車のエアコンが臭い|フィルター交換で消えない臭いとエバポレーターの点検

フィルター交換で残るエアコンの臭いとエバポレーター点検を紹介するイメージ

カーエアコン技術編・第20話

「エアコンをつけると、吹き出し口からカビ臭い風が出る」「フィルターを新品にしたのに、まだ臭う」。そんなときは、フィルターより奥にあるエバポレーターも点検したい場所です。

エバポレーターは空気を冷やす熱交換器です。冷房中は表面に水分がつき、汚れがたまると臭いの発生源になることがあります。この記事では、フィルター交換で消えない臭いについて、整備工場で確認する箇所と、清掃・交換を相談するときのポイントを紹介します。

フィルター交換では、エバポレーターの汚れは落ちません。

フィルターは空気中のほこりなどを捕らえる部品です。奥の熱交換器やケースに汚れが残っていれば、新しいフィルターに替えても臭いが続くことがあります。

臭いが気になる場面から、確認する場所を探す

気になる症状 確認する内容
冷房をつけた直後に臭う エバポレーターの湿り・表面の汚れ
フィルターを替えても臭う フィルター以外の臭いの発生源
洗浄したが、また臭ってきた 汚れが残る箇所・排水・清掃方法
足元の湿りや水漏れもある ドレンと空調ケースなどの点検
エバポレーター交換を勧められた 現品品番・配管形状・付属部品の確認

エバポレーターに臭いが残るのはなぜ?

冷房中、エバポレーターの冷たい表面に空気中の水分が結露します。その水はケース内に集まり、ドレンを通って車外へ排出されます。冷房を使った後、車の下に水が落ちるのは、この排水であることがあります。

湿った表面にほこりなどが付着すると、カビや細菌が繁殖して臭いにつながることがあります。また、たばこ・ペット・芳香剤などの臭いが空調内部に残る場合もあります。吹き出し口の臭いを相談するときは、普段の車内の使い方も伝えておくと役立ちます。[資料1]

フィルター、エバポレーター、吹き出し口と結露水の排水経路を示した模式図
フィルター交換とエバポレーター清掃では、手を入れる場所が異なります。配置は車種によって異なります。

部品の役割や冷媒との関係は、第6話「エバポレーター」で詳しく紹介しています。

フィルターを替えても臭うときに確認したいこと

まずは交換したフィルターの適合・取り付け方向・装着状態を確認します。フィルターを交換しても、すべての種類の臭いを取り除けるわけではありません。脱臭機能付きでも、車内や空調内部の臭いの発生源までなくなるわけではないためです。[資料2]

  • 交換した時期:いつ、どのフィルターに替えたか。交換直後に臭いが変わったか。
  • 臭うタイミング:つけ始めだけか、使っている間も続くか。冷房を使わない送風時にも臭うか。
  • 車内の状態:濡れたフロアマット、飲み物のこぼれ、たばこや芳香剤など、ほかに心当たりがないか。
  • 外気との関係:特定の場所や外気導入時だけ臭うか。

フィルターの交換は取扱説明書に従い、作動を止めて行ってください。ケース内へ落ち葉やゴミを落とさず、フィルターを外したまま運転しないようにします。

エバポレーターと一緒に、排水も点検する

エバポレーターの表面だけでなく、空調ケース内の汚れやドレンの詰まり・外れなども整備工場で確認します。ブロアファンの羽根や周囲に、ほこり・汚れ・異物が残っていないかも併せて確認してもらいましょう。足元のカーペットが湿る、水の音がする、といった変化があれば、臭いと合わせて伝えてください。雨水の浸入など別の原因もあるため、濡れている場所の確認から始めます。

車の下に水が見えない日があっても、それだけでドレン詰まりとは判断できません。外気の湿度や冷房の使用状況によって、結露水の量は変わります。ドレンへ針金などを差し込む作業は避け、排水経路の確認を依頼してください。

臭いに加えて風も弱い場合は、第18話「車のエアコンの風が弱い」もご覧ください。

甘い臭いに、足元の濡れや窓の曇りが伴うときは

甘い臭いがして、足元のカーペットが濡れる、窓が曇りやすくなる、冷却水が減るといった変化もある場合は、ヒーターコアやその接続部からの冷却水漏れがないか、早めに整備工場で点検を受けてください。ヒーターコアは暖房用の熱交換器で、エバポレーターとは別の部品です。漏れがあれば、消臭やエバポレーター洗浄では改善しません。

窓の曇りで視界が確保できない、水温の警告が出る場合は、安全な場所に停車し、走行を続けず整備工場やロードサービスへ相談してください。

清掃で対応できる? エバポレーター交換が必要?

表面の汚れが原因で、部品に損傷がなければ、まず適切な清掃を相談します。一方、腐食による穴や冷媒漏れなどが確認された場合は、臭いの清掃とは別に修理が必要になります。

点検で分かった状態 整備工場へ相談する内容
表面に汚れがあり、損傷は見つからない エバポレーターとケースの清掃、排水状態の確認
清掃後も臭いが残る・再発する 臭いの発生源を再確認。薬剤が届く範囲、残った汚れ、ケースやドレンの状態を確認
奥の汚れが落とせず、取り外しての作業が必要 取り外して清掃する場合と交換する場合の、作業範囲・費用を比較
腐食による損傷や冷媒漏れなどが確認された 交換部品の選定と、必要な付随作業の見積もり

洗浄剤には、エバポレーターの表面処理や材質に合わないものもあります。DENSOは、塩化物を含む薬剤や強いアルカリ性の薬剤による、表面処理の損傷・腐食に注意を促しています。吹き出し口へ薬剤を大量に噴射する前に、車両に対応した施工方法か確認してください。[資料1]

また、洗浄で腐食した金属や穴を元に戻すことはできません。Nissensも、損傷や腐食などが生じたエバポレーターについて交換の必要性を案内しています。[資料3]

「洗浄しても臭うので交換しましょう」と提案されたときは、どこに汚れが残っているのか、取り外しての清掃が可能かも聞いてみてください。部品代だけでなく、脱着作業を含めて比べると判断しやすくなります。

交換費用は、部品代と脱着作業を合わせて確認

エバポレーターは空調ケースの内部にあり、車種によってはダッシュボードなどの取り外しが必要です。交換の見積もりでは、部品代のほか、脱着工賃、冷媒の回収・充填、シール類などの費用と、車を預ける日数を確認しましょう。

エバポレーター単体かケースなどを含むASSYか、エキスパンションバルブやセンサーが付属するかは商品によって異なります。既存部品を移す範囲や同時交換する部品は、車両の整備要領と現品の状態に合わせて整備工場と相談します。

相談時に伝えておくとよいこと

  • 臭いが出る場面と、いつから気になっているか
  • フィルター交換・洗浄の時期と、その後の変化
  • 風量や冷えの変化、足元の湿りの有無
  • 工場で確認された汚れ・損傷・漏れの箇所

焦げ臭さ、燃料や排気のような臭いがある場合は、カビ臭への対処を続けず、安全な場所に停車して整備工場へ相談してください。

エバポレーターの適合・在庫確認は太田美品通商へ

交換するエバポレーターをお探しの際は、エバポレーターの商品一覧をご覧ください。取り寄せ・納期確認が必要な商品もありますので、入庫や分解の日程を決める前にご相談ください。

適合確認には、車台番号全桁・現品ラベルや刻印の品番・現品写真をお送りください。写真は部品全体、配管接続部、取り付け部、センサーやコネクターがある場合はその部分も分かるものが役立ちます。

現品がケース内にあり見えない場合は、まず車両情報と整備工場で分かっている品番をお知らせください。写真のためにご自身で分解する必要はありません。必要な確認事項を整理し、整備工場で確認できる範囲で照合します。実車の点検・清掃・交換作業は整備工場へご依頼ください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

適合確認フォーム LINEで適合確認 メールで相談

参考資料

構造や整備方法は車種によって異なります。車両・部品メーカーの整備要領に従ってください。アイキャッチはイメージ、本文図解は模式図で、特定商品の形状・適合を示すものではありません。

カーエアコンが最初は冷えるのに途中で冷えなくなる|原因と確認方法

車の吹出口と、最初は冷えるのに途中で冷えない症状の確認ポイントを示した第12話のアイキャッチ

カーエアコン技術編・第12話

「出発したときは冷えていたのに、しばらく走るとぬるい風になる」「休ませるとまた冷える」「整備工場に着くと症状が消えている」。このような不調では、冷えなくなったときに風量も落ちているかが、確認を進める手がかりになります。

最初に確認するのは「風の量」と「風の温度」。
同じ「途中で冷えない」でも、空気が通りにくくなった場合と、風は出ているのに冷やせなくなった場合では、点検する箇所が異なります。時間がたつと直ることだけで、ガス不足やコンプレッサー故障とは決められません。

この記事では、運転者が安全に記録できることと、整備工場で調べることを分けて説明します。

読んだ後にすることは3つです。

  1. 冷えないときに、風量も弱くなるか記録する。
  2. 発生までの時間・走行状況・休ませた後の変化を整備工場へ伝える。
  3. 症状が出ているときの点検結果から、修理する箇所を決める。

症状早見表|途中で冷えなくなったとき

当てはまる項目を選ぶと、記事内の詳しい説明へ進めます。点検の手掛かりとしてご覧ください。症状だけで故障部品を決める表ではありません。

症状・知りたいこと 確認する内容
風量も弱くなる 凍結など、空気の通り道の確認
風量は同じでぬるくなる 作動指示と実際の動きの確認
休ませると冷える 一時回復したときの考え方
整備工場では症状が出ない 発生条件を伝えるポイント

まず、冷えなくなったときの風量を比べる

AUTO運転では風量が自動で変わるため、設定風量や吹出口の切り替わりも一緒に確認してください。操作・撮影は安全な場所に停車してから行います。

図1|途中で冷えなくなったときの分かれ道
最初は冷える → 途中で冷えない
設定を確認し、吹出口の風を比べる
↓
A 風量も弱くなる

設定を変えていないのに、風が出にくい。

空気の通り道・送風を確認

例:エバポレーターの凍結、送風機の作動不良など。
「冷やせない」だけでなく「風を通せない」状態も調べます。

B 風量は同じでぬるい

風は出るのに、冷たさがなくなる。

冷却の作動・制御を確認

例:コンプレッサーの作動、電気系統、冷媒の圧力・流れ、温度調整機構など。
止まっているなら「なぜ止まったか」まで調べます。

点検の入口を示す概念図です。症状が重なる場合もあり、この図だけで交換部品は決まりません。

風量も弱くなる場合|エバポレーターの凍結などを確認

車内の空気を冷やすエバポレーターは、細かいフィンの間に空気を通す部品です。着霜が進んで空気の通り道をふさぐと、送風機が動いていても吹出口の風が弱くなります。

凍結が起きた場合のイメージ
使用開始時:空気が通る → 冷たい風が出る
着霜が進行:空気の通り道が狭くなる → 風が弱くなる
停止後に氷が解ける:風が通りやすくなる → 一時的に戻ることがある
図2|氷が増えると、空気の通り道が狭くなる
空気が通る状態

→→

→→

フィンの間を空気が通り、冷やされた空気が吹出口へ。

着霜が進んだ状態

→→

→

水色は氷のイメージ。すき間が狭くなり、通れる空気が減ります。

エバポレーターの空気の通り道を単純化した概念図です。フィン・氷の寸法や風量比を示すものではありません。

ただし、「休ませたら戻った」だけで凍結とは断定できません。整備工場では温度検出・凍結防止制御、送風量、フィルターやエバポレーターの状態などを確認します。送風機そのものの作動が途中で変わっていないかも点検対象です。

DENSOの診断資料にも、冷たい状態なのに空気が出ない場合の確認項目としてエバポレーターの着霜が示されています。DENSOの診断資料

部品の役割はエバポレーターの仕組み・除湿・凍結で説明しています。

風量は変わらずぬるくなる場合|作動指示と実際の動きを確認

A/Cランプは冷房操作の状態を示すもので、コンプレッサーが実際に作動していることを直接示すランプではありません。整備工場では、冷えなくなったときに「車両が作動を指示しているか」「その指示どおり動いているか」を確認します。

図3|「コンプレッサーが止まった」の、その先を調べる
冷えない瞬間に、整備工場で確認
冷房の要求・作動指示と、実際の作動を照合
↓
作動指示が出ていない

温度・圧力などの入力、保護制御、故障情報、車両の制御条件を確認。

停止させた理由を調べる

指示があるのに作動しない

電源・配線・接続と、コンプレッサー方式に応じた駆動・制御部分を確認。

指示が実際の動きに変わらない理由を調べる

作動しているのに冷えない場合
高圧・低圧、各部温度、冷媒の状態、放熱、車内の温度調整機構などを組み合わせて確認。

専門点検の考え方を示す図です。マグネットクラッチのない方式や電動コンプレッサーもあり、確認方法は車種で異なります。

温まったときだけ、クラッチがつながらないこともある

マグネットクラッチは、エンジンから伝わる回転をコンプレッサーにつないだり、切り離したりする部品です。電磁石の力で接続するため、接続部分のすき間、供給電圧、コイルなどが点検項目になります。サンデンのSDシリーズ整備資料には、すき間が過大な場合、通常使用で温まった後に接続できなくなることがあると記載されています。

このため、冷えているときだけ正常でも、症状が出た状態との比較が必要です。資料の寸法・電圧の指定値は対象製品のもので、すべての車両に共通ではありません。Sanden SD Service Manual「7.2 Clutch Inspection」

クラッチが切れること自体は、必ずしも故障ではありません。

クラッチ式では、温度調整や凍結防止などの通常の制御でも接続・切断が行われます。問題は、冷房が必要なのに冷えない状態が続く、または繰り返すことです。停止している場面だけを見ず、そのときの温度・圧力・作動条件を照合します。

異常高圧を検出すると、保護のためクラッチを切る

高圧保護制御を備えたマグネットクラッチ式では、圧力スイッチや圧力センサーで異常高圧を検出すると、クラッチへの通電を止めてコンプレッサーの作動を停止させます。過大な負荷による損傷を防ぎ、コンプレッサーと冷媒回路を保護するための動作です。

途中でぬるい風になる一例
放熱不足などで高圧側の圧力が上昇
↓
異常高圧を検出し、保護制御が働く
↓
クラッチを切ってコンプレッサーが停止
↓
送風は続いても、冷たい風が出なくなる

この場合は「コンプレッサーが止まったから壊れている」と決めず、なぜ高圧が上がったかを確認します。コンデンサーの放熱、冷却ファン、冷媒量などの点検が必要です。高圧が高くなる原因と確認ポイントもご覧ください。

保護制御は損傷を防ぐための仕組みですが、焼付き・ロックを必ず防げるという意味ではありません。圧力が下がって再び冷えるようになっても、異常の原因が解消したとは限りません。作動条件や復帰条件は車種で異なり、クラッチのない方式では停止・出力制限の方法も異なります。保護機能を無効にして動かし続けないでください。

圧力検出による保護の仕組み:DENSO「圧力スイッチ・センサー」

停車中だけ悪化し、走り出すと改善する症状は、停車中に冷えない・走ると冷える場合も参考にしてください。

休ませると冷えるのは、直ったということ?

一時的な回復と、原因が解消したことは別です。氷が解けた、部品の温度が下がった、制御条件が変わったなど、回復につながる事情は複数あります。「再始動で戻る」「翌朝は冷える」という情報も、何分ほど休ませたかと一緒に伝えると役立ちます。

毎回ほぼ同じ時間で起きるか、暑い日だけか、走行中にも起きるかを記録してください。時間だけで特定部品の故障と判断することはできません。

整備工場で症状が出ないときに伝えること

正常に冷えているときの点検だけでは、途中で起きる不調を捉えられないことがあります。予約時に「一定時間使うと症状が出る」と伝え、再現確認が必要なことを共有しましょう。

そのまま使える症状メモ
① 車種・初度登録年月・型式・走行距離
② 冷えなくなるまでの時間:およそ__分
③ 発生状況:走行中/停車中/両方、外気温表示__℃
④ 設定:AUTO/手動、設定温度、風量、内気/外気
⑤ 風量:弱くなる/変わらない/分からない
⑥ 回復:休止・再始動後に戻るか、休ませた時間
⑦ 異音・臭い・警告表示の有無
⑧ 最近の冷媒補充・修理・部品交換の履歴

安全に停車した状態で、空調パネルの設定や警告表示を撮影しておく方法もあります。運転中の操作・撮影や、症状を出すための無理な連続運転は避けてください。風の温度や風量は動画だけでは正確に測れないため、体感の変化も言葉で添えます。

ガス補充やコンプレッサー交換を先に決めない

「最初は冷えるからガス量は正常」「途中で止まるからコンプレッサー交換」とは限りません。必要なのは、症状が出たときの作動と測定結果に合った修理です。

冷媒の残量が不明なまま追加すると過充填になるおそれがあります。冷媒量の確認・回収・充填は車両の整備要領に従い、漏れがあれば原因も確認します。詳しくはガス漏れに補充だけで対応するリスクをご覧ください。

交換が必要と判断された場合も、品番・車両仕様・現品を照合します。同じ車名でも仕様が異なることがあるため、症状や外観が似ていることだけで注文しないようにしてください。

よくある質問

そのまま使い続けても大丈夫ですか?

冷えない原因が分からない状態で、問題ないとは言い切れません。繰り返す場合は早めに点検を受けてください。異音・焦げ臭いにおいが出たらA/Cの使用をやめ、水温警告などがある場合は車両の取扱説明書に従って安全に停車し、整備工場やロードサービスへ連絡します。

修理代はいくらになりますか?

電気系統、送風系統、冷媒回路、コンプレッサーなど、原因と交換範囲によって異なります。まず診断費用と再現確認の進め方を相談し、原因が分かった段階で部品代・作業工賃を含む見積もりを確認してください。

A/Cを入れ直して冷えれば、様子を見てもよいですか?

入れ直したら戻ったことは、点検の手がかりです。再発する場合は回復までの時間も記録して相談してください。繰り返し入れ直すことを修理の代わりにしないことが大切です。

原因の点検後は、品番・車両情報・現品写真で適合確認

故障原因の診断は、実車を点検できる整備工場へご相談ください。太田美品通商への交換部品の適合確認では、車両情報・現品品番・現品写真をお知らせください。整備工場で確認した交換対象部品が分かれば、その情報も添えていただくと確認が進めやすくなります。

部品選びで迷ったら、ご注文前に適合確認

車検証の情報、現品ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真をご用意ください。写真撮影のためにご自身で分解する必要はありません。

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本記事は代表的な症状と確認の考え方を整理したものです。図解は当社作成の概念図で、特定車種の診断手順ではありません。点検・修理は対象車両および部品メーカーの整備要領に従ってください。

カーエアコンのエバポレーターとは?冷える仕組み・除湿・凍結・故障症状を解説

カーエアコンのエバポレーターをイメージした画像。冷房・除湿の仕組みと、凍結や故障症状の確認ポイントを紹介。

カーエアコン技術編・第6話

カーエアコンで、車室内へ送る空気から熱を吸収する熱交換器がエバポレーター(蒸発器)です。

内部を流れる低温・低圧の冷媒が蒸発するときに、通過する空気から熱を吸収します。この働きによって、車室内へ送る空気を冷やしています。


冷房には、冷媒が正常に流れることと、エバポレーターに十分な空気が通ることの両方が必要です。

この記事では、エバポレーターの構造と冷える仕組み、除湿・排水、凍結、臭い、冷媒漏れ、故障診断の確認ポイントを解説します。

エバポレーターはどこにある?

多くの車両では、ダッシュボード内部のHVACユニットに組み込まれています。

HVACはHeating・Ventilation・Air Conditioningの略で、暖房・換気・空調を表します。車両では、ブロワ、フィルター、エアミックスダンパ、温度センサーなどと組み合わせて、温度や風量、吹き出し方向を調整します。

基本構造は、冷媒が流れるチューブとフィン

エバポレーターは、冷媒が流れるチューブと、空気との熱交換を助ける薄いフィンなどで構成されています。限られたスペースで効率よく熱交換できるように作られています。

エバポレーターで空気が冷える仕組み

コンデンサーで液化された高圧の冷媒は、エキスパンションバルブで減圧されます。減圧後は、低温・低圧の液体とガスが混在した状態でエバポレーターへ入ります。

液冷媒が気体へ変化するには、熱が必要です。エバポレーターを通過する空気からその熱を吸収するため、空気の温度が下がります。


エバポレーターを通る冷媒と空気の流れ、フィンとチューブの構造、冷房・除湿の役割、よくあるトラブルをまとめた図
図1:エバポレーターの仕組みと役割。冷媒の蒸発によって空気の熱を吸収し、冷房と除湿を行います。実際の構造や配置は車種によって異なります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。
空気が冷えるまでの流れ

  1. ブロワの送風により、空気がエバポレーターを通る
  2. 内部の冷媒が蒸発しながら、空気の熱を吸収する
  3. 温度が下がった空気が、吹出口から車室内へ送られる

冷えていても、風が十分に通らなければ冷房能力は落ちる

エバポレーター内部で冷媒が蒸発していても、通過する空気量が少なければ、車室内へ十分な冷気を送れません。

「冷えない」「風が弱い」という場合は、冷媒回路に加えて、次の空気側の項目も確認します。

  • キャビンフィルターの詰まり
  • ブロワモーターの回転不足
  • ブロワレジスターや制御系の異常
  • エバポレーターフィンの汚れ
  • エバポレーターの凍結
  • ダクトの詰まり・外れ
  • ダンパの作動不良

キャビンフィルターの詰まりも確認する

フィルターが汚れて空気を十分に通せなくなると、ブロワが正常に回っていても、エバポレーターを通過する風量が減ります。

その結果、吹出口の風量や冷房性能が低下する場合があります。風が弱いという症状だけでブロワモーター故障と決めつけず、フィルターやフィンの汚れも確認します。

除湿と結露水の排出

湿った空気が冷たいエバポレーターを通ると、条件に応じて空気中の水蒸気が結露し、水滴になります。空気から水分が取り除かれることで、除湿が行われます。

結露水は空調ケース内のドレン部へ集まり、ドレンホースを通って車外へ排出されます。


A/C使用時に、ドレンから透明な結露水が出るのは正常な現象です。

窓の曇り取りにも役立つ

A/Cで除湿した空気をガラスへ送ると、曇り取りに役立ちます。必要に応じてヒーターコアで再加熱し、乾燥した暖かい空気をフロントガラスへ送る制御も行われます。

エバポレーターが凍る「フロスト」とは?

エバポレーターの温度が下がりすぎると、水分が凍ってフィンの間に霜や氷が付着します。この状態をフロストと呼びます。

氷が空気の通り道を塞ぐと風量が落ち、冷えにくくなります。

凍結時に見られる症状の例

  1. 最初はよく冷える
  2. 徐々に凍結し、フィンの間が氷で塞がれる
  3. 吹出口の風量が弱くなり、冷えなくなる
  4. A/Cを止めて氷が溶けると、再び冷える

「しばらく使うと風が弱くなり、休ませると戻る」という場合は、凍結の有無も確認します。

凍結の原因は一つではない

  • エキスパンションバルブの作動異常
  • 冷媒流量の制御異常
  • エバポレーター温度センサーの異常・取り付け不良
  • キャビンフィルターの詰まり
  • ブロワの風量不足
  • 凍結防止制御の異常

凍結したという理由だけで、エバポレーター本体の故障とは判断できません。風量や温度検出、冷媒状態、制御系を含めて確認します。


停止すれば冷房が戻る場合でも、凍結を繰り返すときは原因を確認することが重要です。

温度センサーと凍結防止制御

多くの車両では、サーミスタなどの温度センサーでエバポレーターの温度を監視しています。

温度が下がりすぎると、コンプレッサーを一時停止したり、可変容量コンプレッサーの吐出量を減らしたりして、凍結を防ぎます。

センサーの取り付け位置がずれている場合や、正しい温度を検出できない場合は、凍結防止制御が正常に働かなくなる可能性があります。

EPRを使用する方式もある

車種やシステムによっては、EPR(Evaporator Pressure Regulator:エバポレーター圧力調整弁)を使用します。

EPRはエバポレーター側の圧力が必要以上に下がらないよう調整し、蒸発温度の低下を抑えるための装置です。すべての車両に使用されているわけではありません。

エバポレーターからの冷媒漏れ

エバポレーターも冷媒が流れる部品のため、腐食・振動・経年劣化・損傷などによって漏れが発生する場合があります。

多くの車両ではダッシュボード内部の空調ケースに収納されているため、コンデンサーやエンジンルーム内の配管よりも目視しにくい部品です。

漏れの確認方法

対象車両や設備、メーカー指定に応じて、次のような確認を組み合わせます。

  • 電子式リークディテクターによる検査
  • 対象車両に適したリーク検査
  • メーカーが認める場合のUV蛍光剤による確認
  • ドレン付近での冷媒漏れ検知
  • 冷媒量の減少の確認

冷媒量の減少だけでは、漏れ箇所を特定できません。コンデンサー、ホース、配管、Oリング、コンプレッサーなど、回路全体を確認します。

エアコンから嫌な臭いがする場合

結露で湿ったエバポレーターにホコリや汚れが付着し、条件がそろうと、カビや細菌などが増殖して臭いの原因になる場合があります。

ただし、臭いがするからといって、すぐにエバポレーター交換が必要とは限りません。

  • キャビンフィルターの状態
  • エバポレーター表面の汚れ
  • ドレンの排水状態
  • 空調ケース内部の汚れ
  • 適切な方法によるエバポレーター洗浄の可否

フィルター交換後も臭いが残るときの点検箇所や、清掃・交換の相談については、第20話「車のエアコンが臭い|フィルター交換で消えない臭いとエバポレーターの点検」をご覧ください。

洗浄方法と薬剤の選定にも注意

薬剤によっては、アルミ材や表面処理・コーティングへ悪影響を与え、腐食の原因になる可能性があります。


洗浄には、対象車両・部品に適合した方法と薬剤を使用してください。

交換作業が大掛かりになりやすい理由

エバポレーターはダッシュボード内部に組み込まれていることが多く、交換するためにダッシュボードや周辺部品を大きく分解する車種があります。

そのため、部品代に加えて分解・組み付けの作業工賃が大きくなる場合があります。交換前に、漏れや不具合の原因を適切に確認することが重要です。

エバポレーター側の状態はコンプレッサーにも関係する

エバポレーターへの風量が極端に不足すると、空気から冷媒へ伝わる熱量が減ります。

一般的なTXV方式では、エバポレーター出口の冷媒状態に応じて、エキスパンションバルブが冷媒流量を絞る方向へ作動します。運転条件によっては、低圧側の圧力が低下する場合があります。

風量不足が冷媒側へ影響する流れ

  1. エバポレーターを通る空気が少なくなる
  2. 空気から受け取る熱量が減る
  3. 蒸発できる冷媒量が減る
  4. エキパンの開度や冷媒循環状態が変わる

冷媒・オイルの循環状態まで悪化すると、コンプレッサーの潤滑や冷却条件へ影響する可能性があります。コンプレッサー故障の原因を調べる際も、エバポレーター側の風量や熱交換状態を確認します。

冷え不良は「冷媒側」と「空気側」の両方から診断する

冷え不良の原因には、冷媒不足・過充填、コンプレッサーの能力不足、コンデンサーの放熱不足、冷却ファン不良、レシーバーやエキパンの異常、配管の流路制限などがあります。

さらに、エバポレーターの凍結や風量不足、フィルターの詰まり、ブロワ・ダンパ・温度センサー・制御系の異常も確認します。


冷媒が正常に流れているか、空気が十分に通っているかを、あわせて確認します。

高圧・低圧、冷媒量、配管温度、吹出口温度、風量、エバポレーター温度、ブロワ、フィルター、ダンパなどを総合して判断します。

まとめ|冷媒と空気が熱交換する重要な部品

  • エバポレーターは、冷媒の蒸発によって空気から熱を吸収します。
  • 十分な冷房能力には、冷媒の状態と風量の両方が重要です。
  • フィルターの詰まりやブロワ系統の異常でも、冷えや風量が低下します。
  • 結露によって除湿し、水分はドレンから車外へ排出されます。
  • 凍結を繰り返す場合は、温度検出・風量・冷媒状態・制御系を確認します。
  • 冷媒漏れは、エバポレーター以外の部品も含めて調べます。
  • 臭いがする場合も、汚れや排水状態を確認してから対処方法を判断します。
  • 冷え不良という症状だけで、交換する部品を決めないことが重要です。
車種ごとの構造・指定値について

本記事は代表的なカーエアコンシステムを中心に解説しています。エバポレーターの構造、凍結防止方式、温度制御、EPRの有無、冷媒、適正圧力・温度などは、車種・年式・メーカー・システム構成によって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書およびメーカー指定値を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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エキスパンションバルブとは?エキパン不良の症状・エバポレーターの仕組みと交換時の注意点

カーエアコンのエキスパンションバルブをイメージした画像。減圧・流量調整の役割と交換時の確認ポイントを紹介。

カーエアコン技術編・第5話

コンデンサーやレシーバーを通過した高圧の液冷媒が、次に向かうのがエキスパンションバルブ(エキパン)です。


エキスパンションバルブは、高圧の液冷媒を減圧し、エバポレーターへ送る冷媒量を調整する部品です。

詰まり・固着・開きすぎなどが起きると、冷え不良や圧力異常、液戻りなどにつながる場合があります。

この記事では、エキパンの役割と不良時の症状、エバポレーターの働き、過熱度や凍結の仕組み、コンプレッサー交換時にエキパンを同時交換する理由を解説します。

エキスパンションバルブの役割

コンデンサーで放熱・凝縮された冷媒は、高圧の液冷媒としてエキスパンションバルブへ送られます。

エキパンは冷媒を狭い流路に通して減圧し、低圧・低温の状態でエバポレーターへ供給します。

冷媒の状態変化

  1. 高圧の液冷媒がエキパンへ入る
  2. 狭い流路を通って減圧される
  3. 一部の液冷媒が気化する
  4. 低圧・低温の液体とガスが混在した状態で、エバポレーターへ入る

減圧すると、なぜ低温になる?

冷媒が高圧側から低圧側へ減圧されると、一部の液冷媒が気化し、低温の液体とガスが混ざった状態になります。

圧力が低くなることで、エバポレーター内では冷媒が低い温度で蒸発できるようになります。

冷房負荷に応じて冷媒量を調整する

一般的な感温式エキスパンションバルブ(TXV)は、エバポレーター出口側の冷媒状態に応じて開度を変え、送り込む冷媒量を調整します。

冷房負荷に対して冷媒が少なすぎると、エバポレーター全体を十分に使えず、冷房能力が低下します。反対に多すぎると、冷媒が蒸発しきれず、液戻りのリスクが高まります。

過熱度とは?液戻りとどう関係する?

過熱度は、ガス冷媒の温度が、その圧力に対応する蒸発温度(飽和温度)より何度高いかを表します。


過熱度 = ガス冷媒の温度 − その圧力に対応する飽和温度

エバポレーターでは、液冷媒が熱を吸収して蒸発します。蒸発し終えたガス冷媒がさらに熱を受けると、過熱度が生じます。

冷媒の供給が過剰になると、十分に蒸発しきれず、過熱度が不足する場合があります。その状態では、液冷媒がコンプレッサー側へ戻る可能性に注意が必要です。

適正な過熱度や測定方法は車種・システム・運転条件によって異なります。固定の数値だけで判断せず、対象車両の整備要領書を確認します。

エキパン不良で起こる症状


エキスパンションバルブの役割、詰まり・閉じすぎ・開きすぎによる影響、交換時の確認事項をまとめた図
図1:エキスパンションバルブ不良による影響の概念図。圧力や症状の出方は、車両や運転条件によって異なります。図中の同時交換条件は、太田美品通商の条件です。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

① 詰まり・閉じすぎ

流路が詰まったり、必要以上に閉じた状態になったりすると、エバポレーターへ供給される冷媒量が不足します。

  • 低圧側の圧力が低下しやすくなる
  • エバポレーター全体を十分に使えなくなる
  • 吹出口温度が下がらず、冷房能力が低下する
  • 条件によっては高圧側の圧力が上昇する場合がある

ただし、詰まると必ず高圧が上がるわけではありません。冷媒が上流側に滞留する条件では高圧が上昇することがありますが、詰まりが強く、循環量が極端に減った場合などは、高圧側も十分に上がらないことがあります。

圧力の出方だけで、エキパン不良と断定しないことが重要です。

高圧・低圧、冷媒量、配管温度、霜付き、エバポレーターの風量などを組み合わせて判断します。

② 開きすぎ・開いたままの固着・制御不良

エキパンが必要以上に開くと、エバポレーターへ冷媒が過剰に供給される場合があります。

  • 冷媒が十分に蒸発しきれなくなる
  • 過熱度が不足する
  • 低圧側の圧力が高めになる場合がある
  • 冷えが弱くなったり、不安定になったりする
  • 液冷媒がコンプレッサー側へ戻るリスクが高まる

コンプレッサーは、基本的にガス冷媒を吸入する前提で作動します。液冷媒が大量に戻ると、液圧縮や潤滑状態の悪化により、内部へ大きな負担を与える可能性があります。

なお、エバポレーターの凍結は、開度だけで判断できません。蒸発圧力、風量、温度センサー、凍結防止制御なども確認します。

低圧と配管温度から、開きすぎ・詰まりを確認する

低圧が高く、低圧ホースやサービスバルブ付近が異常に冷たい場合は、エキパンの開きすぎを確認します。外付け感温筒を使う構造では、感温筒と配管の接触状態も点検対象です。通常の結露と、異常な冷え・霜付きを区別して記録します。

低圧が低く、エキパン付近に霜が付く場合は、詰まりや凍結を確認します。配管温度、冷媒量、エバポレーター側の風量と合わせて、冷媒の供給が不足している箇所を調べます。

点検時は「霜があった」だけでなく、エキパン本体・入口側・出口側のどこに出たかを記録してください。確認できた場所が分かる写真と、同時に測った高圧・低圧があると、相談時に状態を伝えやすくなります。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

エバポレーターは車室内の熱を吸収する

エバポレーターは、車室内側の空調ユニット内部に設置される熱交換器です。

エキパンを通過した低圧・低温の冷媒が入り、空気から熱を吸収しながら蒸発します。ブロワによって送られた空気は、エバポレーターを通る際に冷やされ、車室内へ送られます。


エバポレーターでは、冷媒が蒸発するときに空気の熱を吸収しています。

冷房と同時に除湿も行う

湿った空気が冷たいエバポレーターを通ると、条件に応じて空気中の水分がフィン表面で結露します。この水がドレンホースから車外へ排出されることで、除湿も行われます。

エアコン作動中や作動後に車両の下へ落ちる水は、正常な結露水である場合があります。

エバポレーターが凍る「フロスト」

エバポレーターの表面温度が下がりすぎると、水分が霜や氷になって付着します。この状態をフロストと呼びます。

フィンが氷で覆われると空気の通り道が狭くなり、吹出口の風量や冷房能力が低下します。

凍結時に見られる症状の例

  1. 最初はよく冷える
  2. エバポレーターが徐々に凍結する
  3. 吹出口の風量が弱くなり、冷えにくくなる
  4. エアコンを止めて氷が溶けると、再び冷える

こうした症状では、エキパンだけでなく、エバポレーター温度センサー、ブロワ風量、キャビンフィルター、冷媒量、制御系も確認します。

凍結を防止する仕組み

車種やシステムによって、次のような装置や制御を用いて、エバポレーター温度や蒸発圧力が下がりすぎないようにしています。

  • エバポレーター温度センサー/サーミスタ
  • マグネットクラッチのON・OFF制御
  • 可変容量コンプレッサーの制御
  • EPR(エバポレーター圧力調整弁)

すべての車両に同じ装置が備わっているわけではありません。対象車両の構成を確認します。

固定オリフィスチューブを使う方式もある

すべてのカーエアコンが、開度を変えるエキスパンションバルブを使用しているわけではありません。

固定オリフィスチューブは、固定された小孔で冷媒を減圧します。一般的なTXVのように開度を変えて流量を調整せず、アキュムレーターやコンプレッサー制御などと組み合わせて冷凍サイクルを構成します。

コンプレッサー交換時にエキパンも交換する理由


太田美品通商では、A/Cコンプレッサー交換時に、レシーバーとエキスパンションバルブの同時交換を最低限必要としています。

① 細い流路に異物が入り込む可能性がある

コンプレッサーが焼き付いたり内部破損したりすると、金属粉、摩耗粉、劣化オイル、スラッジなどが冷媒回路へ流出する場合があります。

エキパン内部には、流量を調整する狭い流路やニードル機構があります。異物が入り込むと、詰まり・固着・作動不良の原因になる可能性があります。

② 細かな内部機構を十分に洗浄することが難しい

冷媒回路をフラッシングする場合でも、エキパンを通したまま回路全体を洗浄するのではなく、取り外しや交換を含め、メーカー指定の手順に従います。

エキパンの細かな内部機構に異物が残っていないことを、洗浄だけで確実に確認するのは困難です。

③ エキパンの異常が、元の故障原因だった可能性がある

コンプレッサー故障によってエキパンが汚染される場合だけでなく、エキパンの異常が先に発生していた可能性も考えます。

詰まり・閉じすぎの場合

冷媒循環量が減り、冷媒やオイルの戻り、コンプレッサーの潤滑・冷却条件が悪化する可能性があります。

開きすぎ・制御不良の場合

冷媒の過剰供給によって過熱度が不足し、液戻りによるコンプレッサーへの負担が増す可能性があります。

新しいコンプレッサーを取り付ける際には、異物や作動不良などの原因を残さないことが重要です。

同時交換とあわせて、冷凍サイクル全体を確認する

レシーバーとエキパンを交換すれば、すべての原因が解消するわけではありません。コンプレッサー故障時には、次の項目も確認します。

  • コンデンサー内部の汚染と放熱状態
  • 冷却ファンの作動
  • 異常高圧の有無
  • 冷媒の過充填・不足
  • コンプレッサーオイルの量・種類
  • 配管内部の詰まり
  • 水分や空気の混入
  • エバポレーター側の状態

壊れた部品を交換するだけでなく、なぜ壊れたのかを確認することが再故障防止につながります。

冷え不良だけでエキパン不良と決めつけない

冷え不良は、冷媒不足・過充填、コンプレッサーの能力不足、コンデンサーの放熱不足、冷却ファン不良、レシーバーの詰まり、配管の流路制限などでも起こります。

また、エバポレーターの凍結、ブロワ風量不足、各種センサーや制御の異常も確認が必要です。


圧力値や症状を、一つだけ見て故障部品を断定しないことが重要です。

高圧・低圧、冷媒量、配管温度、霜付き、吹出口温度、風量などを総合して診断します。

まとめ|エキパンは減圧と冷媒流量の調整を担う

  • エキパンは高圧の液冷媒を減圧し、エバポレーターへ送る量を調整します。
  • 詰まりでは冷媒供給が不足し、低圧側が低下しやすくなります。
  • 詰まり時の高圧側の挙動は、循環量や運転条件などで変わります。
  • 開きすぎでは、過熱度不足や液戻りに注意が必要です。
  • エバポレーターでは、冷媒の蒸発による吸熱と、結露による除湿が行われます。
  • 凍結による風量低下では、温度センサー・風量・制御系なども確認します。
  • 当社では、コンプレッサー交換時にレシーバーとエキパンの同時交換を最低限必要としています。
  • 再故障防止には、冷凍サイクル全体から原因を確認することが重要です。
次回のカーエアコン技術編

第6話:カーエアコンのエバポレーターとは?
空気を冷やす仕組みと除湿、凍結による風量低下、点検時の確認ポイントを解説します。

車種ごとの構造・指定値について

本記事は、代表的な感温式エキスパンションバルブを使用するカーエアコンを中心に解説しています。バルブ構造、オリフィスチューブ方式、圧力挙動、過熱度、凍結防止制御などは、車種・年式・冷媒・システム構成・運転条件によって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書およびメーカー指定値を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

適合確認フォーム LINEで適合確認 メールで相談