カーエアコンの高圧が高い原因|コンデンサー・電動ファン・冷媒量の確認ポイント

カーエアコンの高圧が高いときに確認するコンデンサー・電動ファン・冷媒量

カーエアコン技術編・第10話

カーエアコンの点検で高圧側の圧力が高いとき、確認するのはコンプレッサーの良否ではなく、まず冷媒を冷やして熱を逃がす側の状態です。

高圧が高くなる主な要因は、コンプレッサーが送り出した冷媒をコンデンサーで十分に放熱できているか、電動ファンが適切に作動しているか、冷媒量が車両指定量に合っているかといった、冷凍サイクルの放熱側・充填状態にあります。

高圧が高いときは、まず放熱側を確認します。

高圧異常は、コンデンサーで熱を逃がせない、電動ファンが十分に作動しない、冷媒量が適正でないなど、冷凍サイクルの放熱側・充填状態を確認する症状です。

この記事では、高圧が高いときに確認する順序を、コンデンサー・電動ファン・冷媒量を中心に解説します。圧力計の数値だけで、交換する部品を決めるための記事ではありません。

高圧側とは?コンプレッサー吐出側からエキパン入口まで

カーエアコンでは、コンプレッサーが低圧側から吸い込んだ冷媒を圧縮し、高温・高圧の状態で送り出します。一般的なエキスパンションバルブ方式では、コンデンサーとレシーバーを通り、エキパンの入口までが高圧側です。

図解|高圧が高いときに優先して確認する3つ

コンプレッサー
↓
① コンデンサー
放熱を確認
↓
レシーバータンク
・リキッドパイプ
↓
エキスパンション
バルブ
① コンデンサーの放熱
汚れ・フィンの状態・通風を確認します。
② 電動ファンの作動
必要な条件で十分に風を送れているか確認します。
③ 冷媒量
回収後、車両指定量を重量管理して確認します。

※高圧の数値だけで、交換する部品は決めません。

コンデンサーは、送り出された冷媒の熱を車外へ放出し、冷媒を液化させる部品です。ここで十分に熱を逃がせなければ、冷媒は凝縮・液化しにくくなり、高圧側の圧力が上がりやすくなります。

つまり高圧が高いときは、まずコンデンサーで放熱できているかを確認します。

冷凍サイクル全体の流れは、カーエアコンの仕組みと冷凍サイクルの記事で解説しています。

高圧が高いときに確認する主な原因

1.コンデンサーの放熱不足

コンデンサー表面の汚れ、フィンの腐食・変形、コンデンサーとラジエーターの間にたまったごみなどは、通風を妨げます。熱を逃がせなければ冷媒は十分に凝縮・液化しにくくなり、高圧側の圧力が上がります。

放熱不足
↓
冷媒が十分に凝縮・液化しにくい
↓
高圧側の圧力が上がりやすくなる

2.電動ファン・冷却ファンの作動不良

停車中や低速走行中は、コンデンサーへ当たる走行風が少なくなります。このとき放熱を支えるのが、電動ファンや冷却ファンです。

ファンが作動しない、回転が弱い、必要なタイミングで作動しない場合は、コンデンサーの放熱不足につながります。「走行中は比較的冷えるが、渋滞や信号待ちでは冷えが弱い」場合は、ファンの作動とコンデンサー周辺の通風を確認します。ただし、この症状だけでファン不良と断定することはできません。

3.冷媒を入れすぎている(過充填)

冷媒の充填量は車両ごとに指定されています。残量が分からないまま冷媒を追加し、指定量を超えると、コンデンサーでの放熱・凝縮に影響し、高圧側の圧力が上がる原因になります。

冷媒量は圧力計だけで決めません。

冷媒を適切に回収し、必要な真空引きを行ったうえで、対象車両の指定量を重量管理して充填します。

圧力の測定結果だけで「過充填」と断定することもできません。外気温、測定条件、ファン作動、制御状態などを確認し、車両の整備要領に従って判断します。冷媒漏れ時の補充については、カーエアコンのガス漏れに補充だけはNG?の記事もご確認ください。

4.空気などの非凝縮ガスが混入している

冷媒回路に混入した空気は、通常の作動条件では冷媒のように凝縮しません。高圧上昇の原因候補になるため、回路を開けた修理や充填の履歴、真空引きの実施状況も確認します。高圧が高いだけで空気混入とは断定せず、放熱状態や充填量とあわせて点検します。

空気混入が疑われる場合は、整備工場で冷媒を適切に回収し、メーカー指定の手順で真空引き・規定量充填を行います。冷媒を大気へ放出したり、圧力だけを見て抜き足ししたりしないでください。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表(原因候補の参考。実車の数値・手順は車両メーカーの整備要領を優先します)。

「詰まり」と高圧異常を混同しない

レシーバータンク、リキッドパイプ、エキスパンションバルブ、配管などで冷媒の流れが妨げられると、詰まりの位置や程度によって圧力の出方が変わります。

「詰まり=必ず高圧が高い」ではありません。

たとえばフィルタードライヤーの制限では、高圧・低圧とも低く出たり、制限部の後で霜付きが出たりすることがあります。流路制限は、圧力・配管温度・霜付き・冷え方を総合して確認します。

レシーバータンクやエキスパンションバルブの役割は、レシーバータンクの記事、エキスパンションバルブの記事で解説しています。

高圧異常でコンプレッサーが止まるのは、保護制御の場合があります

車両によっては圧力スイッチや圧力センサーで異常を検出し、コンプレッサーの作動を停止・制限します。停止したことだけで本体故障とは判断せず、停止前の圧力、ファン作動、センサー情報を確認します。作動させるために保護回路を短絡・無効化しないでください。作動条件やしきい値は車種ごとに異なります。

高圧・低圧が両方高い場合の見分け方

高圧だけでなく低圧も高いときは、過充填と放熱不足の両方を点検します。追加充填の履歴があるなら規定量との照合、コンデンサーに汚れがあるなら通風状態、ファンなら必要な条件で十分に風を送れているかを確認します。

「両方高い」という同じ測定結果でも、必要な対応は冷媒量の是正、清掃、ファンやその電気系統の修理などに分かれます。冷媒量と放熱状態をそれぞれ確認することが、交換部品を選ぶ前の切り分けになります。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

高圧が高いときの確認順序

1.車両の整備要領にある条件で高圧・低圧を確認する
外気温、回転数、冷房設定、冷却ファンの作動などを確認して測定します。

2.コンデンサー周辺の放熱状態を確認する
表面の汚れ、フィンの損傷、ラジエーターとの間の詰まり、通風状態を確認します。

3.電動ファン・冷却ファンの作動を確認する
作動の有無だけでなく、必要な状態で十分に回転しているかを確認します。

4.冷媒を回収し、指定量で充填されているか確認する
冷媒量は感覚で補充せず、対象車両の指定量を重量管理します。回路開放・充填の履歴を確認し、空気混入が疑われる場合は適切な回収・真空引き・再充填につなげます。

5.必要に応じて配管温度・霜付き・流路の状態を確認する
流路制限が疑われる場合は、制限位置を含めて冷凍サイクル全体を確認します。

高圧・低圧の基本的な見方は、カーエアコンの高圧・低圧の記事も参考にしてください。

まとめ|高圧が高いときは、まず放熱側と冷媒量を確認する

今回のポイント

・高圧が高いときは、まずコンデンサーの放熱状態、電動ファン・冷却ファンの作動、冷媒量を確認する

・冷媒量は、回収・真空引き後に車両指定量を重量管理して充填する

・空気などの非凝縮ガスの混入と、圧力保護制御も確認する

・流路制限は位置によって圧力の出方が異なり、「詰まり=高圧が高い」ではない

・圧力の数値だけで、交換する部品を決めない

適合確認や交換前の確認でお困りの場合は、品番・車両情報・現品写真をご用意のうえお問い合わせください。

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ご注意
本記事はカーエアコンの高圧側の圧力が高い場合に確認する代表的な項目を解説したものです。圧力値、点検条件、冷媒種類、指定充填量、制御内容は車種により異なります。実車の整備では対象車両および部品メーカーの整備要領を確認してください。

カーエアコンのコンデンサーとは?冷却方式・サブクール構造と高圧異常の確認ポイント

カーエアコンのコンデンサーをイメージした画像。レシーバー・サブクール構造と高圧異常の確認ポイントを紹介。

カーエアコン技術編・第3話

コンプレッサーから吐き出された高温・高圧のガス冷媒が、次に向かうのがコンデンサーです。

コンデンサーは、冷媒の熱を外気へ放出し、ガス冷媒を液冷媒へ変える熱交換器です。

冷え不良や高圧異常では、コンデンサーの放熱・通風状態も確認します。

コンプレッサーが正常でも、コンデンサーで十分に放熱できなければ、冷凍サイクルに影響します。

この記事では、コンデンサーの役割、前置き・サイド配置と冷却ファンの違い、レシーバーとサブクール方式の仕組み、故障診断で確認したいポイントを解説します。

コンデンサーの役割と「凝縮」の仕組み

エバポレーターで車室内の熱を吸収した冷媒は、低圧のガス状態でコンプレッサーへ戻ります。そこで圧縮され、高温・高圧のガス冷媒となってコンデンサーへ送られます。

コンデンサーでは、冷媒が外気へ熱を放出しながら、気体から液体へ変わります。この状態変化を「凝縮」と呼びます。

コンデンサー内の冷媒の変化

  1. 高温・高圧のガス冷媒が流入する
  2. 外気へ放熱し、凝縮が始まる
  3. 気体と液体が混在する状態になる
  4. さらに放熱し、高圧の液冷媒になる

コンデンサーの内部を流れる冷媒は、入口から出口まで同じ状態ではありません。十分に凝縮させるためには、コンデンサーに必要な量の空気を通し、熱を外へ逃がすことが重要です。

配置によって異なるコンデンサーの冷却方式

コンデンサーの取り付け位置は車両によって異なります。車両前面に配置するもののほか、トラックなどでは車体側面やキャブ周辺に配置する構成もあります。


前置き・サイド配置のコンデンサーと、走行風・共用ファン・専用ファンによる冷却を比較した図
図1:コンデンサーの配置と冷却方式の代表例。必要な風量が確保されているかを確認することが重要です。青い矢印は空気の流れる向きを表し、空気が冷える意味ではありません。コンデンサーでは冷媒が熱を放出し、通過する空気がその熱を受け取ります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

前置きコンデンサー

多くの乗用車では、コンデンサーは車両前方の冷却モジュール内に配置されています。走行中は前方から入る走行風を利用して放熱します。

停車中や低速走行時は走行風が少なくなるため、冷却ファンによる強制通風が重要になります。

専用ファンがなくても、共用ファンで冷却する構成がある

コンデンサー専用の電動ファンが見当たらなくても、ファンによる冷却を行っていないとは限りません。

車種によっては、ラジエーターファンやエンジン冷却ファンを利用して、ラジエーターとコンデンサーの両方へ通風します。

点検では、専用ファンの有無に加えて、コンデンサーに必要な風量が確保されているかを確認します。

サイドコンデンサー

トラックや一部の商用車では、車体側面やキャブ周辺などにコンデンサーを配置します。こうしたものをサイドコンデンサーと呼びます。

正面からの走行風を利用しにくい構成もあるため、専用電動ファンによる強制通風が特に重要になる車両があります。

ファンが回っていても、風量が十分とは限らない

サイドコンデンサー車で冷え不良や高圧異常が発生した場合は、コンデンサー本体とあわせて、次の項目を確認します。

  • ファンモーターの作動、回転数、回転方向
  • ファンブレードの損傷
  • ヒューズ・リレー・配線の状態
  • 電源電圧
  • ファン制御の状態
  • 圧力センサー/スイッチなどの入力
  • 通風経路の状態と実際の風量

回転数不足や通風経路の異常によって、ファンが回っていても必要な放熱能力を確保できていない場合があります。

走ると冷えるのに、停車すると冷えにくい場合

走行中は冷えるのに、信号待ちやアイドリングでは冷えにくい場合、停車時に必要な強制通風を確保できていない可能性があります。

冷却ファン・ファン制御・コンデンサーの目詰まり・周辺の通風状態を確認します。ただし、この症状だけでファン不良と断定せず、冷媒量やサイクル全体の状態も含めて診断します。

「板コンデンサー」とマルチフロー構造

整備現場では、サイドコンデンサーと区別する意味などで、前面に配置された平板状のコンデンサーを「板コンデンサー」と呼ぶことがあります。

「板コンデンサー」は、統一された正式な構造分類名ではありません。

実際の構造を確認するときは、冷媒通路の構造を示す「マルチフロー」や、過冷却部を持つ「サブクール」といった特徴を区別して確認します。

マルチフローコンデンサーは、多数の細いチューブへ冷媒を分けて流す構造です。細い冷媒通路と多数のフィンによって熱交換面積を確保し、コンパクトなサイズで放熱できるよう設計されています。

一方、冷媒通路が細いため、コンプレッサーの内部破損などで金属粉や異物が流入した場合は、内部汚染に注意が必要です。

外部の目詰まりと、内部の詰まり・汚染

外部の目詰まり:空気の通り道を確認する

虫、泥、ホコリ、枯れ葉、綿ぼこり、油分を含んだ汚れ、フィン潰れなどによって、通風が悪くなることがあります。空気が十分に通らなければ、放熱能力が低下します。

コンデンサーとラジエーターが近接している車両では、両者の間に汚れが溜まることもあります。正面から見える表面だけでなく、通風経路全体を確認します。

内部の汚染:金属粉や摩耗粉に注意する

コンプレッサーが焼き付いたり内部破損したりすると、金属粉や摩耗粉が冷媒回路へ流出することがあります。これらがコンデンサーの細い通路へ入り込むと、流路制限や詰まりの原因になる可能性があります。

構造によっては内部を十分に洗浄することが難しいため、汚染の程度やメーカーの指示により、コンデンサー交換が必要になる場合があります。

レシーバータンク/レシーバードライヤーの役割

従来型のレシーバーサイクルでは、コンデンサーの後にレシーバータンク(レシーバードライヤー)が配置されます。

主な役割

  1. 液冷媒を一時的に保持する
  2. 気体と液体を分離する
  3. エキスパンションバルブへ液冷媒を安定して供給する
  4. ストレーナ/フィルターで異物を取り除く
  5. 乾燥剤で水分を吸着する

水分を取り除く理由

冷媒回路への水分混入は、内部腐食、オイルや冷媒の劣化反応、膨張部付近での凍結、流路制限などの原因になり得ます。そのため、レシーバードライヤーには乾燥剤(デシカント)が使用されています。

配管を外したまま長時間放置すると、外気中の湿気が入り込みます。部品交換時は、配管や部品の開口部をできるだけ速やかに塞ぐことが重要です。

レシーバーとアキュムレーターの違い

見た目が似ていても、配置と役割が異なります。

部品 配置 主な役割
レシーバードライヤー 高圧側 液冷媒の保持、気液分離、乾燥、ろ過
アキュムレーター 低圧側 気液分離により、液冷媒がコンプレッサーへ大量に戻るのを防ぐ

サブクールコンデンサーとモジュレータ

コンデンサーの後に独立したレシーバーを配置する方式のほかに、レシーバー/ドライヤー機能と過冷却部をコンデンサー側へ組み込んだ、サブクールコンデンサーがあります。


別体レシーバーを使用する方式と、モジュレータ・過冷却部を備えるサブクールコンデンサー方式の比較図
図2:従来型とサブクールコンデンサー方式の冷媒の流れと各部の役割を比較した概念図。実際の構成は車種・年式・メーカーによって異なります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

モジュレータの役割

サブクールコンデンサーには、側面などにモジュレータと呼ばれる気液分離部を一体化した構造があります。

モジュレータは、従来型のレシーバードライヤーに近い役割を持ち、気液分離、冷媒保持、異物除去、水分吸着を行います。

乾燥剤やフィルターを交換できるタイプがある一方、内部だけを交換できず、コンデンサーASSYで交換する構造もあります。対象製品の構造と整備手順を確認してください。

サブクール=過冷却とは?

過冷却とは、凝縮した液冷媒を、その圧力に対応する凝縮温度よりも低い温度まで冷却することです。

代表的な冷媒の流れ

  1. 凝縮部でガス冷媒を液化する
  2. モジュレータで気体と液体を分離する
  3. 過冷却部で液冷媒をさらに冷却する
  4. エキスパンションバルブへ送る

液冷媒を過冷却することで、エキスパンションバルブへ安定した液冷媒を供給しやすくなります。

サブクール度は、車種や条件に合わせて判断する

専門的な診断では、サブクール度(過冷却度)を確認することがあります。

サブクール度 = 凝縮飽和温度 − コンデンサー出口の液冷媒温度

適正値は、冷媒、車種、システム構造、運転条件によって異なります。すべての車両を同じ温度差で正常・異常と判断することはできません。

サブクール度や気泡だけで、冷媒を追加しない

過冷却度は大きければ大きいほどよい、というものではありません。サブクール方式では、サイトグラスの気泡が消える点と適正充填量が一致しない場合があります。気泡が消えたことだけで充填を終了したり、過冷却度を増やす目的で追加したりせず、車両指定量を重量管理します。

高圧異常は、放熱不足以外でも起こる

高圧側の圧力は、コンプレッサーだけで決まるものではありません。コンデンサーで十分に放熱できなければ凝縮状態に影響し、高圧側の圧力上昇につながります。

放熱不足による圧力上昇の例

冷却ファン不良 → 風量不足 → 放熱不足 → 凝縮状態の悪化 → 高圧上昇

冷媒の過充填

冷媒は多いほど冷えるものではありません。過充填は、高圧側の圧力が異常に上昇する原因になります。

冷えないからといって感覚やサイトグラスだけで追加せず、車両メーカー指定の充填量を基準に管理することが重要です。

空気などの非凝縮ガスの混入

冷媒回路に空気などが混入すると、通常の作動条件では冷媒のように凝縮せず、高圧側の圧力上昇などの原因になります。

部品交換後は、適切な真空引きで空気や水分を取り除いたうえで、指定量の冷媒を充填することが重要です。

高圧異常で確認したい項目

  • 冷媒の過充填
  • コンデンサーの放熱不足
  • 冷却ファンの不良や風量不足
  • フィンの目詰まりや通風経路の異常
  • コンデンサー内部の汚染・流路制限
  • 空気などの非凝縮ガスの混入
  • 高圧側配管の流路制限
  • 外気温や運転条件
高圧が高いという理由だけで、コンプレッサー不良と断定しないことが重要です。

圧力・温度・風量を組み合わせて診断する

高圧・低圧ゲージは重要な診断材料ですが、圧力は冷凍サイクルの状態を示す情報の一つです。次の項目を組み合わせて判断します。

  • 高圧・低圧の測定値
  • 外気温と運転条件
  • 冷媒充填量
  • コンデンサー入口・出口の温度
  • 冷却ファンの作動と実際の通風状態
  • 配管温度
  • エバポレーター側の状態

サブクールシステムでは、必要に応じて過冷却状態も確認します。測定方法と判定は、対象車両の整備要領書に従ってください。

高圧・低圧が両方高いときに確認すること

高圧・低圧がともに高い場合、DENSOの診断表では冷媒の過充填やコンデンサーの冷却不足が挙げられています。まず充填量の記録を確認し、コンデンサーのフィンに汚れや目詰まりがないか、冷却ファンが正常に作動して風が通っているかを確認します。

冷媒量の問題と放熱の問題では、必要な作業が異なります。原因に応じた処置をしたあと、整備要領の測定条件で高圧・低圧と冷え具合を再確認します。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

コンプレッサー交換時にもコンデンサーを確認する理由

高圧側の圧力が異常に上昇すると、コンプレッサーの駆動負荷が大きくなり、本体やマグネットクラッチに過大な負担を与える可能性があります。

故障につながる流れの例

コンデンサーの放熱不足 → 高圧異常 → コンプレッサーへの過大負荷 → コンプレッサー/クラッチの損傷

このような場合、コンプレッサーだけを交換しても、放熱不足という原因が残ってしまいます。

また、コンプレッサー内部の破損によって金属粉が流出していれば、コンデンサー内部も汚染されている可能性があります。

部品交換とあわせて、故障の原因を確認することが重要です。

コンデンサーの取り付け位置、風の当たり方、実際の放熱状態まで含めて、冷凍サイクル全体を確認します。

まとめ|コンデンサーは放熱と通風が重要

  • コンデンサーは放熱により、高温・高圧のガス冷媒を液冷媒へ変えます。
  • 前置き・サイド配置やファン構成によって、冷却の方法が異なります。
  • 専用ファンの有無や回転だけでなく、実際の風量と通風経路を確認します。
  • 「板コンデンサー」は現場で使われる呼称で、正式な構造分類名ではありません。
  • 外部の目詰まりと、内部の汚染・流路制限を分けて確認します。
  • レシーバードライヤーは、冷媒保持・気液分離・乾燥・ろ過を担います。
  • サブクール方式では、モジュレータや過冷却部を組み込む構成があります。
  • 冷媒過充填や非凝縮ガスの混入も、高圧異常の原因になります。
  • 圧力だけで部品不良を断定せず、温度・風量・充填量などをあわせて診断します。

冷え不良や高圧異常では、コンデンサーが十分に熱を外へ逃がせているかを確認することが重要です。故障部品とあわせて原因を調べることが、修理後の再発を防ぐうえでも大切になります。

次回のカーエアコン技術編

第4話:レシーバータンクの役割と同時交換の理由
液冷媒の保持・気液分離・ろ過・乾燥と、交換時の確認事項を解説します。

車種ごとの構造・指定値について

本記事は、一般的・代表的なカーエアコンの冷凍サイクルを中心に解説しています。コンデンサーの配置、ファン構成、レシーバー/モジュレータ構造、冷媒、適正圧力、充填量、サブクール度などは、車種・年式・メーカー・システムによって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書、メーカー指定値、冷媒・オイルの指定を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンの仕組みとは?冷凍サイクルと5つの主要部品の役割

カーエアコンが冷える仕組みを紹介するアイキャッチ。吹き出し口から車内へ広がる冷風のイメージ

カーエアコン技術編・第1話

車のエアコンをONにすると、吹き出し口から冷たい風が出てきます。では、カーエアコンはどのように空気を冷やしているのでしょうか。

カーエアコンは、車室内の熱を冷媒に吸収させ、その熱を車外へ放出することで冷房を行います。

この仕組みを支える冷媒の循環と状態変化を「冷凍サイクル」といいます。

今回は、コンプレッサー、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターの役割と、冷媒が循環する仕組みを解説します。

基本例として、レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な構成を取り上げます。実際の構造や制御方法は、車種やシステムによって異なります。

冷媒は5つの主要部品を通って循環する

代表的なレシーバーサイクルでは、冷媒は次の順番で流れ、再びコンプレッサーへ戻ります。

  1. コンプレッサー:ガス冷媒を圧縮する
  2. コンデンサー:熱を車外へ放出し、冷媒を液化させる
  3. レシーバータンク:液冷媒を一時的に蓄える
  4. エキスパンションバルブ:冷媒を減圧し、流量を調整する
  5. エバポレーター:空気から熱を吸収し、冷媒を蒸発させる

エバポレーターを出たガス冷媒は、再びコンプレッサーに吸い込まれます。

コンプレッサー、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターを循環する冷媒の流れと状態変化
レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な冷凍サイクル。冷媒が圧縮・凝縮・減圧・蒸発を繰り返し、車室内の熱を車外へ運びます。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

冷媒は、圧力・温度・状態を変えながら熱を運ぶ

冷媒は、同じ状態のまま循環しているわけではありません。サイクル内で圧力や温度が変わり、気体・液体・両方が混在した状態へと変化します。

工程 主な部品 冷媒の変化
圧縮 コンプレッサー 低圧のガスから、高温・高圧のガスになる
凝縮 コンデンサー 熱を放出し、ガスから高圧の液体へ変化する
減圧 エキスパンションバルブ 高圧の液体から、低温・低圧の液とガスが混在した状態になる
蒸発 エバポレーター 空気から熱を吸収して液体が蒸発し、低圧のガスになる

この「圧縮・凝縮・減圧・蒸発」を繰り返すことで、車室内の熱を車外へ運んでいます。

① コンプレッサー|ガス冷媒を圧縮する

コンプレッサーは、エバポレーターから戻った低圧のガス冷媒を吸い込み、圧縮して高温・高圧のガス冷媒にします。

圧縮された冷媒は、次のコンデンサーへ送り出されます。

コンプレッサーの役割は、冷媒を圧縮し、サイクル内を循環させることです。

コンプレッサーが直接、冷たい空気を作っているわけではありません。

コンプレッサーには、斜板式、スルーベーン式、スクロール式など、さまざまな構造があります。コンプレッサーの種類や容量制御方式、交換時の注意点は、カーエアコンのコンプレッサー解説もご覧ください。

② コンデンサー|冷媒の熱を車外へ放出する

コンデンサーには、コンプレッサーから高温・高圧のガス冷媒が入ります。

走行風や冷却ファンの風によって熱が車外へ放出され、冷媒はガスから液体へ変化していきます。この変化を「凝縮」といいます。

コンデンサーは、冷媒が運んできた熱を車外へ放出する熱交換器です。

放熱不足や冷却ファンの不具合は、冷媒圧力や冷房性能に影響します。冷却方式と高圧異常の確認ポイントは、コンデンサーの解説をご覧ください。

③ レシーバータンク|液冷媒を一時的に蓄える

コンデンサーで液化した冷媒は、レシーバータンクへ送られます。

レシーバータンクは、冷房負荷に応じて冷媒を供給できるよう、液冷媒を一時的に蓄えます。内部にストレーナや乾燥剤を備え、異物や水分を取り除く構造のものもあります。

ストレーナ
冷媒回路内の異物などを取り除きます。

乾燥剤
冷媒回路内の水分を吸着します。

すべての車両に、独立したレシーバータンクがあるわけではありません。車種によっては、コンデンサーと気液分離器(モジュレータ)を組み合わせたサブクールコンデンサー方式などが採用されています。構造や交換時の確認点は、レシーバータンクの役割と同時交換についてもご覧ください。

④ エキスパンションバルブ|冷媒を減圧し、流量を調整する

レシーバータンクを通過した高圧の液冷媒は、エキスパンションバルブへ送られます。

冷媒がバルブの絞りを通過すると圧力が下がり、低温・低圧の液とガスが混在した状態となってエバポレーターへ入ります。

また、エキスパンションバルブは、エバポレーターの状態に応じて冷媒の流量を調整します。構造や不具合時の確認点は、エキスパンションバルブの解説にまとめています。

主な役割は2つです。
  • 高圧の液冷媒を減圧する
  • エバポレーターへ送る冷媒量を調整する

⑤ エバポレーター|空気の熱を冷媒に吸収させる

エキスパンションバルブを通過した低温・低圧の冷媒は、エバポレーターへ入ります。

ブロワによって送られた空気がエバポレーターを通過すると、その空気の熱が冷媒に吸収されます。熱を奪われた空気は温度が下がり、車室内へ送られます。

一方、冷媒は熱を吸収して蒸発し、ガスとなってコンプレッサーへ戻ります。

エバポレーターは、空気から熱を吸収する熱交換器です。除湿・凍結・冷え不良の確認点は、エバポレーターの解説もご覧ください。

カーエアコンが除湿できる理由

エバポレーターには、空気を冷やすとともに除湿する働きがあります。

湿った空気が冷たいエバポレーター表面に触れて冷やされると、条件に応じて空気中の水分が結露し、水滴になります。この水はドレンホースを通って車外へ排出されます。

夏場、エアコンを使用した車の下に水が落ちていることがあります。正常なエアコン作動による結露水であれば、異常ではありません。

この除湿作用は、雨天時などの窓ガラスの曇り取りにも役立ちます。

高圧側と低圧側はどこで分かれる?

冷凍サイクルでは、コンプレッサーで冷媒の圧力が上がり、エキスパンションバルブで圧力が下がります。この2つを境に、高圧側と低圧側に分けて考えます。

区分 範囲 主な冷媒の状態変化
高圧側 コンプレッサー吐出側から、エキスパンションバルブ入口側まで 高温・高圧のガスから、高圧の液体へ
低圧側 エキスパンションバルブ出口側から、コンプレッサー吸入側まで 低温・低圧の液とガスが混在した状態から、低圧のガスへ

高圧側と低圧側の圧力は、故障診断の重要な情報です。ただし、圧力だけで故障部品を断定することはできません。

冷媒圧力は、外気温、コンプレッサーの作動条件、冷媒量、コンデンサーの放熱状態、冷却ファン、エキスパンションバルブの状態などによって変化します。

冷媒は多く入れるほど冷えるわけではない

カーエアコンには、車両ごとに指定された適正な冷媒量があります。

冷媒が不足している場合
エバポレーターへ十分な冷媒を供給できず、冷房能力が低下する原因になります。

冷媒を入れすぎた場合
高圧側の圧力が異常に高くなる原因となり、冷房性能の低下や、コンプレッサー・配管・コンデンサーなどへの過大な負担につながる可能性があります。

冷媒は、対象車両の指定充填量と整備要領に従って充填することが基本です。

「冷えないから、とりあえず追加する」という判断では、冷媒量が適正になるとは限りません。

サブクールコンデンサー方式などでは、従来のレシーバーサイクルと冷媒量の確認方法が異なる場合があります。対象車両の方式と指定値を確認してください。

冷えないときは、冷凍サイクル全体を確認する

コンプレッサーが正常でも、次のような原因で冷房能力が低下することがあります。

  • コンデンサーが十分に放熱できていない
  • 冷却ファンが正常に作動していない
  • 冷媒量が適正でない
  • エキスパンションバルブに異常がある
  • エバポレーターが正常に熱交換できていない
  • 冷媒回路や制御系に異常がある
「エアコンが冷えない」という症状だけで、コンプレッサー故障と決めつけることはできません。

冷媒量、圧力、放熱状態、関連部品の作動などを合わせて確認し、原因を絞り込むことが大切です。

冷凍サイクルを理解することが、診断の第一歩

カーエアコンは、冷媒が圧縮・凝縮・減圧・蒸発を繰り返し、車室内の熱を車外へ運ぶことで冷房を行います。

5つの主要部品の役割
  • コンプレッサー:ガス冷媒を圧縮する
  • コンデンサー:車外へ熱を放出して冷媒を凝縮させる
  • レシーバータンク:液冷媒を蓄え、ストレーナや乾燥剤で異物・水分を除去する
  • エキスパンションバルブ:冷媒を減圧し、流量を調整する
  • エバポレーター:冷媒を蒸発させ、空気から熱を吸収する

どこかが正常に機能しなければ、冷房性能が低下する可能性があります。部品交換を判断する際も、冷凍サイクル全体の状態を確認することが重要です。

次回のカーエアコン技術編

コンプレッサーとはどんな部品?種類・構造・役割を詳しく解説

冷凍サイクルの中心となるコンプレッサーについて、構造や方式の違いを解説します。

本記事の説明範囲

本記事は、レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な構成を中心に説明しています。

実際の構造、使用冷媒、制御方法、圧力、冷媒充填量は、車種・年式・システムによって異なります。実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書、メーカー指定値、使用冷媒、指定充填量をご確認ください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

適合確認フォーム LINEで適合確認 メールで相談