カーエアコンのコンプレッサーを交換した後に、ロック・焼付き・マグネットクラッチやコイルの焼損が起きると、
「交換したコンプレッサーが悪かったのではないか」「次のコンプレッサーも同じように壊れないか」と思われるかもしれません。
当社のリビルトコンプレッサーは、組立後に圧縮・作動を確認して出荷しています。出荷時の試験条件で圧縮・作動を確認することと、取付先の車両で冷媒・オイルが適切に循環することは、別に確認が必要です。
一方、ロック・焼付きは、車両へ取り付けてエアコンサイクルを作動させた後に発生する故障です。異常高圧、冷媒・オイル循環不良、回路内の詰まりや汚れ、放熱不良など、取付後のサイクル条件に大きく影響されます。
そのため太田美品通商では、ロック・焼付き、マグネットクラッチ・コイル焼損、サイクル不調・高圧異常に起因する故障を、コンプレッサー単体の保証対象外と定めています。
これはお客様の責任と決めつけるためではありません。ロック・焼付きが起きた時点では、圧力、冷媒量、オイル循環、放熱、車両制御、配管内の汚れ・詰まりなど、コンプレッサー単体では判定できない条件が関わっているためです。
ロック・焼付き後は、故障を起こした条件と、故障によって残った汚れの両方を確認する必要があります。どちらかを残すと、交換したコンプレッサーも再び傷むおそれがあります。
- 放熱・冷媒量・循環・車両制御に問題がないか確認する。
- 回路内の汚れ・異物を確認し、必要な部品交換と洗浄を行う。
- 指定の冷媒・オイルで整備し、修理後の作動を確認する。
すでに不具合がある当社製品は、分解・再組立せず、当社へご連絡ください。
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当てはまる項目を選ぶと、記事内の詳しい説明へ進めます。
| 症状・知りたいこと | 確認する内容 |
|---|---|
| 焼付き・ロックの仕組みを知りたい | 内部で起こる損傷の説明 |
| 高圧異常との関係を知りたい | コンプレッサーに負荷がかかる仕組み |
| 実際の内部状態を見たい | 分解点検の写真と事例 |
| 本体だけ交換してよいか知りたい | 単体交換で原因が残るリスク |
| 保証の扱いを確認したい | 当社の保証対象外の説明 |
コンプレッサーは、エアコンサイクルの一部です
コンプレッサーは単体で冷やしている部品ではありません。冷媒を圧縮して送り出し、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターを通った冷媒が、再びコンプレッサーへ戻る循環の一部です。
コンプレッサーの構造・役割はこちらで詳しく解説しています。
↓
コンデンサー(熱を放出)
↓
レシーバータンク
↓
エキスパンションバルブ
↓
エバポレーター(車内の熱を吸収)
↓
コンプレッサーへ戻る
コンプレッサーオイルの一部は冷媒とともにサイクル内を循環します。したがって、圧力異常、冷媒量の不適合、流路の詰まり、金属粉やスラッジ、放熱不足を残したままコンプレッサーだけを交換すると、新しいコンプレッサーも同じ条件で作動することになります。
異常高圧がコンプレッサーへ負荷をかける仕組み
コンデンサーの放熱不足、冷却ファン不良、冷媒の過充填、配管や部品の詰まりなどがあると、高圧側の圧力が異常に上がることがあります。コンプレッサーは、その高い圧力へ冷媒を押し出し続けるため、圧縮負荷と発熱が大きくなります。
動画:異常高圧によってコンプレッサーの負荷・温度が上がり、焼付き・ロックへ至る仕組みの一例
コンプレッサー内部の潤滑・冷却状態にも影響し、摩擦と発熱を増やす要因になります。高圧側・低圧側の見方は、カーエアコンの高圧・低圧と故障診断の確認ポイントをご覧ください。
車両には、異常な高圧・低圧を検出するとコンプレッサーの作動を停止・制限する仕組みがあります。高圧が上がれば必ず焼き付くわけではありません。焼付きの原因を調べる際は、圧力や放熱状態に加え、センサー・スイッチ・制御の作動も確認します。動画は故障に至る一例を模式化したもので、すべての車両で同じ順序・時間で進むことを示すものではありません。
詰まり・汚れ・オイル循環不良も、焼付き・ロックの原因になります
前のコンプレッサーがロック・焼付きした車両では、配管や各部品の中に金属粉、異物、スラッジ、劣化したオイルが残っていることがあります。レシーバータンク、エキスパンションバルブ、ダイハツ車のリキッドパイプ内チューブフィルターなどで流れが妨げられると、冷媒・オイルの循環や圧力状態が乱れます。
詰まりの位置によって圧力の出方は異なりますが、いずれもコンプレッサーが適正な潤滑・冷却条件を失う原因になります。レシーバータンクを同時交換する理由、エキスパンションバルブの役割と交換時の注意点もあわせてご確認ください。
動画:回路内の詰まりにより冷媒・オイルの循環が乱れ、潤滑不良から焼付き・ロックへ至る仕組みの一例
オイルの一部は冷媒の流れによってコンプレッサーへ戻ります。冷媒不足で循環が悪くなると、回路内のオイルが十分に戻らず、潤滑・冷却が不足することがあります。オイルが外へ漏れた量だけでなく、戻る経路と冷媒量の確認も必要です。
ロック・焼付きは、どのように起きるのか
コンプレッサー内部には回転・摺動する部品があります。冷媒・オイルの循環、圧力、放熱の状態が悪化すると、部品を守る油膜が保てなくなり、摩擦と内部温度が上昇します。
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圧縮負荷・発熱の増加/冷媒・オイル循環の乱れ
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潤滑・冷却不足
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摩擦・熱膨張・金属接触
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内部損傷・焼付き・ロック
内部構造はコンプレッサーの種類により異なりますが、適正な油膜が保てない状態で高い負荷・熱が続けば、摺動部が傷み、最終的に回転できなくなることがあります。
クラッチ・コイル焼損は、負荷と電気系統を分けて確認する
異常高圧や内部ロックで駆動負荷が増し、クラッチが滑ると、摩擦熱によって周辺部品が損傷することがあります。一方、電源電圧の低下、配線・接続部の異常、クラッチのすき間、頻繁な接続・切離しなども点検対象です。
コイルが焼けていることだけで、異常高圧が原因だったとは確定できません。焼損部品の交換とあわせ、コンプレッサーの回転状態、圧力、通電時の電圧、クラッチの吸着・滑りを、整備要領に沿って確認します。
技術参考:Sanden SDサービスガイド(クラッチ点検・滑りの説明)。記載の個別数値は対象製品用であり、全車共通ではありません。
実際にロック・焼付きしたコンプレッサーの分解点検例
以下は、当社で分解点検した3台の別々のロック・焼付きコンプレッサーの参考写真です。内部の黒く変色したオイル、過熱・摩耗の痕跡、クラッチ周辺の焼損などが確認されることがあります。
写真は内部やオイルの状態を伝える資料です。点検では、オイルの状態に加え、摺動面の傷・摩耗、クラッチの状態、現車の整備記録などを照合します。汚れが故障前からあったのか、故障によって生じたのかも、写真の色だけでは区別できません。掲載写真は当社での分解点検例であり、お客様による分解を案内するものではありません。
事例1|ロック品の分解部品と内部状態


事例2|クラッチ周辺の焼損と内部の黒いオイル


事例3|別のロック品に見られた内部状態


コンプレッサー単体のみの交換が危険な理由
前のコンプレッサーがロック・焼付きしている場合、その原因になった条件や、故障によって生じた汚れ・金属粉がサイクル内に残っている可能性があります。その状態でコンプレッサーだけを交換すると、新しいコンプレッサーへ同じ負荷や異物がかかり、短期間で再発するおそれがあります。
・レシーバータンクの交換
・エキスパンションバルブの交換
・ダイハツ車ではチューブフィルター(リキッドパイプ内フィルター)の交換
・配管内の金属粉、異物、スラッジの除去と必要なフラッシング
・コンデンサーの汚損・詰まり、冷却ファン、ファンモーター等の点検
・圧力センサー、温度センサー、ECUなど車両側制御の確認
・指定冷媒、指定オイル、車両指定量による適正な充填・管理
- コンデンサーと冷却ファン:熱を外へ逃がせるかを確認します。高圧が高いときの確認箇所もご覧ください。
- 冷媒・オイルの種類と量:作業記録と車両指定を照合します。圧力の数字だけで残量は決められません。
- 配管・関連部品の汚れや詰まり:異物を新しいコンプレッサーへ戻さないため、交換範囲と洗浄可能な範囲を判断します。
- クラッチ・電源・保護制御:負荷による滑りと電気系統の異常を分け、整備要領に沿って確認します。
高圧・低圧の記録は、外気温・エンジン回転数・エアコン設定などの測定条件と一緒に確認します。ロックした状態で、記録を取るために無理に再始動しないでください。
車種や故障状態によって必要な作業は異なります。ガス漏れが疑われる場合は、追加充填ではなく原因確認・修理後の規定量充填が必要です。冷媒漏れに補充だけはNGな理由もご確認ください。
真空引きは空気や水分を除去する工程であり、金属粉やスラッジを洗い流す工程ではありません。また、コンプレッサー・レシーバードライヤー・エキスパンションバルブを接続したまま回路全体を洗浄する方法は適切ではありません。メーカー指定の手順で洗浄対象を分け、交換が必要な部品や十分に洗浄できない部品を判断します。
技術参考:HELLA 冷媒回路のフラッシング解説
なぜ太田美品通商ではロック・焼付きが保証対象外なのか
当社の保証規定では、商品に起因する不具合と保証対象外事項を区分しています。ロック・本体焼付き・マグネットクラッチやコイルの焼損は、同規定の保証対象外事項です。具体的な条件は下記の保証ページでご確認いただけます。
故障の仕組みを理解することと、個別の故障原因を特定することは別です。取付後の圧力、冷媒量、オイル循環、放熱、車両側制御、回路内の汚れや詰まり、現品の状態をあわせて確認します。「交換後に発生した」「オイルが黒い」という情報だけで、お客様の作業に原因があったと断定するものではありません。
保証対象外=お客様の責任と決めつけるものではありません。ただし、エアコンサイクルの条件に大きく影響される故障であり、コンプレッサー単体だけで保証できる範囲を超えるため、太田美品通商の保証規定では対象外としています。
保証判定は、返送品の点検結果をもとに行います。現車で部品を交換して症状が変化したことだけでは、コンプレッサー単体の不良とは判断できません。詳しい条件は、返品・保証についてをご確認ください。
分解または分解の形跡がある場合、保証対象外となります。不具合が発生した場合は、部品を分解・再組立せず、まず当社へご連絡ください。
よくある質問
Q.交換したばかりなのにロックした。コンプレッサー不良ではないのですか?
A.当社では組立後に圧縮・作動を確認して出荷しています。取付後のロック・焼付きは、異常高圧、冷媒・オイル循環不良、放熱不良、回路内の汚れや詰まりなど、サイクルを作動させた後の条件を含めて確認する必要があります。保証判定は返送品の点検結果に基づきます。
Q.なぜレシーバータンクやエキスパンションバルブも交換するのですか?
A.内部の乾燥剤・フィルターや流路に汚れ・異物が残ると、冷媒とオイルの循環が乱れ、新しいコンプレッサーへ再び負担がかかるためです。車種により必要な関連部品は異なります。
Q.ロック・焼付きやコイル焼損は、なぜ保証対象外なのですか?
A.これらは取付後のサイクル条件に大きく影響され、コンプレッサー単体では原因を判定・保証できない故障だからです。太田美品通商の保証規定でも対象外と定めています。
Q.不具合品を分解して原因を調べてもよいですか?
A.いいえ。分解または分解の形跡がある場合は保証対象外となります。現状のまま当社へご連絡ください。
まとめ|再発を防ぐには、サイクル全体の正常化が必要です
・リビルトコンプレッサーは、圧縮・作動を確認して出荷している
・ロック・焼付きは、車両のエアコンサイクルへ組み付けた後に発生する故障
・異常高圧、詰まり、汚れ、冷媒・オイル循環不良、放熱不良は再発原因になる
・黒く変色したオイルや焼損・摩耗の痕跡は、サイクル全体を確認すべき重要な所見
・コンプレッサーだけを交換しても、原因を残せば再発するおそれがある
・レシーバー、エキスパンションバルブ、必要に応じたチューブフィルター、配管洗浄などを実施する
・ロック・焼付き・クラッチ/コイル焼損は、太田美品通商の保証規定で保証対象外
ご相談時に送っていただきたい情報
不具合のご相談は、分解せず、返送する前に当社へご連絡ください。分かる範囲で次の情報をお知らせいただくと、現品確認と対応の案内がスムーズです。
- 購入情報:注文番号・購入時期。
- 車両情報:車検証に記載された型式・車台番号・初度登録年月など。
- 部品情報:コンプレッサーの品番・ラベル、外観・コネクター・取付部の写真。分解して撮影する必要はありません。
- 発生状況:取付日、発生までの期間・走行距離、異音・冷え不良など気付いた症状。
- 整備内容:交換した関連部品、洗浄の実施範囲、充填した冷媒・オイルの種類と量。
- すでにある点検記録:高圧・低圧と測定条件、ファンの作動、故障コードなど。記録がない場合は、その旨をお知らせください。
保証に関するご相談はLINE・メールへ、交換部品の選定は品番・車両情報・現品写真を添えて適合確認フォームへお進みください。
車検証情報、現品の品番・刻印、コネクター・取付部の写真があると、確認がスムーズです。ロック・焼付き後の対応や関連部品についても、作業前にご相談ください。
本記事は、ロック・焼付きが発生する代表的な仕組みと、交換時に確認すべき事項を解説したものです。圧力値、冷媒・オイルの種類と量、必要な交換部品、点検方法は車種やシステムによって異なります。実車の整備では、対象車両および部品メーカーの整備要領・指定値を確認してください。
