収・真空引き後に重量で管理します。
  2. オイルの種類・総量を確認したか
    新しいコンプレッサーに入っている量だけでなく、車両側に残る量や交換部品に伴う調整を、整備要領に従って確認します。
  3. 汚れ・金属粉・詰まりの確認を省いていないか
    旧部品の損傷状態を踏まえ、レシーバー/ドライヤー、配管、コンデンサーなどの交換・洗浄可否を判断します。洗浄できない構造の部品もあります。
  4. 冷却ファンと放熱状態を確認したか
    コンプレッサー交換だけでは、放熱不良は解消しません。
  5. 取り付けと駆動系を確認したか
    ベルト、テンショナー、ブラケット、締結部、配管の接触なども確認します。
  6. 作業後に作動確認を行ったか
    指定条件で圧力・温度・冷え・異音・漏れを確認し、作業前後の状態を記録します。

「音が出たからオイルを足す」「冷えないから追いガスする」という対応は避けてください。過剰な追加も不調の原因になり、原因の確認を難しくします。安易な冷媒補充のリスクも参考にしてください。

A/Cオン・オフで音が変わる場合の見方

音が出るタイミングは、発生箇所を探す手がかりです。次の区分は交換部品を決める診断表ではありません。

A/Cオン時に出る

圧縮負荷、内部の潤滑、クラッチ、負荷がかかったときのベルトや取り付け部などを確認。

A/Cオフでも続く

一般的なベルト駆動のクラッチ式では、オフでもプーリーが回ります。プーリーベアリングや周辺補機などを確認。

つながる瞬間だけ鳴る

一度の接続音と、以前になかった大きな衝撃音・繰り返す異音を区別。作動条件も確認。

クラッチのない方式や電動式では、この区分をそのまま使えません。また、周辺のベルト・プーリー・補機の音をコンプレッサーの音と感じる場合もあります。サンデンの整備資料でも、異音点検では周辺部品と内部の両方を確認項目に挙げています。

使い続けてよい?交換すれば直る?

冷えているなら、異音があっても使えますか?

冷房が効くことと、潤滑や部品の状態が正常であることは同じではありません。新しく発生した異音や悪化する音は、放置せず点検を受けてください。音を再現するための高回転運転や長時間の作動は避けます。

コンプレッサーだけ交換すれば直りますか?

異音の発生源が本体であっても、その本体に負荷や潤滑不足を生じさせた原因が残れば、再発するおそれがあります。一方で、内部部品の損傷など本体側の不具合も点検対象です。作動時の測定結果と現品状態から、修理範囲を判断します。ロック・焼付きと交換時の注意点をご覧ください。

修理後すぐの異音は、整備不良ですか?

整備内容の確認は重要ですが、発生時期だけでは断定できません。充填・オイル調整・関連部品交換の記録、作動時の圧力・温度、発生箇所などを合わせて確認します。

「本体が悪いのか」を判断するために必要な根拠

当社では出荷前に異音のテストも必ず行っています。交換後に異音が発生した場合は、どの条件で音が出るのか、交換時にどのような作業を行ったかを整備工場と確認します。作業記録と実車の測定結果、本体の状態を照らし合わせ、原因を調べます。

確認する根拠 何を確かめるためか
異音の発生箇所・A/Cオン/オフ・冷間/温間 内部、クラッチ・プーリー、ベルトや周辺部品のどこから出ているか。
異音発生時の高圧・低圧・各部温度と測定条件 外気温・回転数などを記録し、車両指定の条件と照合する。高圧の値だけで原因を確定しない。
冷却ファン・コンデンサーの点検結果 放熱不良が本体に負担をかけていないか。
冷媒の回収量・充填量と作業記録 指定冷媒・指定量で整備されているか。回収量は装置内残留なども考慮し、それだけで断定しない。
オイルの種類・調整量・交換部品の記録 新しい本体の封入量と車両側の残油、失われた量を踏まえた管理か。抜けた量だけを総量とみなさない。
現品の損傷・汚染状態と修理履歴 摩耗・焼損・異物などを測定結果と照合する。黒いオイルや損傷写真だけで発生原因を決めない。

関連する不適正が確認された場合は、その是正と本体の損傷確認を行います。作動条件に問題が見つからなければ、本体側の不具合も引き続き点検します。判断材料が不足している段階では、原因を確定せず追加確認を行います。

整備工場からお客さまへ説明する例

次は説明の組み立て方を示す仮定例です。実際の測定値や確認結果に置き換えて説明してください。

例:冷却ファンの作動不良と、規定条件で高圧側の異常を確認した場合

「異音はコンプレッサー付近で確認しました。同時に、コンデンサーを冷やすファンが正常に作動せず、高圧側の圧力が指定条件に対して高いことも確認しています。

この状態では、交換したコンプレッサーも高い圧力に向けて冷媒を送り出すため、負担がかかります。コンプレッサーをもう一度交換するだけでは、ファンの不具合は残ります。

まず放熱不良を修理し、本体にも損傷が出ていないかを確認します。その結果を踏まえて、必要な交換範囲をご説明します。」

確認した事実 → 部品への影響 → 必要な修理の順に説明すると、なぜ本体以外の点検や修理も必要なのかが伝わります。放熱不良が見つかっても、すべての異音をそれだけで説明できるとは限らないため、是正後も必要な確認を行います。

購入・交換後の異音を相談するとき

当社から購入した部品で異音が発生した場合は、注文情報、車両情報、現品品番、交換日、作業内容、測定記録をそろえてご連絡ください。当社への確認を行わないまま、現品を分解・加工・廃棄しないでください。状態が変わると、原因の確認が難しくなります。

本記事は点検理由を説明するもので、個別案件の原因や保証判定を代替するものではありません。実際の受付・判断は、購入時の保証条件と確認結果に基づきます。

相談時に伝える情報と、交換部品の適合確認

整備工場へ伝えるメモ

  • A/Cオン・オフのどちらで鳴るか
  • 始動直後/温まってから/停車中などの発生条件
  • 冷えの変化・臭い・警告表示の有無
  • 音が出始めた時期と、直前の整備内容
  • 冷媒補充、オイル・添加剤の追加、部品交換の履歴

録音する場合は安全に停車し、車内など安全な場所から行ってください。回転中のベルト・ファンへ手やスマートフォンを近づけず、配管を緩めたり、クラッチを強制作動させたりしないでください。

実車の故障診断は整備工場へ。交換する部品が決まったら、太田美品通商へ品番・車両情報・現品写真をお送りください。現品写真は、無理な取り外し・分解をせず、整備工場で確認できる範囲でご用意ください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

適合確認フォーム LINEで相談 メールで相談

本記事は代表的な点検の考え方を整理したものです。車種・コンプレッサー方式により構造や指定値は異なります。実車の整備は車両・部品メーカーの整備要領に従ってください。冒頭の画像はイメージで、特定製品の形状・適合を示すものではありません。

カーエアコンのコンプレッサーがロック・焼付きする原因|保証対象外となる理由

カーエアコンのコンプレッサーがロック・焼付きする原因を解説したアイキャッチ画像

カーエアコンのコンプレッサーを交換した後に、ロック・焼付き・マグネットクラッチやコイルの焼損が起きると、
「交換したコンプレッサーが悪かったのではないか」「次のコンプレッサーも同じように壊れないか」と思われるかもしれません。

まず結論|ロック・焼付き・クラッチ/コイル焼損は、保証対象外です

当社のリビルトコンプレッサーは、組立後に圧縮・作動を確認して出荷しています。出荷時の試験条件で圧縮・作動を確認することと、取付先の車両で冷媒・オイルが適切に循環することは、別に確認が必要です。

一方、ロック・焼付きは、車両へ取り付けてエアコンサイクルを作動させた後に発生する故障です。異常高圧、冷媒・オイル循環不良、回路内の詰まりや汚れ、放熱不良など、取付後のサイクル条件に大きく影響されます。

そのため太田美品通商では、ロック・焼付き、マグネットクラッチ・コイル焼損、サイクル不調・高圧異常に起因する故障を、コンプレッサー単体の保証対象外と定めています。

これはお客様の責任と決めつけるためではありません。ロック・焼付きが起きた時点では、圧力、冷媒量、オイル循環、放熱、車両制御、配管内の汚れ・詰まりなど、コンプレッサー単体では判定できない条件が関わっているためです。

コンプレッサーだけ交換して大丈夫?

ロック・焼付き後は、故障を起こした条件と、故障によって残った汚れの両方を確認する必要があります。どちらかを残すと、交換したコンプレッサーも再び傷むおそれがあります。

  1. 放熱・冷媒量・循環・車両制御に問題がないか確認する。
  2. 回路内の汚れ・異物を確認し、必要な部品交換と洗浄を行う。
  3. 指定の冷媒・オイルで整備し、修理後の作動を確認する。

すでに不具合がある当社製品は、分解・再組立せず、当社へご連絡ください。

目的別早見表|知りたい内容へ進む

当てはまる項目を選ぶと、記事内の詳しい説明へ進めます。

症状・知りたいこと 確認する内容
焼付き・ロックの仕組みを知りたい 内部で起こる損傷の説明
高圧異常との関係を知りたい コンプレッサーに負荷がかかる仕組み
実際の内部状態を見たい 分解点検の写真と事例
本体だけ交換してよいか知りたい 単体交換で原因が残るリスク
保証の扱いを確認したい 当社の保証対象外の説明

コンプレッサーは、エアコンサイクルの一部です

コンプレッサーは単体で冷やしている部品ではありません。冷媒を圧縮して送り出し、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターを通った冷媒が、再びコンプレッサーへ戻る循環の一部です。
コンプレッサーの構造・役割はこちらで詳しく解説しています。

コンプレッサー
↓
コンデンサー(熱を放出)
↓
レシーバータンク
↓
エキスパンションバルブ
↓
エバポレーター(車内の熱を吸収)
↓
コンプレッサーへ戻る

コンプレッサーオイルの一部は冷媒とともにサイクル内を循環します。したがって、圧力異常、冷媒量の不適合、流路の詰まり、金属粉やスラッジ、放熱不足を残したままコンプレッサーだけを交換すると、新しいコンプレッサーも同じ条件で作動することになります。

異常高圧がコンプレッサーへ負荷をかける仕組み

コンデンサーの放熱不足、冷却ファン不良、冷媒の過充填、配管や部品の詰まりなどがあると、高圧側の圧力が異常に上がることがあります。コンプレッサーは、その高い圧力へ冷媒を押し出し続けるため、圧縮負荷と発熱が大きくなります。

動画:異常高圧によってコンプレッサーの負荷・温度が上がり、焼付き・ロックへ至る仕組みの一例

高圧異常は、単に「圧力の数字が高い」だけの問題ではありません。
コンプレッサー内部の潤滑・冷却状態にも影響し、摩擦と発熱を増やす要因になります。高圧側・低圧側の見方は、カーエアコンの高圧・低圧と故障診断の確認ポイントをご覧ください。
圧力保護制御も点検します

車両には、異常な高圧・低圧を検出するとコンプレッサーの作動を停止・制限する仕組みがあります。高圧が上がれば必ず焼き付くわけではありません。焼付きの原因を調べる際は、圧力や放熱状態に加え、センサー・スイッチ・制御の作動も確認します。動画は故障に至る一例を模式化したもので、すべての車両で同じ順序・時間で進むことを示すものではありません。

詰まり・汚れ・オイル循環不良も、焼付き・ロックの原因になります

前のコンプレッサーがロック・焼付きした車両では、配管や各部品の中に金属粉、異物、スラッジ、劣化したオイルが残っていることがあります。レシーバータンク、エキスパンションバルブ、ダイハツ車のリキッドパイプ内チューブフィルターなどで流れが妨げられると、冷媒・オイルの循環や圧力状態が乱れます。

詰まりの位置によって圧力の出方は異なりますが、いずれもコンプレッサーが適正な潤滑・冷却条件を失う原因になります。レシーバータンクを同時交換する理由、エキスパンションバルブの役割と交換時の注意点もあわせてご確認ください。

動画:回路内の詰まりにより冷媒・オイルの循環が乱れ、潤滑不良から焼付き・ロックへ至る仕組みの一例

冷媒不足でも、オイル戻りと冷却が悪化することがあります

オイルの一部は冷媒の流れによってコンプレッサーへ戻ります。冷媒不足で循環が悪くなると、回路内のオイルが十分に戻らず、潤滑・冷却が不足することがあります。オイルが外へ漏れた量だけでなく、戻る経路と冷媒量の確認も必要です。

ロック・焼付きは、どのように起きるのか

コンプレッサー内部には回転・摺動する部品があります。冷媒・オイルの循環、圧力、放熱の状態が悪化すると、部品を守る油膜が保てなくなり、摩擦と内部温度が上昇します。

サイクル不良
↓
圧縮負荷・発熱の増加/冷媒・オイル循環の乱れ
↓
潤滑・冷却不足
↓
摩擦・熱膨張・金属接触
↓
内部損傷・焼付き・ロック

内部構造はコンプレッサーの種類により異なりますが、適正な油膜が保てない状態で高い負荷・熱が続けば、摺動部が傷み、最終的に回転できなくなることがあります。

クラッチ・コイル焼損は、負荷と電気系統を分けて確認する

異常高圧や内部ロックで駆動負荷が増し、クラッチが滑ると、摩擦熱によって周辺部品が損傷することがあります。一方、電源電圧の低下、配線・接続部の異常、クラッチのすき間、頻繁な接続・切離しなども点検対象です。

コイルが焼けていることだけで、異常高圧が原因だったとは確定できません。焼損部品の交換とあわせ、コンプレッサーの回転状態、圧力、通電時の電圧、クラッチの吸着・滑りを、整備要領に沿って確認します。

技術参考:Sanden SDサービスガイド(クラッチ点検・滑りの説明)。記載の個別数値は対象製品用であり、全車共通ではありません。

実際にロック・焼付きしたコンプレッサーの分解点検例

以下は、当社で分解点検した3台の別々のロック・焼付きコンプレッサーの参考写真です。内部の黒く変色したオイル、過熱・摩耗の痕跡、クラッチ周辺の焼損などが確認されることがあります。

写真の状態だけで、一つの故障原因を断定するものではありません。
写真は内部やオイルの状態を伝える資料です。点検では、オイルの状態に加え、摺動面の傷・摩耗、クラッチの状態、現車の整備記録などを照合します。汚れが故障前からあったのか、故障によって生じたのかも、写真の色だけでは区別できません。掲載写真は当社での分解点検例であり、お客様による分解を案内するものではありません。

事例1|ロック品の分解部品と内部状態

ロック・焼付きしたカーエアコンコンプレッサーを分解した内部部品
ロック・焼付きが発生したコンプレッサーの分解部品です。
ロック・焼付きしたカーエアコンコンプレッサー内部の分解点検写真
内部部品と黒く変色したオイルが見られる分解点検例です。

事例2|クラッチ周辺の焼損と内部の黒いオイル

焼損したカーエアコンコンプレッサーのマグネットクラッチとコイル周辺
過熱・焼損が確認されたマグネットクラッチ周辺の分解部品です。
ロック・焼付きしたコンプレッサー内部に残る黒いオイル
コンプレッサー内部に黒く変色したオイルが残っている例です。

事例3|別のロック品に見られた内部状態

ロックしたカーエアコンコンプレッサーを分解した内部部品
別のロック品を分解し、内部状態を確認した例です。
ロック品のケース内面と内部に残ったオイルの拡大写真
内部に残ったオイルとケース内面の拡大写真です。色だけで異物の成分や故障原因は判断できません。

コンプレッサー単体のみの交換が危険な理由

前のコンプレッサーがロック・焼付きしている場合、その原因になった条件や、故障によって生じた汚れ・金属粉がサイクル内に残っている可能性があります。その状態でコンプレッサーだけを交換すると、新しいコンプレッサーへ同じ負荷や異物がかかり、短期間で再発するおそれがあります。

コンプレッサー交換時に確認・実施する項目

・レシーバータンクの交換
・エキスパンションバルブの交換
・ダイハツ車ではチューブフィルター(リキッドパイプ内フィルター)の交換
・配管内の金属粉、異物、スラッジの除去と必要なフラッシング
・コンデンサーの汚損・詰まり、冷却ファン、ファンモーター等の点検
・圧力センサー、温度センサー、ECUなど車両側制御の確認
・指定冷媒、指定オイル、車両指定量による適正な充填・管理

整備工場では「何を確認するか」と「なぜ必要か」をセットで確認します

  • コンデンサーと冷却ファン:熱を外へ逃がせるかを確認します。高圧が高いときの確認箇所もご覧ください。
  • 冷媒・オイルの種類と量:作業記録と車両指定を照合します。圧力の数字だけで残量は決められません。
  • 配管・関連部品の汚れや詰まり:異物を新しいコンプレッサーへ戻さないため、交換範囲と洗浄可能な範囲を判断します。
  • クラッチ・電源・保護制御:負荷による滑りと電気系統の異常を分け、整備要領に沿って確認します。

高圧・低圧の記録は、外気温・エンジン回転数・エアコン設定などの測定条件と一緒に確認します。ロックした状態で、記録を取るために無理に再始動しないでください。

車種や故障状態によって必要な作業は異なります。ガス漏れが疑われる場合は、追加充填ではなく原因確認・修理後の規定量充填が必要です。冷媒漏れに補充だけはNGな理由もご確認ください。

真空引きと、異物を取り除くフラッシングは別の作業です

真空引きは空気や水分を除去する工程であり、金属粉やスラッジを洗い流す工程ではありません。また、コンプレッサー・レシーバードライヤー・エキスパンションバルブを接続したまま回路全体を洗浄する方法は適切ではありません。メーカー指定の手順で洗浄対象を分け、交換が必要な部品や十分に洗浄できない部品を判断します。
技術参考:HELLA 冷媒回路のフラッシング解説

なぜ太田美品通商ではロック・焼付きが保証対象外なのか

当社の保証規定では、商品に起因する不具合と保証対象外事項を区分しています。ロック・本体焼付き・マグネットクラッチやコイルの焼損は、同規定の保証対象外事項です。具体的な条件は下記の保証ページでご確認いただけます。

故障の仕組みを理解することと、個別の故障原因を特定することは別です。取付後の圧力、冷媒量、オイル循環、放熱、車両側制御、回路内の汚れや詰まり、現品の状態をあわせて確認します。「交換後に発生した」「オイルが黒い」という情報だけで、お客様の作業に原因があったと断定するものではありません。

「ロック・焼付きした」という結果だけでは、コンプレッサー単体の不良として保証を適用できません。

保証対象外=お客様の責任と決めつけるものではありません。ただし、エアコンサイクルの条件に大きく影響される故障であり、コンプレッサー単体だけで保証できる範囲を超えるため、太田美品通商の保証規定では対象外としています。

保証判定は、返送品の点検結果をもとに行います。現車で部品を交換して症状が変化したことだけでは、コンプレッサー単体の不良とは判断できません。詳しい条件は、返品・保証についてをご確認ください。

不具合品は分解しないでください。
分解または分解の形跡がある場合、保証対象外となります。不具合が発生した場合は、部品を分解・再組立せず、まず当社へご連絡ください。

よくある質問

Q.交換したばかりなのにロックした。コンプレッサー不良ではないのですか?
A.当社では組立後に圧縮・作動を確認して出荷しています。取付後のロック・焼付きは、異常高圧、冷媒・オイル循環不良、放熱不良、回路内の汚れや詰まりなど、サイクルを作動させた後の条件を含めて確認する必要があります。保証判定は返送品の点検結果に基づきます。

Q.なぜレシーバータンクやエキスパンションバルブも交換するのですか?
A.内部の乾燥剤・フィルターや流路に汚れ・異物が残ると、冷媒とオイルの循環が乱れ、新しいコンプレッサーへ再び負担がかかるためです。車種により必要な関連部品は異なります。

Q.ロック・焼付きやコイル焼損は、なぜ保証対象外なのですか?
A.これらは取付後のサイクル条件に大きく影響され、コンプレッサー単体では原因を判定・保証できない故障だからです。太田美品通商の保証規定でも対象外と定めています。

Q.不具合品を分解して原因を調べてもよいですか?
A.いいえ。分解または分解の形跡がある場合は保証対象外となります。現状のまま当社へご連絡ください。

まとめ|再発を防ぐには、サイクル全体の正常化が必要です

ロック・焼付きで押さえるポイント

・リビルトコンプレッサーは、圧縮・作動を確認して出荷している
・ロック・焼付きは、車両のエアコンサイクルへ組み付けた後に発生する故障
・異常高圧、詰まり、汚れ、冷媒・オイル循環不良、放熱不良は再発原因になる
・黒く変色したオイルや焼損・摩耗の痕跡は、サイクル全体を確認すべき重要な所見
・コンプレッサーだけを交換しても、原因を残せば再発するおそれがある
・レシーバー、エキスパンションバルブ、必要に応じたチューブフィルター、配管洗浄などを実施する
・ロック・焼付き・クラッチ/コイル焼損は、太田美品通商の保証規定で保証対象外

ご相談時に送っていただきたい情報

不具合のご相談は、分解せず、返送する前に当社へご連絡ください。分かる範囲で次の情報をお知らせいただくと、現品確認と対応の案内がスムーズです。

  • 購入情報:注文番号・購入時期。
  • 車両情報:車検証に記載された型式・車台番号・初度登録年月など。
  • 部品情報:コンプレッサーの品番・ラベル、外観・コネクター・取付部の写真。分解して撮影する必要はありません。
  • 発生状況:取付日、発生までの期間・走行距離、異音・冷え不良など気付いた症状。
  • 整備内容:交換した関連部品、洗浄の実施範囲、充填した冷媒・オイルの種類と量。
  • すでにある点検記録:高圧・低圧と測定条件、ファンの作動、故障コードなど。記録がない場合は、その旨をお知らせください。

保証に関するご相談はLINE・メールへ、交換部品の選定は品番・車両情報・現品写真を添えて適合確認フォームへお進みください。

コンプレッサー交換前に、品番・車両情報・現品写真で適合確認してください

車検証情報、現品の品番・刻印、コネクター・取付部の写真があると、確認がスムーズです。ロック・焼付き後の対応や関連部品についても、作業前にご相談ください。

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ご注意
本記事は、ロック・焼付きが発生する代表的な仕組みと、交換時に確認すべき事項を解説したものです。圧力値、冷媒・オイルの種類と量、必要な交換部品、点検方法は車種やシステムによって異なります。実車の整備では、対象車両および部品メーカーの整備要領・指定値を確認してください。

カーエアコンのコンプレッサーとは?種類・容量制御・故障診断と交換時の注意点

カーエアコン用コンプレッサーのイラストと、種類・構造・容量制御、故障診断と交換時の注意点を紹介するアイキャッチ

カーエアコン技術編・第2話

カーエアコンの冷凍サイクルの中で、冷媒を圧縮し循環させる中心的な役割を担っているのがA/Cコンプレッサーです。

「エアコンが冷えない」
「コンプレッサーから異音がする」
「マグネットクラッチが入らない」

こうした症状が出ると、まずコンプレッサー故障を疑われることがあります。

しかし、「エアコンが冷えない=コンプレッサー不良」ではありません。

カーエアコンは、コンプレッサー・コンデンサー・レシーバー・エキスパンションバルブ・エバポレーター・冷却ファン・冷媒・オイル・各種制御など、複数の要素が正常に機能して初めて冷えます。

今回はカーエアコン技術編・第2話として、コンプレッサーの役割、構造の違い、固定容量・可変容量の仕組み、マグネットクラッチ、電磁制御バルブ、故障診断、交換時の注意点まで詳しく解説します。

コンプレッサーは何をしている部品?

エバポレーターで車室内の熱を吸収した冷媒は、低圧のガス冷媒となってコンプレッサーへ戻ってきます。

コンプレッサーはこの冷媒を吸入して圧縮し、高温・高圧のガス冷媒としてコンデンサーへ送り出します。

低圧のガス冷媒
↓
コンプレッサーで圧縮
↓
高温・高圧のガス冷媒
↓
コンデンサーへ

コンプレッサー自体が直接「冷気」を作っているわけではありません。

冷媒を圧縮して高圧側へ送り出し、冷凍サイクル内に高圧側と低圧側を作ることで、コンデンサーでの凝縮、エキスパンションバルブでの減圧、エバポレーターでの蒸発を成立させています。

つまりコンプレッサーは、冷媒を圧縮・循環させ、冷凍サイクルを成立させる中核部品です。

コンプレッサーはすべて同じ構造ではない

カーエアコン用コンプレッサーには、複数の圧縮方式があります。

大きく分けると、ピストンを往復させて圧縮する「ピストン式(往復動式)」と、ローターやスクロールを回転・旋回させる「回転式」があります。

クランク式、斜板式、スルーベーン式、スクロール式のコンプレッサー構造を比較した図
図1:カーエアコン用コンプレッサーの代表的な構造を比較した概念図。クランク式、斜板式、スルーベーン式、スクロール式を紹介しています。実際の構造や採用方式は車種・メーカー・年式によって異なります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

ピストン式(往復動式)

ピストン式は、ピストンを往復運動させることで吸入 → 圧縮 → 吐出を繰り返す方式です。

代表的なものとして、クランク式や斜板式があります。

斜板式

シャフトに対して斜めに配置された斜板(スワッシュプレート)の動きを利用し、複数のピストンを往復させます。

斜板式には固定容量タイプだけでなく、斜板角を変えてピストンストロークを変化させる可変容量タイプもあります。

例えばDENSOでは、デュアルスワッシュプレート式に固定容量タイプ、シングルスワッシュプレート式に可変容量タイプがあります。

スルーベーン式

スルーベーン式は回転式コンプレッサーの一つです。

ローターに設けられたベーンによって圧縮室を形成し、ローターの回転に伴う容積変化によって冷媒を圧縮します。

ピストンを往復させる斜板式とは、圧縮方法そのものが異なります。

スクロール式

スクロール式は、固定スクロールと旋回スクロールという2つの渦巻き形状を組み合わせて冷媒を圧縮する方式です。

冷媒は外周側から取り込まれ、旋回スクロールの動きによって中心方向へ移動しながら圧縮されます。

自動車用スクロールコンプレッサーでは、DENSOやSandenのほか、三菱重工系のスクロールコンプレッサーも広く知られています。

三菱重工ではカーエアコン用に独自の3Dスクロール技術を採用したコンプレッサーを開発し、ベルト駆動式だけでなくハイブリッド車・EV向け電動コンプレッサーにもスクロール技術を展開しています。

構造と「容量制御」は別に考える

斜板式・ベーン式・スクロール式というのは、「どのような構造で冷媒を圧縮するか」という分類です。

一方、固定容量式・可変容量式は、「どのように吐出量を調整するか」という別の分類です。

圧縮機構
斜板式・ベーン式・スクロール式など

容量制御
固定容量式・内部制御式可変容量・外部制御式可変容量など

固定容量式・可変容量式の違い

カーエアコン用コンプレッサーの固定容量式、内部制御式の可変容量式、電磁制御バルブを使う外部制御式の比較
図2:固定容量式と可変容量式の容量制御を比較した概念図。可変容量式は内部制御式と外部制御式に分けて紹介しています。採用方式や電磁クラッチの有無は車種・メーカー・年式によって異なります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

固定容量式

固定容量式は、基本的に1回転あたりの吐出量が一定です。

マグネットクラッチを使用するタイプでは、コンプレッサーをON/OFFすることで冷房能力を調整する方式があります。

内部制御式可変容量

内部制御式の可変容量斜板式コンプレッサーでは、内部の圧力状態などを利用して斜板角を変化させ、ピストンストロークと吐出量を調整します。

冷房負荷が大きい場合は吐出量を増やし、負荷が小さい場合は吐出量を減らすことができます。

外部制御式可変容量(電磁制御バルブ式)

外部制御式では、電磁制御バルブ(コントロールバルブ/ECV)を使用して容量を調整します。

車両側のエアコンECUなどが、温度・冷媒圧力・エンジン負荷などの情報をもとに、コントロールバルブへ電気信号を送ります。

可変容量斜板式では、その制御によってコンプレッサー内部の圧力バランスを変え、斜板角を変化させて吐出量を調整します。

外部制御式では、コンプレッサー本体が機械的に回転していても、制御バルブや制御信号に異常があれば十分な吐出量を得られないことがあります。

そのため、「プーリーが回っているからコンプレッサーは正常」とは判断できません。

マグネットクラッチ式とクラッチレス式

エンジンの回転をコンプレッサーへ伝える方法の一つに、マグネットクラッチを使用する方式があります。

作動条件が整い、クラッチのコイルへ通電すると、クラッチプレートが吸着してコンプレッサーシャフトへ駆動力が伝わります。

一方、外部制御式可変容量コンプレッサーには、マグネットクラッチを持たないクラッチレス式もあります。

この場合はコンプレッサーを機械的に回転させながら、コントロールバルブによって実際の吐出量を変化させます。

したがって、「クラッチがカチッと入らない=故障」という従来型の見方だけでは診断できません。

マグネットクラッチ不良では何が起きる?

マグネットクラッチ式で不具合が発生した場合、フィールドコイルの断線・焼損などが確認されることがあります。

コイルが断線すれば、通電しても磁力が発生せず、クラッチプレートを吸着できません。

また、コイルやクラッチに焼損が見られる場合は、クラッチ部分だけを原因と決めつけないことが重要です。

コイル焼損・クラッチ焼損の背景に、冷凍サイクル側の異常が隠れている場合があります。
  • 異常高圧
  • コンデンサーの放熱不足
  • 冷却ファン不良
  • 冷媒過充填
  • コンプレッサー内部ロック
  • クラッチ滑り
  • 電源電圧の異常

特に高圧側が異常に高くなると、コンプレッサーの駆動負荷が大きくなります。その負荷によってクラッチが滑ると、摩擦熱でクラッチ周辺が損傷することがあります。ただし、焼損の原因は異常高圧だけではありません。電源電圧の低下、クラッチのすき間、配線・接続部の状態、頻繁な接続・切離しも確認します。

焼けたクラッチやコイルだけを交換しても、根本原因が残っていれば再発する可能性があります。

クラッチが入らないときは、停止指令と電気系統も確認する

圧力異常などに対する保護制御で、クラッチへの通電が止められている場合があります。作動指令の有無、通電時の電圧、配線・アース、クラッチのすき間、コイルの状態を整備要領に沿って点検し、圧縮機構の故障と切り分けます。保護回路を短絡して強制作動させないでください。
技術参考:Sanden SDサービスガイド(クラッチ点検・滑りの説明)。記載の個別数値は対象製品用であり、全車共通ではありません。

「冷えない=コンプレッサー不良」ではない

エアコンが冷えない原因は、コンプレッサーだけではありません。次のような原因でも冷房能力は低下します。

  • 冷媒不足
  • 冷媒過充填
  • コンデンサーの放熱不足
  • 冷却ファン不良
  • レシーバー/ドライヤーの詰まりや機能不良
  • エキスパンションバルブの不具合
  • 配管内の詰まり・異物
  • 電気系・センサー・制御系の異常
  • 外部制御式コンプレッサーのコントロールバルブや制御信号の異常
高圧・低圧、冷媒量、放熱状態、制御状態などを確認し、コンプレッサー不良と判断できる根拠を持つことが重要です。

コンプレッサーオイルも非常に重要

コンプレッサー内部では、方式に応じてピストン・斜板・シュー・ベアリング・ベーン・スクロールなどが高速で作動しています。

これらを潤滑・冷却するために、コンプレッサーオイルが使用されています。

オイル不足や不適合なオイルの使用は、潤滑不良や焼き付きなど重大な故障の原因になります。

「R134aだからPAGなら何でもいい」「電動コンプレッサーだから必ずこのオイル」とは判断しないでください。

使用するオイルは、車両メーカー・コンプレッサーメーカーが指定する種類と量を確認することが基本です。

電動コンプレッサー

ハイブリッド車やEVでは、エンジン停止中でもエアコンを作動させるため、エンジンのベルトではなく高電圧電源と電動モーターで駆動する電動コンプレッサーを採用した車両があります。

電動コンプレッサーでは、スクロール式が広く採用されています。

圧縮機構だけでなく、モーター・インバーター・高電圧回路まで含めた構造になるため、ベルト駆動のコンプレッサーとは診断方法や取扱いが異なります。

コンプレッサー交換で一番大切なのは「なぜ壊れたか」

壊れたコンプレッサーを新品やリビルト品へ交換するだけで、修理が完了するとは限りません。なぜ故障したのかを確認する必要があります。

確認したい主な原因
  • 異常高圧
  • コンデンサーの放熱不足
  • 冷却ファン不良
  • 冷媒過充填・不足
  • コンプレッサーオイル不足
  • 不適合オイル
  • エキスパンションバルブ不良
  • 冷凍サイクル内の詰まり
  • 異物や金属粉の混入
  • 配管内部の汚染

原因を残したまま取り付けると、新しいコンプレッサーまで再び故障する可能性があります。

当社ではレシーバーとエキスパンションバルブを最低限同時交換

太田美品通商では、A/Cコンプレッサー交換時に、レシーバー(レシーバータンク/ドライヤー)とエキスパンションバルブの同時交換を最低限必要としています。

ただし、この2点を交換すればすべて解決するという意味ではありません。

故障した原因を取り除いてから、新しいコンプレッサーを取り付けることが重要です。

焼き付きなどでコンプレッサー内部から金属粉・異物が流出している場合は、冷媒回路全体の汚染状態を確認する必要があります。

サイクル洗浄や、構造上十分に洗浄できない部品の交換が必要になる場合もあります。

コンプレッサー交換では、冷凍サイクル全体を正常に戻す

コンプレッサー交換は、
冷凍サイクル全体を正常な状態へ戻す修理です。

故障原因を確認し、必要な関連部品を交換し、異物や詰まりがないことを確認したうえで、指定されたオイル・冷媒量で組み上げます。

交換したコンプレッサーを正常に使用するためには、こうした周辺の確認と整備も重要です。

まとめ|構造と制御方式を理解して診断する

今回のポイント
  • コンプレッサーは冷媒を圧縮・循環させる中核部品
  • 圧縮機構にはピストン式・ベーン式・スクロール式などがある
  • 「構造」と「容量制御」は別の分類
  • 固定容量式、内部制御式可変容量、外部制御式可変容量がある
  • 外部制御式では電磁制御バルブ(ECV)と制御信号を確認する
  • マグネットクラッチ式とクラッチレス式では診断方法が異なる
  • コイルやクラッチの焼損では、高圧異常などの背景原因も確認する
  • 冷えないという症状だけでコンプレッサー不良とは断定できない
  • 当社では交換時にレシーバーとエキスパンションバルブを最低限同時交換する
  • 故障した原因を特定し、冷凍サイクル全体を正常に戻すことが重要

コンプレッサーの種類や制御方式を理解せず、従来型と同じ感覚で診断すると、正常なコンプレッサーを故障と判断してしまう可能性もあります。

カーエアコン修理では、冷凍サイクル全体と制御方式を理解して診断することが重要です。

次回のカーエアコン技術編

コンデンサー・レシーバー・サブクールコンデンサーの役割

コンプレッサーで高温・高圧になった冷媒が、どのように放熱・凝縮されるのかを詳しく解説します。

ご注意

本記事では、カーエアコン用コンプレッサーの代表的な構造・制御方式を解説しています。

実際の構造、容量制御方式、使用冷媒、コンプレッサーオイル、交換手順、関連部品の交換条件などは、車種・年式・コンプレッサー型式によって異なります。

実車の点検・修理時は、対象車両の整備要領書およびコンプレッサーメーカーの指定事項を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンの仕組みとは?冷凍サイクルと5つの主要部品の役割

カーエアコンが冷える仕組みを紹介するアイキャッチ。吹き出し口から車内へ広がる冷風のイメージ

カーエアコン技術編・第1話

車のエアコンをONにすると、吹き出し口から冷たい風が出てきます。では、カーエアコンはどのように空気を冷やしているのでしょうか。

カーエアコンは、車室内の熱を冷媒に吸収させ、その熱を車外へ放出することで冷房を行います。

この仕組みを支える冷媒の循環と状態変化を「冷凍サイクル」といいます。

今回は、コンプレッサー、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターの役割と、冷媒が循環する仕組みを解説します。

基本例として、レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な構成を取り上げます。実際の構造や制御方法は、車種やシステムによって異なります。

冷媒は5つの主要部品を通って循環する

代表的なレシーバーサイクルでは、冷媒は次の順番で流れ、再びコンプレッサーへ戻ります。

  1. コンプレッサー:ガス冷媒を圧縮する
  2. コンデンサー:熱を車外へ放出し、冷媒を液化させる
  3. レシーバータンク:液冷媒を一時的に蓄える
  4. エキスパンションバルブ:冷媒を減圧し、流量を調整する
  5. エバポレーター:空気から熱を吸収し、冷媒を蒸発させる

エバポレーターを出たガス冷媒は、再びコンプレッサーに吸い込まれます。

コンプレッサー、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターを循環する冷媒の流れと状態変化
レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な冷凍サイクル。冷媒が圧縮・凝縮・減圧・蒸発を繰り返し、車室内の熱を車外へ運びます。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

冷媒は、圧力・温度・状態を変えながら熱を運ぶ

冷媒は、同じ状態のまま循環しているわけではありません。サイクル内で圧力や温度が変わり、気体・液体・両方が混在した状態へと変化します。

工程 主な部品 冷媒の変化
圧縮 コンプレッサー 低圧のガスから、高温・高圧のガスになる
凝縮 コンデンサー 熱を放出し、ガスから高圧の液体へ変化する
減圧 エキスパンションバルブ 高圧の液体から、低温・低圧の液とガスが混在した状態になる
蒸発 エバポレーター 空気から熱を吸収して液体が蒸発し、低圧のガスになる

この「圧縮・凝縮・減圧・蒸発」を繰り返すことで、車室内の熱を車外へ運んでいます。

① コンプレッサー|ガス冷媒を圧縮する

コンプレッサーは、エバポレーターから戻った低圧のガス冷媒を吸い込み、圧縮して高温・高圧のガス冷媒にします。

圧縮された冷媒は、次のコンデンサーへ送り出されます。

コンプレッサーの役割は、冷媒を圧縮し、サイクル内を循環させることです。

コンプレッサーが直接、冷たい空気を作っているわけではありません。

コンプレッサーには、斜板式、スルーベーン式、スクロール式など、さまざまな構造があります。コンプレッサーの種類や容量制御方式、交換時の注意点は、カーエアコンのコンプレッサー解説もご覧ください。

② コンデンサー|冷媒の熱を車外へ放出する

コンデンサーには、コンプレッサーから高温・高圧のガス冷媒が入ります。

走行風や冷却ファンの風によって熱が車外へ放出され、冷媒はガスから液体へ変化していきます。この変化を「凝縮」といいます。

コンデンサーは、冷媒が運んできた熱を車外へ放出する熱交換器です。

放熱不足や冷却ファンの不具合は、冷媒圧力や冷房性能に影響します。冷却方式と高圧異常の確認ポイントは、コンデンサーの解説をご覧ください。

③ レシーバータンク|液冷媒を一時的に蓄える

コンデンサーで液化した冷媒は、レシーバータンクへ送られます。

レシーバータンクは、冷房負荷に応じて冷媒を供給できるよう、液冷媒を一時的に蓄えます。内部にストレーナや乾燥剤を備え、異物や水分を取り除く構造のものもあります。

ストレーナ
冷媒回路内の異物などを取り除きます。

乾燥剤
冷媒回路内の水分を吸着します。

すべての車両に、独立したレシーバータンクがあるわけではありません。車種によっては、コンデンサーと気液分離器(モジュレータ)を組み合わせたサブクールコンデンサー方式などが採用されています。構造や交換時の確認点は、レシーバータンクの役割と同時交換についてもご覧ください。

④ エキスパンションバルブ|冷媒を減圧し、流量を調整する

レシーバータンクを通過した高圧の液冷媒は、エキスパンションバルブへ送られます。

冷媒がバルブの絞りを通過すると圧力が下がり、低温・低圧の液とガスが混在した状態となってエバポレーターへ入ります。

また、エキスパンションバルブは、エバポレーターの状態に応じて冷媒の流量を調整します。構造や不具合時の確認点は、エキスパンションバルブの解説にまとめています。

主な役割は2つです。
  • 高圧の液冷媒を減圧する
  • エバポレーターへ送る冷媒量を調整する

⑤ エバポレーター|空気の熱を冷媒に吸収させる

エキスパンションバルブを通過した低温・低圧の冷媒は、エバポレーターへ入ります。

ブロワによって送られた空気がエバポレーターを通過すると、その空気の熱が冷媒に吸収されます。熱を奪われた空気は温度が下がり、車室内へ送られます。

一方、冷媒は熱を吸収して蒸発し、ガスとなってコンプレッサーへ戻ります。

エバポレーターは、空気から熱を吸収する熱交換器です。除湿・凍結・冷え不良の確認点は、エバポレーターの解説もご覧ください。

カーエアコンが除湿できる理由

エバポレーターには、空気を冷やすとともに除湿する働きがあります。

湿った空気が冷たいエバポレーター表面に触れて冷やされると、条件に応じて空気中の水分が結露し、水滴になります。この水はドレンホースを通って車外へ排出されます。

夏場、エアコンを使用した車の下に水が落ちていることがあります。正常なエアコン作動による結露水であれば、異常ではありません。

この除湿作用は、雨天時などの窓ガラスの曇り取りにも役立ちます。

高圧側と低圧側はどこで分かれる?

冷凍サイクルでは、コンプレッサーで冷媒の圧力が上がり、エキスパンションバルブで圧力が下がります。この2つを境に、高圧側と低圧側に分けて考えます。

区分 範囲 主な冷媒の状態変化
高圧側 コンプレッサー吐出側から、エキスパンションバルブ入口側まで 高温・高圧のガスから、高圧の液体へ
低圧側 エキスパンションバルブ出口側から、コンプレッサー吸入側まで 低温・低圧の液とガスが混在した状態から、低圧のガスへ

高圧側と低圧側の圧力は、故障診断の重要な情報です。ただし、圧力だけで故障部品を断定することはできません。

冷媒圧力は、外気温、コンプレッサーの作動条件、冷媒量、コンデンサーの放熱状態、冷却ファン、エキスパンションバルブの状態などによって変化します。

冷媒は多く入れるほど冷えるわけではない

カーエアコンには、車両ごとに指定された適正な冷媒量があります。

冷媒が不足している場合
エバポレーターへ十分な冷媒を供給できず、冷房能力が低下する原因になります。

冷媒を入れすぎた場合
高圧側の圧力が異常に高くなる原因となり、冷房性能の低下や、コンプレッサー・配管・コンデンサーなどへの過大な負担につながる可能性があります。

冷媒は、対象車両の指定充填量と整備要領に従って充填することが基本です。

「冷えないから、とりあえず追加する」という判断では、冷媒量が適正になるとは限りません。

サブクールコンデンサー方式などでは、従来のレシーバーサイクルと冷媒量の確認方法が異なる場合があります。対象車両の方式と指定値を確認してください。

冷えないときは、冷凍サイクル全体を確認する

コンプレッサーが正常でも、次のような原因で冷房能力が低下することがあります。

  • コンデンサーが十分に放熱できていない
  • 冷却ファンが正常に作動していない
  • 冷媒量が適正でない
  • エキスパンションバルブに異常がある
  • エバポレーターが正常に熱交換できていない
  • 冷媒回路や制御系に異常がある
「エアコンが冷えない」という症状だけで、コンプレッサー故障と決めつけることはできません。

冷媒量、圧力、放熱状態、関連部品の作動などを合わせて確認し、原因を絞り込むことが大切です。

冷凍サイクルを理解することが、診断の第一歩

カーエアコンは、冷媒が圧縮・凝縮・減圧・蒸発を繰り返し、車室内の熱を車外へ運ぶことで冷房を行います。

5つの主要部品の役割
  • コンプレッサー:ガス冷媒を圧縮する
  • コンデンサー:車外へ熱を放出して冷媒を凝縮させる
  • レシーバータンク:液冷媒を蓄え、ストレーナや乾燥剤で異物・水分を除去する
  • エキスパンションバルブ:冷媒を減圧し、流量を調整する
  • エバポレーター:冷媒を蒸発させ、空気から熱を吸収する

どこかが正常に機能しなければ、冷房性能が低下する可能性があります。部品交換を判断する際も、冷凍サイクル全体の状態を確認することが重要です。

次回のカーエアコン技術編

コンプレッサーとはどんな部品?種類・構造・役割を詳しく解説

冷凍サイクルの中心となるコンプレッサーについて、構造や方式の違いを解説します。

本記事の説明範囲

本記事は、レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な構成を中心に説明しています。

実際の構造、使用冷媒、制御方法、圧力、冷媒充填量は、車種・年式・システムによって異なります。実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書、メーカー指定値、使用冷媒、指定充填量をご確認ください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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