カーエアコンの高圧が高い原因|コンデンサー・電動ファン・冷媒量の確認ポイント

カーエアコンの高圧が高いときに確認するコンデンサー・電動ファン・冷媒量

カーエアコン技術編・第10話

カーエアコンの点検で高圧側の圧力が高いとき、確認するのはコンプレッサーの良否ではなく、まず冷媒を冷やして熱を逃がす側の状態です。

高圧が高くなる主な要因は、コンプレッサーが送り出した冷媒をコンデンサーで十分に放熱できているか、電動ファンが適切に作動しているか、冷媒量が車両指定量に合っているかといった、冷凍サイクルの放熱側・充填状態にあります。

高圧が高いときは、まず放熱側を確認します。

高圧異常は、コンデンサーで熱を逃がせない、電動ファンが十分に作動しない、冷媒量が適正でないなど、冷凍サイクルの放熱側・充填状態を確認する症状です。

この記事では、高圧が高いときに確認する順序を、コンデンサー・電動ファン・冷媒量を中心に解説します。圧力計の数値だけで、交換する部品を決めるための記事ではありません。

高圧側とは?コンプレッサー吐出側からエキパン入口まで

カーエアコンでは、コンプレッサーが低圧側から吸い込んだ冷媒を圧縮し、高温・高圧の状態で送り出します。一般的なエキスパンションバルブ方式では、コンデンサーとレシーバーを通り、エキパンの入口までが高圧側です。

図解|高圧が高いときに優先して確認する3つ

コンプレッサー
↓
① コンデンサー
放熱を確認
↓
レシーバータンク
・リキッドパイプ
↓
エキスパンション
バルブ
① コンデンサーの放熱
汚れ・フィンの状態・通風を確認します。
② 電動ファンの作動
必要な条件で十分に風を送れているか確認します。
③ 冷媒量
回収後、車両指定量を重量管理して確認します。

※高圧の数値だけで、交換する部品は決めません。

コンデンサーは、送り出された冷媒の熱を車外へ放出し、冷媒を液化させる部品です。ここで十分に熱を逃がせなければ、冷媒は凝縮・液化しにくくなり、高圧側の圧力が上がりやすくなります。

つまり高圧が高いときは、まずコンデンサーで放熱できているかを確認します。

冷凍サイクル全体の流れは、カーエアコンの仕組みと冷凍サイクルの記事で解説しています。

高圧が高いときに確認する主な原因

1.コンデンサーの放熱不足

コンデンサー表面の汚れ、フィンの腐食・変形、コンデンサーとラジエーターの間にたまったごみなどは、通風を妨げます。熱を逃がせなければ冷媒は十分に凝縮・液化しにくくなり、高圧側の圧力が上がります。

放熱不足
↓
冷媒が十分に凝縮・液化しにくい
↓
高圧側の圧力が上がりやすくなる

2.電動ファン・冷却ファンの作動不良

停車中や低速走行中は、コンデンサーへ当たる走行風が少なくなります。このとき放熱を支えるのが、電動ファンや冷却ファンです。

ファンが作動しない、回転が弱い、必要なタイミングで作動しない場合は、コンデンサーの放熱不足につながります。「走行中は比較的冷えるが、渋滞や信号待ちでは冷えが弱い」場合は、ファンの作動とコンデンサー周辺の通風を確認します。ただし、この症状だけでファン不良と断定することはできません。

3.冷媒を入れすぎている(過充填)

冷媒の充填量は車両ごとに指定されています。残量が分からないまま冷媒を追加し、指定量を超えると、コンデンサーでの放熱・凝縮に影響し、高圧側の圧力が上がる原因になります。

冷媒量は圧力計だけで決めません。

冷媒を適切に回収し、必要な真空引きを行ったうえで、対象車両の指定量を重量管理して充填します。

圧力の測定結果だけで「過充填」と断定することもできません。外気温、測定条件、ファン作動、制御状態などを確認し、車両の整備要領に従って判断します。冷媒漏れ時の補充については、カーエアコンのガス漏れに補充だけはNG?の記事もご確認ください。

4.空気などの非凝縮ガスが混入している

冷媒回路に混入した空気は、通常の作動条件では冷媒のように凝縮しません。高圧上昇の原因候補になるため、回路を開けた修理や充填の履歴、真空引きの実施状況も確認します。高圧が高いだけで空気混入とは断定せず、放熱状態や充填量とあわせて点検します。

空気混入が疑われる場合は、整備工場で冷媒を適切に回収し、メーカー指定の手順で真空引き・規定量充填を行います。冷媒を大気へ放出したり、圧力だけを見て抜き足ししたりしないでください。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表(原因候補の参考。実車の数値・手順は車両メーカーの整備要領を優先します)。

「詰まり」と高圧異常を混同しない

レシーバータンク、リキッドパイプ、エキスパンションバルブ、配管などで冷媒の流れが妨げられると、詰まりの位置や程度によって圧力の出方が変わります。

「詰まり=必ず高圧が高い」ではありません。

たとえばフィルタードライヤーの制限では、高圧・低圧とも低く出たり、制限部の後で霜付きが出たりすることがあります。流路制限は、圧力・配管温度・霜付き・冷え方を総合して確認します。

レシーバータンクやエキスパンションバルブの役割は、レシーバータンクの記事、エキスパンションバルブの記事で解説しています。

高圧異常でコンプレッサーが止まるのは、保護制御の場合があります

車両によっては圧力スイッチや圧力センサーで異常を検出し、コンプレッサーの作動を停止・制限します。停止したことだけで本体故障とは判断せず、停止前の圧力、ファン作動、センサー情報を確認します。作動させるために保護回路を短絡・無効化しないでください。作動条件やしきい値は車種ごとに異なります。

高圧・低圧が両方高い場合の見分け方

高圧だけでなく低圧も高いときは、過充填と放熱不足の両方を点検します。追加充填の履歴があるなら規定量との照合、コンデンサーに汚れがあるなら通風状態、ファンなら必要な条件で十分に風を送れているかを確認します。

「両方高い」という同じ測定結果でも、必要な対応は冷媒量の是正、清掃、ファンやその電気系統の修理などに分かれます。冷媒量と放熱状態をそれぞれ確認することが、交換部品を選ぶ前の切り分けになります。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

高圧が高いときの確認順序

1.車両の整備要領にある条件で高圧・低圧を確認する
外気温、回転数、冷房設定、冷却ファンの作動などを確認して測定します。

2.コンデンサー周辺の放熱状態を確認する
表面の汚れ、フィンの損傷、ラジエーターとの間の詰まり、通風状態を確認します。

3.電動ファン・冷却ファンの作動を確認する
作動の有無だけでなく、必要な状態で十分に回転しているかを確認します。

4.冷媒を回収し、指定量で充填されているか確認する
冷媒量は感覚で補充せず、対象車両の指定量を重量管理します。回路開放・充填の履歴を確認し、空気混入が疑われる場合は適切な回収・真空引き・再充填につなげます。

5.必要に応じて配管温度・霜付き・流路の状態を確認する
流路制限が疑われる場合は、制限位置を含めて冷凍サイクル全体を確認します。

高圧・低圧の基本的な見方は、カーエアコンの高圧・低圧の記事も参考にしてください。

まとめ|高圧が高いときは、まず放熱側と冷媒量を確認する

今回のポイント

・高圧が高いときは、まずコンデンサーの放熱状態、電動ファン・冷却ファンの作動、冷媒量を確認する

・冷媒量は、回収・真空引き後に車両指定量を重量管理して充填する

・空気などの非凝縮ガスの混入と、圧力保護制御も確認する

・流路制限は位置によって圧力の出方が異なり、「詰まり=高圧が高い」ではない

・圧力の数値だけで、交換する部品を決めない

適合確認や交換前の確認でお困りの場合は、品番・車両情報・現品写真をご用意のうえお問い合わせください。

品番・車両情報で適合確認する
LINEで問い合わせる
メールで問い合わせる

ご注意
本記事はカーエアコンの高圧側の圧力が高い場合に確認する代表的な項目を解説したものです。圧力値、点検条件、冷媒種類、指定充填量、制御内容は車種により異なります。実車の整備では対象車両および部品メーカーの整備要領を確認してください。

カーエアコンのコンプレッサーがロック・焼付きする原因|保証対象外となる理由

カーエアコンのコンプレッサーがロック・焼付きする原因を解説したアイキャッチ画像

カーエアコンのコンプレッサーを交換した後に、ロック・焼付き・マグネットクラッチやコイルの焼損が起きると、
「交換したコンプレッサーが悪かったのではないか」「次のコンプレッサーも同じように壊れないか」と思われるかもしれません。

まず結論|ロック・焼付き・クラッチ/コイル焼損は、保証対象外です

当社のリビルトコンプレッサーは、組立後に圧縮・作動を確認して出荷しています。出荷時の試験条件で圧縮・作動を確認することと、取付先の車両で冷媒・オイルが適切に循環することは、別に確認が必要です。

一方、ロック・焼付きは、車両へ取り付けてエアコンサイクルを作動させた後に発生する故障です。異常高圧、冷媒・オイル循環不良、回路内の詰まりや汚れ、放熱不良など、取付後のサイクル条件に大きく影響されます。

そのため太田美品通商では、ロック・焼付き、マグネットクラッチ・コイル焼損、サイクル不調・高圧異常に起因する故障を、コンプレッサー単体の保証対象外と定めています。

これはお客様の責任と決めつけるためではありません。ロック・焼付きが起きた時点では、圧力、冷媒量、オイル循環、放熱、車両制御、配管内の汚れ・詰まりなど、コンプレッサー単体では判定できない条件が関わっているためです。

コンプレッサーだけ交換して大丈夫?

ロック・焼付き後は、故障を起こした条件と、故障によって残った汚れの両方を確認する必要があります。どちらかを残すと、交換したコンプレッサーも再び傷むおそれがあります。

  1. 放熱・冷媒量・循環・車両制御に問題がないか確認する。
  2. 回路内の汚れ・異物を確認し、必要な部品交換と洗浄を行う。
  3. 指定の冷媒・オイルで整備し、修理後の作動を確認する。

すでに不具合がある当社製品は、分解・再組立せず、当社へご連絡ください。

目的別早見表|知りたい内容へ進む

当てはまる項目を選ぶと、記事内の詳しい説明へ進めます。

症状・知りたいこと 確認する内容
焼付き・ロックの仕組みを知りたい 内部で起こる損傷の説明
高圧異常との関係を知りたい コンプレッサーに負荷がかかる仕組み
実際の内部状態を見たい 分解点検の写真と事例
本体だけ交換してよいか知りたい 単体交換で原因が残るリスク
保証の扱いを確認したい 当社の保証対象外の説明

コンプレッサーは、エアコンサイクルの一部です

コンプレッサーは単体で冷やしている部品ではありません。冷媒を圧縮して送り出し、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターを通った冷媒が、再びコンプレッサーへ戻る循環の一部です。
コンプレッサーの構造・役割はこちらで詳しく解説しています。

コンプレッサー
↓
コンデンサー(熱を放出)
↓
レシーバータンク
↓
エキスパンションバルブ
↓
エバポレーター(車内の熱を吸収)
↓
コンプレッサーへ戻る

コンプレッサーオイルの一部は冷媒とともにサイクル内を循環します。したがって、圧力異常、冷媒量の不適合、流路の詰まり、金属粉やスラッジ、放熱不足を残したままコンプレッサーだけを交換すると、新しいコンプレッサーも同じ条件で作動することになります。

異常高圧がコンプレッサーへ負荷をかける仕組み

コンデンサーの放熱不足、冷却ファン不良、冷媒の過充填、配管や部品の詰まりなどがあると、高圧側の圧力が異常に上がることがあります。コンプレッサーは、その高い圧力へ冷媒を押し出し続けるため、圧縮負荷と発熱が大きくなります。

動画:異常高圧によってコンプレッサーの負荷・温度が上がり、焼付き・ロックへ至る仕組みの一例

高圧異常は、単に「圧力の数字が高い」だけの問題ではありません。
コンプレッサー内部の潤滑・冷却状態にも影響し、摩擦と発熱を増やす要因になります。高圧側・低圧側の見方は、カーエアコンの高圧・低圧と故障診断の確認ポイントをご覧ください。
圧力保護制御も点検します

車両には、異常な高圧・低圧を検出するとコンプレッサーの作動を停止・制限する仕組みがあります。高圧が上がれば必ず焼き付くわけではありません。焼付きの原因を調べる際は、圧力や放熱状態に加え、センサー・スイッチ・制御の作動も確認します。動画は故障に至る一例を模式化したもので、すべての車両で同じ順序・時間で進むことを示すものではありません。

詰まり・汚れ・オイル循環不良も、焼付き・ロックの原因になります

前のコンプレッサーがロック・焼付きした車両では、配管や各部品の中に金属粉、異物、スラッジ、劣化したオイルが残っていることがあります。レシーバータンク、エキスパンションバルブ、ダイハツ車のリキッドパイプ内チューブフィルターなどで流れが妨げられると、冷媒・オイルの循環や圧力状態が乱れます。

詰まりの位置によって圧力の出方は異なりますが、いずれもコンプレッサーが適正な潤滑・冷却条件を失う原因になります。レシーバータンクを同時交換する理由、エキスパンションバルブの役割と交換時の注意点もあわせてご確認ください。

動画:回路内の詰まりにより冷媒・オイルの循環が乱れ、潤滑不良から焼付き・ロックへ至る仕組みの一例

冷媒不足でも、オイル戻りと冷却が悪化することがあります

オイルの一部は冷媒の流れによってコンプレッサーへ戻ります。冷媒不足で循環が悪くなると、回路内のオイルが十分に戻らず、潤滑・冷却が不足することがあります。オイルが外へ漏れた量だけでなく、戻る経路と冷媒量の確認も必要です。

ロック・焼付きは、どのように起きるのか

コンプレッサー内部には回転・摺動する部品があります。冷媒・オイルの循環、圧力、放熱の状態が悪化すると、部品を守る油膜が保てなくなり、摩擦と内部温度が上昇します。

サイクル不良
↓
圧縮負荷・発熱の増加/冷媒・オイル循環の乱れ
↓
潤滑・冷却不足
↓
摩擦・熱膨張・金属接触
↓
内部損傷・焼付き・ロック

内部構造はコンプレッサーの種類により異なりますが、適正な油膜が保てない状態で高い負荷・熱が続けば、摺動部が傷み、最終的に回転できなくなることがあります。

クラッチ・コイル焼損は、負荷と電気系統を分けて確認する

異常高圧や内部ロックで駆動負荷が増し、クラッチが滑ると、摩擦熱によって周辺部品が損傷することがあります。一方、電源電圧の低下、配線・接続部の異常、クラッチのすき間、頻繁な接続・切離しなども点検対象です。

コイルが焼けていることだけで、異常高圧が原因だったとは確定できません。焼損部品の交換とあわせ、コンプレッサーの回転状態、圧力、通電時の電圧、クラッチの吸着・滑りを、整備要領に沿って確認します。

技術参考:Sanden SDサービスガイド(クラッチ点検・滑りの説明)。記載の個別数値は対象製品用であり、全車共通ではありません。

実際にロック・焼付きしたコンプレッサーの分解点検例

以下は、当社で分解点検した3台の別々のロック・焼付きコンプレッサーの参考写真です。内部の黒く変色したオイル、過熱・摩耗の痕跡、クラッチ周辺の焼損などが確認されることがあります。

写真の状態だけで、一つの故障原因を断定するものではありません。
写真は内部やオイルの状態を伝える資料です。点検では、オイルの状態に加え、摺動面の傷・摩耗、クラッチの状態、現車の整備記録などを照合します。汚れが故障前からあったのか、故障によって生じたのかも、写真の色だけでは区別できません。掲載写真は当社での分解点検例であり、お客様による分解を案内するものではありません。

事例1|ロック品の分解部品と内部状態

ロック・焼付きしたカーエアコンコンプレッサーを分解した内部部品
ロック・焼付きが発生したコンプレッサーの分解部品です。
ロック・焼付きしたカーエアコンコンプレッサー内部の分解点検写真
内部部品と黒く変色したオイルが見られる分解点検例です。

事例2|クラッチ周辺の焼損と内部の黒いオイル

焼損したカーエアコンコンプレッサーのマグネットクラッチとコイル周辺
過熱・焼損が確認されたマグネットクラッチ周辺の分解部品です。
ロック・焼付きしたコンプレッサー内部に残る黒いオイル
コンプレッサー内部に黒く変色したオイルが残っている例です。

事例3|別のロック品に見られた内部状態

ロックしたカーエアコンコンプレッサーを分解した内部部品
別のロック品を分解し、内部状態を確認した例です。
ロック品のケース内面と内部に残ったオイルの拡大写真
内部に残ったオイルとケース内面の拡大写真です。色だけで異物の成分や故障原因は判断できません。

コンプレッサー単体のみの交換が危険な理由

前のコンプレッサーがロック・焼付きしている場合、その原因になった条件や、故障によって生じた汚れ・金属粉がサイクル内に残っている可能性があります。その状態でコンプレッサーだけを交換すると、新しいコンプレッサーへ同じ負荷や異物がかかり、短期間で再発するおそれがあります。

コンプレッサー交換時に確認・実施する項目

・レシーバータンクの交換
・エキスパンションバルブの交換
・ダイハツ車ではチューブフィルター(リキッドパイプ内フィルター)の交換
・配管内の金属粉、異物、スラッジの除去と必要なフラッシング
・コンデンサーの汚損・詰まり、冷却ファン、ファンモーター等の点検
・圧力センサー、温度センサー、ECUなど車両側制御の確認
・指定冷媒、指定オイル、車両指定量による適正な充填・管理

整備工場では「何を確認するか」と「なぜ必要か」をセットで確認します

  • コンデンサーと冷却ファン:熱を外へ逃がせるかを確認します。高圧が高いときの確認箇所もご覧ください。
  • 冷媒・オイルの種類と量:作業記録と車両指定を照合します。圧力の数字だけで残量は決められません。
  • 配管・関連部品の汚れや詰まり:異物を新しいコンプレッサーへ戻さないため、交換範囲と洗浄可能な範囲を判断します。
  • クラッチ・電源・保護制御:負荷による滑りと電気系統の異常を分け、整備要領に沿って確認します。

高圧・低圧の記録は、外気温・エンジン回転数・エアコン設定などの測定条件と一緒に確認します。ロックした状態で、記録を取るために無理に再始動しないでください。

車種や故障状態によって必要な作業は異なります。ガス漏れが疑われる場合は、追加充填ではなく原因確認・修理後の規定量充填が必要です。冷媒漏れに補充だけはNGな理由もご確認ください。

真空引きと、異物を取り除くフラッシングは別の作業です

真空引きは空気や水分を除去する工程であり、金属粉やスラッジを洗い流す工程ではありません。また、コンプレッサー・レシーバードライヤー・エキスパンションバルブを接続したまま回路全体を洗浄する方法は適切ではありません。メーカー指定の手順で洗浄対象を分け、交換が必要な部品や十分に洗浄できない部品を判断します。
技術参考:HELLA 冷媒回路のフラッシング解説

なぜ太田美品通商ではロック・焼付きが保証対象外なのか

当社の保証規定では、商品に起因する不具合と保証対象外事項を区分しています。ロック・本体焼付き・マグネットクラッチやコイルの焼損は、同規定の保証対象外事項です。具体的な条件は下記の保証ページでご確認いただけます。

故障の仕組みを理解することと、個別の故障原因を特定することは別です。取付後の圧力、冷媒量、オイル循環、放熱、車両側制御、回路内の汚れや詰まり、現品の状態をあわせて確認します。「交換後に発生した」「オイルが黒い」という情報だけで、お客様の作業に原因があったと断定するものではありません。

「ロック・焼付きした」という結果だけでは、コンプレッサー単体の不良として保証を適用できません。

保証対象外=お客様の責任と決めつけるものではありません。ただし、エアコンサイクルの条件に大きく影響される故障であり、コンプレッサー単体だけで保証できる範囲を超えるため、太田美品通商の保証規定では対象外としています。

保証判定は、返送品の点検結果をもとに行います。現車で部品を交換して症状が変化したことだけでは、コンプレッサー単体の不良とは判断できません。詳しい条件は、返品・保証についてをご確認ください。

不具合品は分解しないでください。
分解または分解の形跡がある場合、保証対象外となります。不具合が発生した場合は、部品を分解・再組立せず、まず当社へご連絡ください。

よくある質問

Q.交換したばかりなのにロックした。コンプレッサー不良ではないのですか?
A.当社では組立後に圧縮・作動を確認して出荷しています。取付後のロック・焼付きは、異常高圧、冷媒・オイル循環不良、放熱不良、回路内の汚れや詰まりなど、サイクルを作動させた後の条件を含めて確認する必要があります。保証判定は返送品の点検結果に基づきます。

Q.なぜレシーバータンクやエキスパンションバルブも交換するのですか?
A.内部の乾燥剤・フィルターや流路に汚れ・異物が残ると、冷媒とオイルの循環が乱れ、新しいコンプレッサーへ再び負担がかかるためです。車種により必要な関連部品は異なります。

Q.ロック・焼付きやコイル焼損は、なぜ保証対象外なのですか?
A.これらは取付後のサイクル条件に大きく影響され、コンプレッサー単体では原因を判定・保証できない故障だからです。太田美品通商の保証規定でも対象外と定めています。

Q.不具合品を分解して原因を調べてもよいですか?
A.いいえ。分解または分解の形跡がある場合は保証対象外となります。現状のまま当社へご連絡ください。

まとめ|再発を防ぐには、サイクル全体の正常化が必要です

ロック・焼付きで押さえるポイント

・リビルトコンプレッサーは、圧縮・作動を確認して出荷している
・ロック・焼付きは、車両のエアコンサイクルへ組み付けた後に発生する故障
・異常高圧、詰まり、汚れ、冷媒・オイル循環不良、放熱不良は再発原因になる
・黒く変色したオイルや焼損・摩耗の痕跡は、サイクル全体を確認すべき重要な所見
・コンプレッサーだけを交換しても、原因を残せば再発するおそれがある
・レシーバー、エキスパンションバルブ、必要に応じたチューブフィルター、配管洗浄などを実施する
・ロック・焼付き・クラッチ/コイル焼損は、太田美品通商の保証規定で保証対象外

ご相談時に送っていただきたい情報

不具合のご相談は、分解せず、返送する前に当社へご連絡ください。分かる範囲で次の情報をお知らせいただくと、現品確認と対応の案内がスムーズです。

  • 購入情報:注文番号・購入時期。
  • 車両情報:車検証に記載された型式・車台番号・初度登録年月など。
  • 部品情報:コンプレッサーの品番・ラベル、外観・コネクター・取付部の写真。分解して撮影する必要はありません。
  • 発生状況:取付日、発生までの期間・走行距離、異音・冷え不良など気付いた症状。
  • 整備内容:交換した関連部品、洗浄の実施範囲、充填した冷媒・オイルの種類と量。
  • すでにある点検記録:高圧・低圧と測定条件、ファンの作動、故障コードなど。記録がない場合は、その旨をお知らせください。

保証に関するご相談はLINE・メールへ、交換部品の選定は品番・車両情報・現品写真を添えて適合確認フォームへお進みください。

コンプレッサー交換前に、品番・車両情報・現品写真で適合確認してください

車検証情報、現品の品番・刻印、コネクター・取付部の写真があると、確認がスムーズです。ロック・焼付き後の対応や関連部品についても、作業前にご相談ください。

適合確認フォームへ
LINEで相談する
メールで問い合わせる

ご注意
本記事は、ロック・焼付きが発生する代表的な仕組みと、交換時に確認すべき事項を解説したものです。圧力値、冷媒・オイルの種類と量、必要な交換部品、点検方法は車種やシステムによって異なります。実車の整備では、対象車両および部品メーカーの整備要領・指定値を確認してください。

カーエアコンのガス漏れに補充だけはNG?過充填のリスクと修理時の確認ポイント

カーエアコンの配管接続部を漏れ検知器で点検するイメージと、冷媒補充の注意点を紹介するアイキャッチ。

カーエアコン技術編・第8話

カーエアコンが冷えなくなったとき、「ガスが減っているのでは?」と考えて、とりあえず冷媒を追加するケースがあります。

しかし、当社では冷媒漏れが疑われる状態での安易な「追いガス」はおすすめしていません。
冷媒が減っているのであれば、まず「どこから漏れているのか」「なぜ漏れたのか」を確認する必要があるためです。

冷媒は、足せば足すほど冷えるものではありません。

残量が分からないまま追加すると、規定量を超える「過充填」となり、高圧異常や冷え不良を招くおそれがあります。

この記事では、補充だけで対応するリスク、冷媒漏れとコンプレッサーオイルの関係、修理時に確認したいポイントを解説します。

安易な冷媒補充が危険な理由

カーエアコンには、車両ごとにメーカーが定めた冷媒の規定充填量があります。
冷えが悪いという症状だけで、冷媒不足と決めつけることはできません。

残量を把握せずに追加すると、過充填になる可能性があります。
過充填はコンデンサーでの放熱・凝縮に影響し、高圧側の圧力上昇などを招くことがあります。

過充填などで起こりうるトラブル

  • 冷え不良
  • 高圧異常
  • コンプレッサーへの負担増加
  • ホースやシール部への負担増加
  • 保護制御によるコンプレッサー停止

冷媒の残量が分からないまま補充するリスクと、漏れの確認・修理・規定量充填の流れを示した図
図:安易な冷媒補充のリスクと、漏れの原因確認・修理の考え方。配管を開ける作業の前には、残っている冷媒を適切に回収します。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。
圧力やサイトグラスだけで冷媒量を決めない

停止時の圧力だけでは、冷媒の残量を判断できません。
また、サイトグラスがある車両でも、その見え方だけで適正量と判断せず、対象車両の整備要領に従って管理することが重要です。

高圧・低圧がともに低いときは、漏れ跡も確認

指定条件で測った高圧・低圧がともに低く、冷えが弱い場合は冷媒不足を疑います。配管接続部、シール部、ホースのカシメ部などに油染みや汚れの集中がないか確認し、車両に適した漏れ点検につなげます。

油染みは点検する場所を絞る手掛かりです。漏れが確認できたらその箇所を修理し、規定量を重量管理して充填したあと、圧力・冷え具合・漏れの有無を再確認します。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

冷媒が漏れると、オイルも失われることがある

コンプレッサーオイルは、コンプレッサーの内部だけに留まっているわけではありません。
一部は冷媒とともに冷凍サイクル内を循環しています。

そのため、漏れ方や漏れ箇所によっては、冷媒とともにコンプレッサーオイルも系外へ失われることがあります。

冷媒漏れでは、冷媒量だけでなくオイルの状態にも注意が必要です。

オイルが不足すると潤滑不良を起こし、摩擦や内部温度の上昇を経て、コンプレッサーの損傷・焼付きにつながるおそれがあります。

漏れて減った冷媒だけを追加すれば、すべて解決するわけではありません。
ただし、冷媒漏れがあれば必ずオイル不足になるという意味ではなく、漏れの状態や整備内容に応じた確認が必要です。

オイルが漏れ出るだけでなく、戻りが悪くなることもあります

オイルの一部は冷媒とともに循環してコンプレッサーへ戻ります。冷媒不足で循環が悪くなると、オイルが回路内に残り、コンプレッサーへ十分に戻らなくなることがあります。これは、オイルが外へ漏れて総量が減る問題とは別です。潤滑・冷却不足を防ぐため、漏れ修理と指定冷媒量の管理、オイルの種類・量・循環状態を確認します。オイルを感覚で追加して解決しようとしないでください。詳しくはロック・焼付きと再発防止の記事をご覧ください。
技術参考:DENSO コンプレッサー故障診断資料

冷媒はどこから漏れる?

冷媒漏れは、コンプレッサー本体だけでなく、配管や熱交換器などでも発生する可能性があります。

主な確認箇所

  • コンプレッサーのシャフトシール部(シャフトシールがある構造の場合)
  • コンプレッサー本体の接合部
  • Oリングや配管接続部
  • ホースやカシメ部
  • コンデンサー
  • エバポレーター
  • サービスバルブ周辺

考えられる原因

  • シールやOリングの経年劣化
  • 振動や腐食
  • 飛び石などによる損傷
  • 接続部の不具合
  • 異常高圧による負担

漏れている部位だけでなく、なぜ漏れが発生したのかも確認することが大切です。

異常高圧が冷媒漏れにつながることもある

高圧側の圧力が異常に高くなると、ホース・Oリング・シール部・コンプレッサー接合部などに通常以上の負担がかかります。

その結果、劣化していた部分などから漏れが発生したり、既存の漏れが悪化したりすることがあります。

高圧異常で確認したい原因候補

  • 冷媒の過充填
  • コンデンサーの放熱不足
  • 電動ファンの作動不良
  • 冷凍サイクル内の流路制限

※流路制限による圧力の現れ方は、制限箇所や作動条件によって異なります。

すべての冷媒漏れが、異常高圧によるものではありません。

経年劣化、振動、腐食、シール不良、飛び石などでも漏れは発生します。漏れがあるという理由だけで、高圧異常と決めつけないことが重要です。

補充だけでは根本修理にならない

冷媒を追加して一時的に冷えるようになっても、漏れ箇所が残っていれば、再び冷媒が減少します。

漏れの原因に高圧異常や放熱不良が関係している場合は、その原因を残したまま補充しても、同じトラブルを繰り返す可能性があります。

大切なのは、「冷媒が減っているか」だけでなく、「なぜ減ったのか」まで確認することです。

漏れが疑われるときの確認・修理の流れ

以下は、整備時に確認したい基本的な流れです。実際の点検方法や作業順序は、車両の状態とメーカーの整備要領に従います。

1.作動状態を確認する
作動条件を確認したうえで、高圧・低圧、吹出口温度、ファンの作動などを点検します。圧力だけで冷媒不足や故障箇所を断定しません。

2.漏れ箇所と原因を確認する
配管・接続部・コンプレッサー・コンデンサー・エバポレーターなどを点検します。放熱不良や高圧異常が関係していないかも確認します。

3.配管を開ける前に冷媒を回収する
配管の取り外しや部品交換の前に、残っている冷媒を適切な回収機器で回収します。

4.必要な修理・部品交換を行う
漏れ箇所と原因に対応し、対象車両・部品の整備基準に従ってオイルの種類・量も確認します。

5.真空引き・漏れの確認を行う
指定された手順で系統内の空気や水分を除去し、漏れの確認を行います。

6.指定冷媒を規定量充填する
車両指定の冷媒を使用し、メーカー指定量を重量で管理して充填します。

7.修理後の作動状態を確認する
高圧・低圧、吹出口温度、冷却ファンの作動、漏れの有無などを確認します。

オイルも「とりあえず足す」ものではありません

冷媒漏れに伴ってオイルが失われた可能性があっても、感覚で追加すればよいわけではありません。

コンプレッサーオイルは、少なすぎれば潤滑不足につながり、多すぎても冷房性能などに悪影響を与える可能性があります。

冷媒とオイルは、どちらも指定に合わせて管理します。

部品交換や漏れ修理では、対象車両・コンプレッサーの整備基準に従って、適切なオイルの種類と量を確認することが重要です。

冷媒漏れで覚えておきたいポイント

  • 冷え不良だけで冷媒不足と決めつけない
  • 残量不明のまま補充すると、過充填になる可能性がある
  • 過充填は高圧異常や冷え不良につながることがある
  • 冷媒漏れに伴い、オイルも失われることがある
  • 漏れ箇所だけでなく、漏れた原因も確認する
  • 補充だけでは、漏れの根本修理にならない
  • 修理時は冷媒の回収・真空引き・規定量充填を適切に行う
  • オイルの種類・量も、整備基準に従って管理する

冷媒漏れが疑われるときは、
漏れ箇所と原因を確認し、
修理と適切な冷媒量・オイル量の管理につなげましょう。
ご注意
本記事は、カーエアコンの冷媒漏れについて代表的な考え方を解説したものです。
冷媒の種類・指定充填量、コンプレッサーオイルの種類・量、点検方法は、車種やシステムによって異なります。
実車の整備では、対象車両および部品メーカーの整備要領・指定値に従ってください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンの高圧・低圧とは?圧力パターンと故障診断の確認ポイント

カーエアコンの高圧・低圧と故障診断を紹介するアイキャッチ。赤と青の圧力計を配置

カーエアコン技術編・第7話

カーエアコンが冷えないとき、整備工場では高圧側・低圧側の圧力を測り、冷凍サイクルの状態を確認します。


高圧・低圧は、故障原因を絞り込むための診断材料です。圧力だけで故障部品を断定することはできません。

圧力は冷媒量だけでなく、外気温、熱負荷、回転数、風量、エキスパンションバルブの状態、コンプレッサーの制御方式などによっても変わります。

この記事では、高圧側・低圧側の位置、代表的な圧力パターンから考えられる原因候補、実車の診断で確認したい項目を解説します。

高圧側・低圧側はどこ?

一般的なエキスパンションバルブ方式では、冷媒はコンプレッサー、コンデンサー、レシーバー、エキスパンションバルブ、エバポレーターを通り、コンプレッサーへ戻ります。

高圧側

コンプレッサーの吐出側から、エキスパンションバルブの入口まで。
コンデンサーやレシーバーは、この高圧側にあります。

低圧側

エキスパンションバルブの出口から、コンプレッサーの吸入側まで。
エバポレーターは、この低圧側にあります。


コンプレッサー、コンデンサー、レシーバー、エキスパンションバルブ、エバポレーターを通る冷媒の流れと、高圧側・低圧側を示した図
図1:エキスパンションバルブ方式の代表的な冷凍サイクル。コンプレッサーで加圧され、エキスパンションバルブで減圧されます。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

コンプレッサーは低圧のガス冷媒を吸入し、圧縮して高温・高圧のガス冷媒として送り出します。

コンデンサーで放熱・凝縮した冷媒は、高圧の液冷媒としてエキパンへ送られます。エキパンで減圧された後は、エバポレーターで熱を吸収しながら蒸発し、コンプレッサーへ戻ります。

なぜ高圧と低圧をセットで測るのか?

両方の圧力を確認すると、圧縮・放熱・凝縮・減圧・蒸発などがどのような状態にあるかを考える手掛かりになります。

  • 高圧側:コンプレッサーの圧縮や、コンデンサーの放熱・凝縮状態を考える材料
  • 低圧側:冷媒の供給、蒸発、エバポレーターでの吸熱状態を考える材料
  • 両者の組み合わせ:重点的に点検する箇所を絞り込む材料

ただし、冷凍サイクルの各部は互いに影響します。高圧側の測定値が高圧側の部品だけ、低圧側の測定値が低圧側の部品だけを表すわけではありません。

正常圧力は、車両と測定条件で変わる

すべての車両に共通する一組の圧力値だけで、正常・異常を判断することはできません。圧力に影響する主な条件には、次のものがあります。

  • 外気温と車室内の熱負荷
  • 冷媒の種類と充填量
  • エンジン回転数
  • ブロワ風量
  • コンデンサーへの風量と冷却ファンの作動
  • エキスパンションバルブの状態
  • コンプレッサーの種類・制御方式

可変容量コンプレッサーなど、制御によって圧縮量が変わるシステムでは、制御状態もあわせて確認します。


実車では、対象車両の整備要領書に記載された測定条件と基準値を優先します。

代表的な4つの圧力パターン

ここでいう「高い・低い」は、対象車両の指定条件における基準と比較したものです。以下は原因候補を考えるための傾向で、故障部品を確定する表ではありません。


高圧側と低圧側の圧力の組み合わせを4パターンに分け、考えられる原因と診断時の注意点をまとめた図
図2:高圧・低圧の代表的な組み合わせと原因候補。圧力パターンだけで断定せず、温度・冷媒量・風量・制御状態とあわせて判断します。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

① 高圧・低圧とも高い

代表的な確認項目は、冷媒の過充填やコンデンサーの放熱不足です。

コンデンサーフィンの汚れ・詰まり、冷却ファンの作動不良などで風量が不足すると、十分に放熱・凝縮できず、高圧側が上がる原因になります。規定量を超えた冷媒充填でも、圧力が高くなる場合があります。

② 高圧・低圧とも低い

冷媒不足が代表的な原因候補の一つです。ただし、圧力だけで不足と確定せず、測定条件や他の点検結果と照合します。

不足が確認された場合は、補充だけで終わらず、ホース・配管・Oリング・接続部・コンデンサー・エバポレーター・コンプレッサー周辺などから漏れていないかを調べます。

③ 高圧が低く、低圧が高い

コンプレッサーが十分に圧縮できていない可能性を考えます。圧縮能力が低下すると、低圧側を十分に下げられず、高圧側も十分に上げられない場合があります。

ただし、エキパンの開きすぎや制御異常などでも似た傾向が出る場合があります。コンプレッサー本体の故障と即断せず、作動・制御状態も確認します。

④ 高圧が高く、低圧が低い

高圧側から低圧側へ、冷媒が十分に流れていない可能性を考えます。

  • エキスパンションバルブの作動不良
  • レシーバードライヤーの流路制限
  • 液配管などの流路制限

なお、流路制限があっても、高圧側の挙動は条件によって異なります。エキパンが詰まれば必ず高圧が上がる、という判断はできません。

高圧が高いことと、コンプレッサーの圧縮不足は別です

高圧側が高すぎる場合は、まずコンデンサーの放熱・冷却ファン・冷媒の過充填を確認し、整備履歴によっては空気などの非凝縮ガスの混入も調べます。一方、圧縮不足では、高圧側を十分に上げられず、低圧側を十分に下げられない傾向が見られます。「高圧が高いからコンプレッサー交換」とは判断せず、どちらの状態なのかを切り分けることが大切です。

高圧が高くなる原因と確認箇所はこちら

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表(原因候補の参考。実車の数値・手順は車両メーカーの整備要領を優先します)。

圧力を見たあと、どこを確認する?

例えば、高圧・低圧がどちらも低いときは冷媒不足を疑います。そこから配管接続部の油染みや漏れ検知器での反応を確認すると、修理する箇所を絞れます。圧力に、温度・霜・漏れ跡を組み合わせて点検します。

表の「高い・低い」は、車両指定の測定条件と基準値に対する比較です。整備工場での点検の目安としてご覧ください。

圧力・症状 疑う状態 次に確認する箇所
高圧・低圧とも低く、冷えが弱い 冷媒不足 接続部・シール部などの油染みと漏れ。冷媒量の確認方法は車両の指定に従う。
高圧・低圧とも高い 過充填、コンデンサーの放熱不足 規定充填量と作業記録、フィンの汚れ、冷却ファンの作動・風量。
低圧が高く、低圧ホースやサービスバルブ付近が異常に冷たい エキパンの開きすぎ、外付け感温筒の接触不良 配管温度、エキパンの作動。感温筒がある構造では取付状態も確認。
低圧が低く、レシーバー前後に温度差がある レシーバーの詰まり 入口・出口の温度。詰まりが著しい場合は出口側配管に霜が付くことがある。
高圧が低く、停止直後に高圧・低圧が急速に均圧する コンプレッサー内部の弁の損傷・異物噛み込みなど 運転中の圧力差、実際の駆動・制御状態と停止後の変化を記録し、指定の圧縮点検を行う。

低圧配管の結露だけでは異常とはいえません。冷え具合と圧力を合わせ、どの位置が異常に冷たいか、どこに霜が付くかまで確認します。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

停止後に圧力がそろうまでの変化も記録する

一般に、コンプレッサーが圧縮を始めると低圧側は下がり、高圧側は上がります。停止後はその差が小さくなり、均圧に向かいます。停止時の値や均圧までの時間は車両構造や温度などで変わるため、共通の圧力値・秒数で交換を決めることはできません。

圧縮不足が疑われる場合は、運転中の高圧・低圧と、停止直後からの変化を一緒に記録してください。点検を依頼するときも、この記録が原因確認の手掛かりになります。

症状に合う部品の確認へ

最初は冷えるのに、しばらくすると冷えなくなる場合

入庫直後は冷えていても、時間がたつと症状が出ることがあります。この場合は、冷えている時と、冷えなくなった時の状態を比較することが大切です。再始動すると冷える場合も、再始動する前の状態が原因を探す手掛かりになります。

整備工場へ伝えると役立つ情報

冷えなくなるまでの時間、停車中か走行中か、風の強さも弱くなるか、再始動や時間を置くと回復するかを伝えてください。

① 冷えなくなった時、コンプレッサーは作動しているか

まず、その時点のコンプレッサーの駆動・制御状態を確認します。クラッチ式では、プーリーが回っているだけで作動中とは判断せず、クラッチがつながっているかを確認します。停止している場合は、電源・リレーなどの電気系統と、車両側からの作動指令を調べます。

停止中の圧力変化を、作動中の圧縮能力と混同しないことが重要です。可変容量式などは、対象車両の整備要領に従って制御状態も確認します。

② 作動しているなら、高圧・低圧の変化を比較する

  • 低圧が高め、高圧が低めになった:十分な圧力差を作れているかを確認します。駆動・制御状態や測定条件を確かめたうえで、コンプレッサーの圧縮能力を点検します。
  • 両方の圧力が高くなった:コンデンサーの通風、冷却ファンの作動、冷媒の充填量を確認します。冷えている間だけでなく、症状が出た時にもファンが正常に作動しているかを確認します。
  • 低圧が下がり、特定の場所に霜や大きな温度差が出た:エキパンやレシーバーなどの流れを確認します。詰まりの判断には、圧力とともに霜の位置・配管温度を使います。高圧が低いという結果だけでは、詰まりの場所までは決まりません。

③ 風の量も弱くなっていないか

「風は出るがぬるい」のか、「風そのものが弱くなった」のかも確認します。エバポレーターが凍結すると、空気が通りにくくなることがあります。風量が落ちている場合は、圧力だけでなく、エバポレーターの霜付きや送風系統も点検します。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表。圧力・霜・温度差の診断項目をもとに、確認の順序を整理しています。

冷媒不足が確認されたら、補充だけで終わらせない

漏れが残ったままでは、補充して冷えるようになっても再び冷媒が減ります。漏れ方によっては冷媒とともにオイルも失われるため、漏れ箇所を修理し、車両・部品メーカーの指定に従って冷媒とオイルを管理します。

冷媒漏れに補充だけで対応するリスクと、修理時の確認ポイント

コンプレッサーが作動しない場合の確認

A/CをONにしても作動しない場合、コンプレッサー本体以外に原因があることもあります。

システムは圧力スイッチや圧力センサーなどを使って状態を監視しています。冷媒不足などで圧力が低すぎる場合や、放熱不足・過充填などで異常に高い場合は、保護のため作動を停止することがあります。

車両の構成に応じて、次の項目も確認します。

  • ヒューズ・リレー
  • マグネットクラッチ・クラッチコイル
  • 配線・コネクター
  • 圧力センサー・温度センサー
  • ECUの制御状態
  • 可変容量制御バルブ

停止時の圧力だけで冷媒量は判断できない

A/C停止後は、時間の経過とともに高圧側と低圧側の圧力差が小さくなっていきます。

停止時の圧力は冷媒温度などの影響を受けるため、その数値だけで充填量を正確に判断することはできません。

冷媒量の確認・調整は対象車両の指定に従い、必要に応じて回収したうえで、規定量を重量管理して充填します。

サイトグラスの見え方だけでも判断しない

サイトグラス付きの車両では、冷媒の流れや気泡を確認できます。ただし、気泡がないことだけで、適正量とは判断できません。

サブクールコンデンサーを採用したシステムなどでは、サイトグラスの見え方だけで規定量を判断できない場合があります。車両メーカー指定の充填量と点検方法を優先します。

故障診断で確認する項目

一つの数値や症状で交換部品を決めず、測定条件をそろえ、複数の情報から原因を絞り込みます。

基本的な確認項目

  • 外気温・回転数・風量などの測定条件
  • 高圧・低圧の状態
  • 配管温度・吹出口温度
  • コンデンサーの放熱状態
  • 冷却ファンの作動
  • 冷媒量と冷媒漏れ
  • エキスパンションバルブの状態
  • レシーバーや配管の流路制限
  • コンプレッサーの圧縮・制御状態
  • 電気系統・センサー類

このリストは、必ず上から順番に作業するという意味ではありません。車両や症状によって、電気制御やファン作動などを早い段階で並行して確認する場合もあります。

コンプレッサー交換前に、故障原因まで確認する

原因を確認せずにコンプレッサーだけを交換しても、冷え不良が改善しない場合があります。

また、回路内に異常が残っていれば、新しいコンプレッサーにも負担をかける可能性があります。

  • コンデンサーの放熱不良
  • 冷却ファン不良
  • 冷媒の過充填・不足
  • エキスパンションバルブの異常
  • レシーバードライヤーや配管の流路制限
  • 回路内の異物や水分
  • コンプレッサーオイルの状態

再故障を防ぐには、壊れた部品の確認に加えて、なぜ壊れたのかを調べることが重要です。

まとめ|高圧・低圧をほかの点検結果と組み合わせる

  • コンプレッサー吐出側からエキパン入口までが高圧側です。
  • エキパン出口からコンプレッサー吸入側までが低圧側です。
  • 正常圧力は、車両と測定条件によって異なります。
  • 圧力の組み合わせは、確認箇所を絞り込むための手掛かりになります。
  • コンプレッサーが動かない場合も、保護制御や電気系統を確認します。
  • 停止時圧力やサイトグラスだけでは、適正冷媒量を判断できません。
  • 圧力・温度・冷媒量・風量・制御状態を総合して診断します。

部品交換の前に、冷凍サイクル全体の状態を確認し、原因を絞り込むことが重要です。

車種ごとの点検条件・基準値について

本記事は、カーエアコンの故障診断における代表的な考え方を解説しています。圧力値・制御方法・部品構成は、車種・年式・冷媒・外気温・コンプレッサー方式などによって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書およびメーカー指定の点検条件・基準値を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンのエバポレーターとは?冷える仕組み・除湿・凍結・故障症状を解説

カーエアコンのエバポレーターをイメージした画像。冷房・除湿の仕組みと、凍結や故障症状の確認ポイントを紹介。

カーエアコン技術編・第6話

カーエアコンで、車室内へ送る空気から熱を吸収する熱交換器がエバポレーター(蒸発器)です。

内部を流れる低温・低圧の冷媒が蒸発するときに、通過する空気から熱を吸収します。この働きによって、車室内へ送る空気を冷やしています。


冷房には、冷媒が正常に流れることと、エバポレーターに十分な空気が通ることの両方が必要です。

この記事では、エバポレーターの構造と冷える仕組み、除湿・排水、凍結、臭い、冷媒漏れ、故障診断の確認ポイントを解説します。

エバポレーターはどこにある?

多くの車両では、ダッシュボード内部のHVACユニットに組み込まれています。

HVACはHeating・Ventilation・Air Conditioningの略で、暖房・換気・空調を表します。車両では、ブロワ、フィルター、エアミックスダンパ、温度センサーなどと組み合わせて、温度や風量、吹き出し方向を調整します。

基本構造は、冷媒が流れるチューブとフィン

エバポレーターは、冷媒が流れるチューブと、空気との熱交換を助ける薄いフィンなどで構成されています。限られたスペースで効率よく熱交換できるように作られています。

エバポレーターで空気が冷える仕組み

コンデンサーで液化された高圧の冷媒は、エキスパンションバルブで減圧されます。減圧後は、低温・低圧の液体とガスが混在した状態でエバポレーターへ入ります。

液冷媒が気体へ変化するには、熱が必要です。エバポレーターを通過する空気からその熱を吸収するため、空気の温度が下がります。


エバポレーターを通る冷媒と空気の流れ、フィンとチューブの構造、冷房・除湿の役割、よくあるトラブルをまとめた図
図1:エバポレーターの仕組みと役割。冷媒の蒸発によって空気の熱を吸収し、冷房と除湿を行います。実際の構造や配置は車種によって異なります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。
空気が冷えるまでの流れ

  1. ブロワの送風により、空気がエバポレーターを通る
  2. 内部の冷媒が蒸発しながら、空気の熱を吸収する
  3. 温度が下がった空気が、吹出口から車室内へ送られる

冷えていても、風が十分に通らなければ冷房能力は落ちる

エバポレーター内部で冷媒が蒸発していても、通過する空気量が少なければ、車室内へ十分な冷気を送れません。

「冷えない」「風が弱い」という場合は、冷媒回路に加えて、次の空気側の項目も確認します。

  • キャビンフィルターの詰まり
  • ブロワモーターの回転不足
  • ブロワレジスターや制御系の異常
  • エバポレーターフィンの汚れ
  • エバポレーターの凍結
  • ダクトの詰まり・外れ
  • ダンパの作動不良

キャビンフィルターの詰まりも確認する

フィルターが汚れて空気を十分に通せなくなると、ブロワが正常に回っていても、エバポレーターを通過する風量が減ります。

その結果、吹出口の風量や冷房性能が低下する場合があります。風が弱いという症状だけでブロワモーター故障と決めつけず、フィルターやフィンの汚れも確認します。

除湿と結露水の排出

湿った空気が冷たいエバポレーターを通ると、条件に応じて空気中の水蒸気が結露し、水滴になります。空気から水分が取り除かれることで、除湿が行われます。

結露水は空調ケース内のドレン部へ集まり、ドレンホースを通って車外へ排出されます。


A/C使用時に、ドレンから透明な結露水が出るのは正常な現象です。

窓の曇り取りにも役立つ

A/Cで除湿した空気をガラスへ送ると、曇り取りに役立ちます。必要に応じてヒーターコアで再加熱し、乾燥した暖かい空気をフロントガラスへ送る制御も行われます。

エバポレーターが凍る「フロスト」とは?

エバポレーターの温度が下がりすぎると、水分が凍ってフィンの間に霜や氷が付着します。この状態をフロストと呼びます。

氷が空気の通り道を塞ぐと風量が落ち、冷えにくくなります。

凍結時に見られる症状の例

  1. 最初はよく冷える
  2. 徐々に凍結し、フィンの間が氷で塞がれる
  3. 吹出口の風量が弱くなり、冷えなくなる
  4. A/Cを止めて氷が溶けると、再び冷える

「しばらく使うと風が弱くなり、休ませると戻る」という場合は、凍結の有無も確認します。

凍結の原因は一つではない

  • エキスパンションバルブの作動異常
  • 冷媒流量の制御異常
  • エバポレーター温度センサーの異常・取り付け不良
  • キャビンフィルターの詰まり
  • ブロワの風量不足
  • 凍結防止制御の異常

凍結したという理由だけで、エバポレーター本体の故障とは判断できません。風量や温度検出、冷媒状態、制御系を含めて確認します。


停止すれば冷房が戻る場合でも、凍結を繰り返すときは原因を確認することが重要です。

温度センサーと凍結防止制御

多くの車両では、サーミスタなどの温度センサーでエバポレーターの温度を監視しています。

温度が下がりすぎると、コンプレッサーを一時停止したり、可変容量コンプレッサーの吐出量を減らしたりして、凍結を防ぎます。

センサーの取り付け位置がずれている場合や、正しい温度を検出できない場合は、凍結防止制御が正常に働かなくなる可能性があります。

EPRを使用する方式もある

車種やシステムによっては、EPR(Evaporator Pressure Regulator:エバポレーター圧力調整弁)を使用します。

EPRはエバポレーター側の圧力が必要以上に下がらないよう調整し、蒸発温度の低下を抑えるための装置です。すべての車両に使用されているわけではありません。

エバポレーターからの冷媒漏れ

エバポレーターも冷媒が流れる部品のため、腐食・振動・経年劣化・損傷などによって漏れが発生する場合があります。

多くの車両ではダッシュボード内部の空調ケースに収納されているため、コンデンサーやエンジンルーム内の配管よりも目視しにくい部品です。

漏れの確認方法

対象車両や設備、メーカー指定に応じて、次のような確認を組み合わせます。

  • 電子式リークディテクターによる検査
  • 対象車両に適したリーク検査
  • メーカーが認める場合のUV蛍光剤による確認
  • ドレン付近での冷媒漏れ検知
  • 冷媒量の減少の確認

冷媒量の減少だけでは、漏れ箇所を特定できません。コンデンサー、ホース、配管、Oリング、コンプレッサーなど、回路全体を確認します。

エアコンから嫌な臭いがする場合

結露で湿ったエバポレーターにホコリや汚れが付着し、条件がそろうと、カビや細菌などが増殖して臭いの原因になる場合があります。

ただし、臭いがするからといって、すぐにエバポレーター交換が必要とは限りません。

  • キャビンフィルターの状態
  • エバポレーター表面の汚れ
  • ドレンの排水状態
  • 空調ケース内部の汚れ
  • 適切な方法によるエバポレーター洗浄の可否

フィルター交換後も臭いが残るときの点検箇所や、清掃・交換の相談については、第20話「車のエアコンが臭い|フィルター交換で消えない臭いとエバポレーターの点検」をご覧ください。

洗浄方法と薬剤の選定にも注意

薬剤によっては、アルミ材や表面処理・コーティングへ悪影響を与え、腐食の原因になる可能性があります。


洗浄には、対象車両・部品に適合した方法と薬剤を使用してください。

交換作業が大掛かりになりやすい理由

エバポレーターはダッシュボード内部に組み込まれていることが多く、交換するためにダッシュボードや周辺部品を大きく分解する車種があります。

そのため、部品代に加えて分解・組み付けの作業工賃が大きくなる場合があります。交換前に、漏れや不具合の原因を適切に確認することが重要です。

エバポレーター側の状態はコンプレッサーにも関係する

エバポレーターへの風量が極端に不足すると、空気から冷媒へ伝わる熱量が減ります。

一般的なTXV方式では、エバポレーター出口の冷媒状態に応じて、エキスパンションバルブが冷媒流量を絞る方向へ作動します。運転条件によっては、低圧側の圧力が低下する場合があります。

風量不足が冷媒側へ影響する流れ

  1. エバポレーターを通る空気が少なくなる
  2. 空気から受け取る熱量が減る
  3. 蒸発できる冷媒量が減る
  4. エキパンの開度や冷媒循環状態が変わる

冷媒・オイルの循環状態まで悪化すると、コンプレッサーの潤滑や冷却条件へ影響する可能性があります。コンプレッサー故障の原因を調べる際も、エバポレーター側の風量や熱交換状態を確認します。

冷え不良は「冷媒側」と「空気側」の両方から診断する

冷え不良の原因には、冷媒不足・過充填、コンプレッサーの能力不足、コンデンサーの放熱不足、冷却ファン不良、レシーバーやエキパンの異常、配管の流路制限などがあります。

さらに、エバポレーターの凍結や風量不足、フィルターの詰まり、ブロワ・ダンパ・温度センサー・制御系の異常も確認します。


冷媒が正常に流れているか、空気が十分に通っているかを、あわせて確認します。

高圧・低圧、冷媒量、配管温度、吹出口温度、風量、エバポレーター温度、ブロワ、フィルター、ダンパなどを総合して判断します。

まとめ|冷媒と空気が熱交換する重要な部品

  • エバポレーターは、冷媒の蒸発によって空気から熱を吸収します。
  • 十分な冷房能力には、冷媒の状態と風量の両方が重要です。
  • フィルターの詰まりやブロワ系統の異常でも、冷えや風量が低下します。
  • 結露によって除湿し、水分はドレンから車外へ排出されます。
  • 凍結を繰り返す場合は、温度検出・風量・冷媒状態・制御系を確認します。
  • 冷媒漏れは、エバポレーター以外の部品も含めて調べます。
  • 臭いがする場合も、汚れや排水状態を確認してから対処方法を判断します。
  • 冷え不良という症状だけで、交換する部品を決めないことが重要です。
車種ごとの構造・指定値について

本記事は代表的なカーエアコンシステムを中心に解説しています。エバポレーターの構造、凍結防止方式、温度制御、EPRの有無、冷媒、適正圧力・温度などは、車種・年式・メーカー・システム構成によって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書およびメーカー指定値を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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エキスパンションバルブとは?エキパン不良の症状・エバポレーターの仕組みと交換時の注意点

カーエアコンのエキスパンションバルブをイメージした画像。減圧・流量調整の役割と交換時の確認ポイントを紹介。

カーエアコン技術編・第5話

コンデンサーやレシーバーを通過した高圧の液冷媒が、次に向かうのがエキスパンションバルブ(エキパン)です。


エキスパンションバルブは、高圧の液冷媒を減圧し、エバポレーターへ送る冷媒量を調整する部品です。

詰まり・固着・開きすぎなどが起きると、冷え不良や圧力異常、液戻りなどにつながる場合があります。

この記事では、エキパンの役割と不良時の症状、エバポレーターの働き、過熱度や凍結の仕組み、コンプレッサー交換時にエキパンを同時交換する理由を解説します。

エキスパンションバルブの役割

コンデンサーで放熱・凝縮された冷媒は、高圧の液冷媒としてエキスパンションバルブへ送られます。

エキパンは冷媒を狭い流路に通して減圧し、低圧・低温の状態でエバポレーターへ供給します。

冷媒の状態変化

  1. 高圧の液冷媒がエキパンへ入る
  2. 狭い流路を通って減圧される
  3. 一部の液冷媒が気化する
  4. 低圧・低温の液体とガスが混在した状態で、エバポレーターへ入る

減圧すると、なぜ低温になる?

冷媒が高圧側から低圧側へ減圧されると、一部の液冷媒が気化し、低温の液体とガスが混ざった状態になります。

圧力が低くなることで、エバポレーター内では冷媒が低い温度で蒸発できるようになります。

冷房負荷に応じて冷媒量を調整する

一般的な感温式エキスパンションバルブ(TXV)は、エバポレーター出口側の冷媒状態に応じて開度を変え、送り込む冷媒量を調整します。

冷房負荷に対して冷媒が少なすぎると、エバポレーター全体を十分に使えず、冷房能力が低下します。反対に多すぎると、冷媒が蒸発しきれず、液戻りのリスクが高まります。

過熱度とは?液戻りとどう関係する?

過熱度は、ガス冷媒の温度が、その圧力に対応する蒸発温度(飽和温度)より何度高いかを表します。


過熱度 = ガス冷媒の温度 − その圧力に対応する飽和温度

エバポレーターでは、液冷媒が熱を吸収して蒸発します。蒸発し終えたガス冷媒がさらに熱を受けると、過熱度が生じます。

冷媒の供給が過剰になると、十分に蒸発しきれず、過熱度が不足する場合があります。その状態では、液冷媒がコンプレッサー側へ戻る可能性に注意が必要です。

適正な過熱度や測定方法は車種・システム・運転条件によって異なります。固定の数値だけで判断せず、対象車両の整備要領書を確認します。

エキパン不良で起こる症状


エキスパンションバルブの役割、詰まり・閉じすぎ・開きすぎによる影響、交換時の確認事項をまとめた図
図1:エキスパンションバルブ不良による影響の概念図。圧力や症状の出方は、車両や運転条件によって異なります。図中の同時交換条件は、太田美品通商の条件です。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

① 詰まり・閉じすぎ

流路が詰まったり、必要以上に閉じた状態になったりすると、エバポレーターへ供給される冷媒量が不足します。

  • 低圧側の圧力が低下しやすくなる
  • エバポレーター全体を十分に使えなくなる
  • 吹出口温度が下がらず、冷房能力が低下する
  • 条件によっては高圧側の圧力が上昇する場合がある

ただし、詰まると必ず高圧が上がるわけではありません。冷媒が上流側に滞留する条件では高圧が上昇することがありますが、詰まりが強く、循環量が極端に減った場合などは、高圧側も十分に上がらないことがあります。

圧力の出方だけで、エキパン不良と断定しないことが重要です。

高圧・低圧、冷媒量、配管温度、霜付き、エバポレーターの風量などを組み合わせて判断します。

② 開きすぎ・開いたままの固着・制御不良

エキパンが必要以上に開くと、エバポレーターへ冷媒が過剰に供給される場合があります。

  • 冷媒が十分に蒸発しきれなくなる
  • 過熱度が不足する
  • 低圧側の圧力が高めになる場合がある
  • 冷えが弱くなったり、不安定になったりする
  • 液冷媒がコンプレッサー側へ戻るリスクが高まる

コンプレッサーは、基本的にガス冷媒を吸入する前提で作動します。液冷媒が大量に戻ると、液圧縮や潤滑状態の悪化により、内部へ大きな負担を与える可能性があります。

なお、エバポレーターの凍結は、開度だけで判断できません。蒸発圧力、風量、温度センサー、凍結防止制御なども確認します。

低圧と配管温度から、開きすぎ・詰まりを確認する

低圧が高く、低圧ホースやサービスバルブ付近が異常に冷たい場合は、エキパンの開きすぎを確認します。外付け感温筒を使う構造では、感温筒と配管の接触状態も点検対象です。通常の結露と、異常な冷え・霜付きを区別して記録します。

低圧が低く、エキパン付近に霜が付く場合は、詰まりや凍結を確認します。配管温度、冷媒量、エバポレーター側の風量と合わせて、冷媒の供給が不足している箇所を調べます。

点検時は「霜があった」だけでなく、エキパン本体・入口側・出口側のどこに出たかを記録してください。確認できた場所が分かる写真と、同時に測った高圧・低圧があると、相談時に状態を伝えやすくなります。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

エバポレーターは車室内の熱を吸収する

エバポレーターは、車室内側の空調ユニット内部に設置される熱交換器です。

エキパンを通過した低圧・低温の冷媒が入り、空気から熱を吸収しながら蒸発します。ブロワによって送られた空気は、エバポレーターを通る際に冷やされ、車室内へ送られます。


エバポレーターでは、冷媒が蒸発するときに空気の熱を吸収しています。

冷房と同時に除湿も行う

湿った空気が冷たいエバポレーターを通ると、条件に応じて空気中の水分がフィン表面で結露します。この水がドレンホースから車外へ排出されることで、除湿も行われます。

エアコン作動中や作動後に車両の下へ落ちる水は、正常な結露水である場合があります。

エバポレーターが凍る「フロスト」

エバポレーターの表面温度が下がりすぎると、水分が霜や氷になって付着します。この状態をフロストと呼びます。

フィンが氷で覆われると空気の通り道が狭くなり、吹出口の風量や冷房能力が低下します。

凍結時に見られる症状の例

  1. 最初はよく冷える
  2. エバポレーターが徐々に凍結する
  3. 吹出口の風量が弱くなり、冷えにくくなる
  4. エアコンを止めて氷が溶けると、再び冷える

こうした症状では、エキパンだけでなく、エバポレーター温度センサー、ブロワ風量、キャビンフィルター、冷媒量、制御系も確認します。

凍結を防止する仕組み

車種やシステムによって、次のような装置や制御を用いて、エバポレーター温度や蒸発圧力が下がりすぎないようにしています。

  • エバポレーター温度センサー/サーミスタ
  • マグネットクラッチのON・OFF制御
  • 可変容量コンプレッサーの制御
  • EPR(エバポレーター圧力調整弁)

すべての車両に同じ装置が備わっているわけではありません。対象車両の構成を確認します。

固定オリフィスチューブを使う方式もある

すべてのカーエアコンが、開度を変えるエキスパンションバルブを使用しているわけではありません。

固定オリフィスチューブは、固定された小孔で冷媒を減圧します。一般的なTXVのように開度を変えて流量を調整せず、アキュムレーターやコンプレッサー制御などと組み合わせて冷凍サイクルを構成します。

コンプレッサー交換時にエキパンも交換する理由


太田美品通商では、A/Cコンプレッサー交換時に、レシーバーとエキスパンションバルブの同時交換を最低限必要としています。

① 細い流路に異物が入り込む可能性がある

コンプレッサーが焼き付いたり内部破損したりすると、金属粉、摩耗粉、劣化オイル、スラッジなどが冷媒回路へ流出する場合があります。

エキパン内部には、流量を調整する狭い流路やニードル機構があります。異物が入り込むと、詰まり・固着・作動不良の原因になる可能性があります。

② 細かな内部機構を十分に洗浄することが難しい

冷媒回路をフラッシングする場合でも、エキパンを通したまま回路全体を洗浄するのではなく、取り外しや交換を含め、メーカー指定の手順に従います。

エキパンの細かな内部機構に異物が残っていないことを、洗浄だけで確実に確認するのは困難です。

③ エキパンの異常が、元の故障原因だった可能性がある

コンプレッサー故障によってエキパンが汚染される場合だけでなく、エキパンの異常が先に発生していた可能性も考えます。

詰まり・閉じすぎの場合

冷媒循環量が減り、冷媒やオイルの戻り、コンプレッサーの潤滑・冷却条件が悪化する可能性があります。

開きすぎ・制御不良の場合

冷媒の過剰供給によって過熱度が不足し、液戻りによるコンプレッサーへの負担が増す可能性があります。

新しいコンプレッサーを取り付ける際には、異物や作動不良などの原因を残さないことが重要です。

同時交換とあわせて、冷凍サイクル全体を確認する

レシーバーとエキパンを交換すれば、すべての原因が解消するわけではありません。コンプレッサー故障時には、次の項目も確認します。

  • コンデンサー内部の汚染と放熱状態
  • 冷却ファンの作動
  • 異常高圧の有無
  • 冷媒の過充填・不足
  • コンプレッサーオイルの量・種類
  • 配管内部の詰まり
  • 水分や空気の混入
  • エバポレーター側の状態

壊れた部品を交換するだけでなく、なぜ壊れたのかを確認することが再故障防止につながります。

冷え不良だけでエキパン不良と決めつけない

冷え不良は、冷媒不足・過充填、コンプレッサーの能力不足、コンデンサーの放熱不足、冷却ファン不良、レシーバーの詰まり、配管の流路制限などでも起こります。

また、エバポレーターの凍結、ブロワ風量不足、各種センサーや制御の異常も確認が必要です。


圧力値や症状を、一つだけ見て故障部品を断定しないことが重要です。

高圧・低圧、冷媒量、配管温度、霜付き、吹出口温度、風量などを総合して診断します。

まとめ|エキパンは減圧と冷媒流量の調整を担う

  • エキパンは高圧の液冷媒を減圧し、エバポレーターへ送る量を調整します。
  • 詰まりでは冷媒供給が不足し、低圧側が低下しやすくなります。
  • 詰まり時の高圧側の挙動は、循環量や運転条件などで変わります。
  • 開きすぎでは、過熱度不足や液戻りに注意が必要です。
  • エバポレーターでは、冷媒の蒸発による吸熱と、結露による除湿が行われます。
  • 凍結による風量低下では、温度センサー・風量・制御系なども確認します。
  • 当社では、コンプレッサー交換時にレシーバーとエキパンの同時交換を最低限必要としています。
  • 再故障防止には、冷凍サイクル全体から原因を確認することが重要です。
次回のカーエアコン技術編

第6話:カーエアコンのエバポレーターとは?
空気を冷やす仕組みと除湿、凍結による風量低下、点検時の確認ポイントを解説します。

車種ごとの構造・指定値について

本記事は、代表的な感温式エキスパンションバルブを使用するカーエアコンを中心に解説しています。バルブ構造、オリフィスチューブ方式、圧力挙動、過熱度、凍結防止制御などは、車種・年式・冷媒・システム構成・運転条件によって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書およびメーカー指定値を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンのレシーバータンクとは?役割とコンプレッサー交換時に同時交換が必要な理由

レシーバータンクのイメージと、気液分離・一時貯蔵・ろ過・乾燥の4つの役割を紹介する画像。

カーエアコンの冷凍サイクルには、レシーバータンク(レシーバードライヤー)と呼ばれる部品があります。

筒状のタンクをイメージする方も多いかもしれませんが、単に冷媒をためるだけの部品ではありません。


レシーバータンクは、液冷媒の一時貯蔵・気液分離・ろ過・乾燥を行い、エキスパンションバルブへ液冷媒を安定して供給する重要部品です。

内部の乾燥剤には吸湿能力の限界があり、フィルターには異物が蓄積する可能性があります。そのため、修理時には消耗部品として交換を考える必要があります。

特にコンプレッサー交換時は、古いレシーバータンクに異物や水分を残したまま、新しいコンプレッサーを取り付けてしまわないことが重要です。

この記事では、レシーバータンクの役割、同時交換が重要な理由、一体型の構造、アキュムレーターとの違いを解説します。

レシーバータンクは冷凍サイクルのどこにある?

一般的なエキスパンションバルブ(TXV)方式では、レシーバータンクはコンデンサーの後、エキスパンションバルブの前に配置されます。

別体レシーバータンクを使用する代表的な流れ

  1. コンプレッサーで冷媒を圧縮する
  2. コンデンサーで放熱・凝縮する
  3. レシーバータンクを通る
  4. エキスパンションバルブで減圧する
  5. エバポレーターで車室内の熱を吸収する
  6. コンプレッサーへ戻る

レシーバータンクがあるのは高圧側です。コンデンサーで凝縮された冷媒を受け取り、エキスパンションバルブへ液冷媒を送ります。

エキスパンションバルブの入口までは高圧側で、冷媒が低圧になるのは、バルブを通過して減圧された後です。


カーエアコンのレシーバータンクの4つの役割、内部構造のイメージ、同時交換の理由、アキュムレーターとの違いをまとめた図
図1:レシーバータンクの役割と同時交換の重要性。内部構造は車種によって異なります。図中の同時交換条件は、太田美品通商の条件です。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

レシーバータンクの4つの役割

① 液冷媒を一時的に貯蔵する

コンデンサーで凝縮された液冷媒を一時的に保持します。冷房負荷や運転条件によって冷媒の状態が変化するなかで、エキスパンションバルブへの安定した供給を支えます。

② 気体と液体を分離する

冷媒を気体と液体に分離し、エキスパンションバルブへ液冷媒を送り出します。バルブ入口へ高圧の液冷媒を安定して供給することが、冷凍サイクルの安定につながります。

③ 異物をろ過する

内部のフィルターは、冷媒回路内の異物を捕捉します。故障や摩耗によって発生した金属粉・摩耗粉・スラッジなどが、エキスパンションバルブなどの細い流路へ流れるのを抑えます。

④ 冷媒回路内の水分を吸着する

内部には乾燥剤(デシカント)が入っており、冷媒回路内の水分を吸着します。

水分の混入は、腐食やオイル劣化のほか、条件によっては膨張部付近での氷結や流路障害などにつながる可能性があります。

レシーバータンクを消耗部品として扱う理由

消耗部品というのは、タンク本体がタイヤのように摩耗して減っていくという意味ではありません。重要なのは、内部の乾燥剤とフィルターの状態です。

  • 乾燥剤:吸着できる水分量には限界があります。
  • フィルター:冷媒回路内の異物が蓄積している可能性があります。

乾燥剤は回路内の水分を吸着し、回路を開放して外気に触れた場合にも湿気を吸着します。使用期間や開放履歴などによって、内部の状態は変わります。

外観がきれいでも、乾燥剤やフィルターが正常とは限りません。

見た目だけで再使用を判断せず、故障状況や対象車両の整備要領、交換条件を確認することが重要です。

コンプレッサー交換時に同時交換が重要な4つの理由

コンプレッサーを新品やリビルト品へ交換する際は、元のコンプレッサーが故障した原因と、故障によって回路内に残った汚染物を確認する必要があります。

① 故障したコンプレッサー由来の異物が残ることがある

コンプレッサーが焼き付いたり内部破損したりすると、金属粉・摩耗粉・劣化オイルなどが冷媒回路へ流出する場合があります。

レシーバータンクのフィルターが異物を捕捉していれば、古いタンクの再使用によって、汚染物を回路内に残す可能性があります。

② 乾燥剤の吸湿能力には限界がある

コンプレッサー交換では冷媒回路を開放するため、外気中の湿気が侵入する可能性があります。

すでに使用された乾燥剤の状態も考慮し、新しい乾燥剤を備えた部品へ交換することが、冷凍サイクルを正常な状態へ戻すうえで重要です。

③ 内部を洗浄して再使用する部品ではない

冷媒回路の一部では、構造やメーカー指定に応じてフラッシングを行う場合があります。

ただし、レシーバータンクには乾燥剤とフィルターが内蔵されています。内部を洗浄して新品同様の状態へ戻し、再使用するという考え方の部品ではありません。

④ 新しいコンプレッサーの再故障を防ぐため

新品やリビルト品へ交換しても、異物・水分・流路制限の原因が回路内に残っていれば、新しいコンプレッサーへ悪影響を与える可能性があります。

故障原因や汚染物を、交換後の冷凍サイクルへ持ち越さないことが重要です。

古いレシーバータンクに問題が残っていた場合のトラブル

異物や水分、流路制限などが残っている場合、次のようなトラブルにつながる可能性があります。

  • 異物が回路内を循環し、新しいコンプレッサーへ流入する
  • エキスパンションバルブなどの流路が詰まる
  • 冷媒循環が不足し、冷えが悪くなる
  • 水分による腐食や氷結が起こる
  • 冷凍サイクルの圧力に異常が生じる
  • コンプレッサーへの負担が増える

ただし、圧力異常や冷え不良だけでレシーバータンク不良と断定することはできません。コンプレッサー、コンデンサー、冷却ファン、冷媒量、エキスパンションバルブ、エバポレーターなどを含めて診断します。

レシーバーの詰まりは、前後の温度差と霜の位置を確認

レシーバー内部で冷媒の流れが妨げられると、入口と出口に温度差が生じることがあります。DENSOの診断表でも、低圧側の圧力低下に加え、レシーバー前後の温度差や出口側の強い霜付きが、詰まりを確認する手掛かりとして示されています。

圧力の数値とともに、入口・出口の配管温度、霜が付いている位置を記録します。単に「配管に水滴がある」という状態と区別して確認することが大切です。コンデンサー一体型など、車両によって構造が異なるため、対象車両の整備要領に沿って点検します。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

レシーバーとエキパンを交換するだけで大丈夫?

レシーバータンクとエキスパンションバルブの交換は重要ですが、それだけですべての再故障原因がなくなるわけではありません。

コンプレッサーが焼き付いたり、内部破損によって大量の金属粉が発生したりした場合は、回路内の汚染範囲を確認します。あわせて、故障を引き起こした作動条件にも注意が必要です。

汚染の確認

  • コンデンサー内部
  • 配管・ホース内部
  • エバポレーター側

作動条件の確認

  • 冷却ファンの作動と放熱状態
  • 高圧異常の有無
  • 冷媒の過充填・不足
  • コンプレッサーオイルの量・種類

交換部品の選定とあわせて、なぜ元のコンプレッサーが壊れたのかを確認することが、再故障防止につながります。

独立したレシーバータンクが見当たらない車両もある

車両によっては、レシーバードライヤー機能がコンデンサー側へ一体化されており、独立した筒型タンクが見当たらない場合があります。

サブクールコンデンサーには、側面のモジュレータ内部などに乾燥剤やフィルターを組み込んだ構造があります。

  • 乾燥剤カートリッジなどを交換できるもの
  • 単体交換ができず、コンデンサーASSYで交換するもの

独立したタンクがない場合も、対象車両の部品構成と整備要領を確認してください。交換できる範囲や作業方法は、車種・製品によって異なります。

レシーバータンクとアキュムレーターの違い

見た目が似ている場合がありますが、取り付け位置と主な役割が異なります。

部品 主な位置 主な役割
レシーバータンク
(レシーバードライヤー)
高圧側
コンデンサー後
液冷媒の保持・気液分離・ろ過・乾燥
アキュムレーター 低圧側
エバポレーター後
気液分離により、液冷媒が大量にコンプレッサーへ戻るのを防ぎ、主にガス冷媒を送る

一般的に、レシーバードライヤーはエキスパンションバルブ方式、アキュムレーターは固定オリフィス方式などで使用されます。

冷媒がR134aかR12かといった、冷媒の種類だけで区別するものではありません。対象車両のシステム構成で確認します。

太田美品通商のコンプレッサー交換時の条件


当社では、A/Cコンプレッサー交換時に、レシーバータンク(レシーバードライヤー)とエキスパンションバルブの同時交換を最低限必要としています。

旧部品に異物・水分・流路異常を残したままコンプレッサーだけを交換すると、新しく取り付けたコンプレッサーの再故障につながる可能性があるためです。

新品・リビルト品を正常に使用するために、同時交換とあわせて、冷凍サイクル全体の点検・整備を行うことが重要です。

まとめ|内部の異物や水分を持ち越さないために

  • レシーバータンクは、一般的なTXV方式ではコンデンサー後の高圧側にあります。
  • 液冷媒の一時貯蔵・気液分離・ろ過・乾燥を担います。
  • 乾燥剤の吸湿能力には限界があり、フィルターには異物が蓄積する可能性があります。
  • 内部をフラッシングして再使用する部品ではありません。
  • コンデンサー一体型では、車種によって交換可能な部品や作業方法が異なります。
  • アキュムレーターとは、位置と役割が異なります。
  • 当社では、コンプレッサー交換時にレシーバーとエキパンの同時交換を最低限必要としています。
  • 再故障防止には、交換だけでなく、故障原因と冷凍サイクル全体の確認が必要です。

レシーバータンクは目立たない部品ですが、冷媒回路内の異物や水分への対策を担っています。コンプレッサー交換時には、古い部品に残る問題を持ち越さないことが重要です。

車種ごとの構造・交換方法について

本記事は、代表的なエキスパンションバルブ式カーエアコンを中心に解説しています。レシーバータンク、レシーバードライヤー、モジュレータ、乾燥剤カートリッジ、アキュムレーターなどの構造・配置・交換方法は、車種・年式・冷媒・システム構成によって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書およびメーカー指定の作業内容を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンのコンデンサーとは?冷却方式・サブクール構造と高圧異常の確認ポイント

カーエアコンのコンデンサーをイメージした画像。レシーバー・サブクール構造と高圧異常の確認ポイントを紹介。

カーエアコン技術編・第3話

コンプレッサーから吐き出された高温・高圧のガス冷媒が、次に向かうのがコンデンサーです。

コンデンサーは、冷媒の熱を外気へ放出し、ガス冷媒を液冷媒へ変える熱交換器です。

冷え不良や高圧異常では、コンデンサーの放熱・通風状態も確認します。

コンプレッサーが正常でも、コンデンサーで十分に放熱できなければ、冷凍サイクルに影響します。

この記事では、コンデンサーの役割、前置き・サイド配置と冷却ファンの違い、レシーバーとサブクール方式の仕組み、故障診断で確認したいポイントを解説します。

コンデンサーの役割と「凝縮」の仕組み

エバポレーターで車室内の熱を吸収した冷媒は、低圧のガス状態でコンプレッサーへ戻ります。そこで圧縮され、高温・高圧のガス冷媒となってコンデンサーへ送られます。

コンデンサーでは、冷媒が外気へ熱を放出しながら、気体から液体へ変わります。この状態変化を「凝縮」と呼びます。

コンデンサー内の冷媒の変化

  1. 高温・高圧のガス冷媒が流入する
  2. 外気へ放熱し、凝縮が始まる
  3. 気体と液体が混在する状態になる
  4. さらに放熱し、高圧の液冷媒になる

コンデンサーの内部を流れる冷媒は、入口から出口まで同じ状態ではありません。十分に凝縮させるためには、コンデンサーに必要な量の空気を通し、熱を外へ逃がすことが重要です。

配置によって異なるコンデンサーの冷却方式

コンデンサーの取り付け位置は車両によって異なります。車両前面に配置するもののほか、トラックなどでは車体側面やキャブ周辺に配置する構成もあります。


前置き・サイド配置のコンデンサーと、走行風・共用ファン・専用ファンによる冷却を比較した図
図1:コンデンサーの配置と冷却方式の代表例。必要な風量が確保されているかを確認することが重要です。青い矢印は空気の流れる向きを表し、空気が冷える意味ではありません。コンデンサーでは冷媒が熱を放出し、通過する空気がその熱を受け取ります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

前置きコンデンサー

多くの乗用車では、コンデンサーは車両前方の冷却モジュール内に配置されています。走行中は前方から入る走行風を利用して放熱します。

停車中や低速走行時は走行風が少なくなるため、冷却ファンによる強制通風が重要になります。

専用ファンがなくても、共用ファンで冷却する構成がある

コンデンサー専用の電動ファンが見当たらなくても、ファンによる冷却を行っていないとは限りません。

車種によっては、ラジエーターファンやエンジン冷却ファンを利用して、ラジエーターとコンデンサーの両方へ通風します。

点検では、専用ファンの有無に加えて、コンデンサーに必要な風量が確保されているかを確認します。

サイドコンデンサー

トラックや一部の商用車では、車体側面やキャブ周辺などにコンデンサーを配置します。こうしたものをサイドコンデンサーと呼びます。

正面からの走行風を利用しにくい構成もあるため、専用電動ファンによる強制通風が特に重要になる車両があります。

ファンが回っていても、風量が十分とは限らない

サイドコンデンサー車で冷え不良や高圧異常が発生した場合は、コンデンサー本体とあわせて、次の項目を確認します。

  • ファンモーターの作動、回転数、回転方向
  • ファンブレードの損傷
  • ヒューズ・リレー・配線の状態
  • 電源電圧
  • ファン制御の状態
  • 圧力センサー/スイッチなどの入力
  • 通風経路の状態と実際の風量

回転数不足や通風経路の異常によって、ファンが回っていても必要な放熱能力を確保できていない場合があります。

走ると冷えるのに、停車すると冷えにくい場合

走行中は冷えるのに、信号待ちやアイドリングでは冷えにくい場合、停車時に必要な強制通風を確保できていない可能性があります。

冷却ファン・ファン制御・コンデンサーの目詰まり・周辺の通風状態を確認します。ただし、この症状だけでファン不良と断定せず、冷媒量やサイクル全体の状態も含めて診断します。

「板コンデンサー」とマルチフロー構造

整備現場では、サイドコンデンサーと区別する意味などで、前面に配置された平板状のコンデンサーを「板コンデンサー」と呼ぶことがあります。

「板コンデンサー」は、統一された正式な構造分類名ではありません。

実際の構造を確認するときは、冷媒通路の構造を示す「マルチフロー」や、過冷却部を持つ「サブクール」といった特徴を区別して確認します。

マルチフローコンデンサーは、多数の細いチューブへ冷媒を分けて流す構造です。細い冷媒通路と多数のフィンによって熱交換面積を確保し、コンパクトなサイズで放熱できるよう設計されています。

一方、冷媒通路が細いため、コンプレッサーの内部破損などで金属粉や異物が流入した場合は、内部汚染に注意が必要です。

外部の目詰まりと、内部の詰まり・汚染

外部の目詰まり:空気の通り道を確認する

虫、泥、ホコリ、枯れ葉、綿ぼこり、油分を含んだ汚れ、フィン潰れなどによって、通風が悪くなることがあります。空気が十分に通らなければ、放熱能力が低下します。

コンデンサーとラジエーターが近接している車両では、両者の間に汚れが溜まることもあります。正面から見える表面だけでなく、通風経路全体を確認します。

内部の汚染:金属粉や摩耗粉に注意する

コンプレッサーが焼き付いたり内部破損したりすると、金属粉や摩耗粉が冷媒回路へ流出することがあります。これらがコンデンサーの細い通路へ入り込むと、流路制限や詰まりの原因になる可能性があります。

構造によっては内部を十分に洗浄することが難しいため、汚染の程度やメーカーの指示により、コンデンサー交換が必要になる場合があります。

レシーバータンク/レシーバードライヤーの役割

従来型のレシーバーサイクルでは、コンデンサーの後にレシーバータンク(レシーバードライヤー)が配置されます。

主な役割

  1. 液冷媒を一時的に保持する
  2. 気体と液体を分離する
  3. エキスパンションバルブへ液冷媒を安定して供給する
  4. ストレーナ/フィルターで異物を取り除く
  5. 乾燥剤で水分を吸着する

水分を取り除く理由

冷媒回路への水分混入は、内部腐食、オイルや冷媒の劣化反応、膨張部付近での凍結、流路制限などの原因になり得ます。そのため、レシーバードライヤーには乾燥剤(デシカント)が使用されています。

配管を外したまま長時間放置すると、外気中の湿気が入り込みます。部品交換時は、配管や部品の開口部をできるだけ速やかに塞ぐことが重要です。

レシーバーとアキュムレーターの違い

見た目が似ていても、配置と役割が異なります。

部品 配置 主な役割
レシーバードライヤー 高圧側 液冷媒の保持、気液分離、乾燥、ろ過
アキュムレーター 低圧側 気液分離により、液冷媒がコンプレッサーへ大量に戻るのを防ぐ

サブクールコンデンサーとモジュレータ

コンデンサーの後に独立したレシーバーを配置する方式のほかに、レシーバー/ドライヤー機能と過冷却部をコンデンサー側へ組み込んだ、サブクールコンデンサーがあります。


別体レシーバーを使用する方式と、モジュレータ・過冷却部を備えるサブクールコンデンサー方式の比較図
図2:従来型とサブクールコンデンサー方式の冷媒の流れと各部の役割を比較した概念図。実際の構成は車種・年式・メーカーによって異なります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

モジュレータの役割

サブクールコンデンサーには、側面などにモジュレータと呼ばれる気液分離部を一体化した構造があります。

モジュレータは、従来型のレシーバードライヤーに近い役割を持ち、気液分離、冷媒保持、異物除去、水分吸着を行います。

乾燥剤やフィルターを交換できるタイプがある一方、内部だけを交換できず、コンデンサーASSYで交換する構造もあります。対象製品の構造と整備手順を確認してください。

サブクール=過冷却とは?

過冷却とは、凝縮した液冷媒を、その圧力に対応する凝縮温度よりも低い温度まで冷却することです。

代表的な冷媒の流れ

  1. 凝縮部でガス冷媒を液化する
  2. モジュレータで気体と液体を分離する
  3. 過冷却部で液冷媒をさらに冷却する
  4. エキスパンションバルブへ送る

液冷媒を過冷却することで、エキスパンションバルブへ安定した液冷媒を供給しやすくなります。

サブクール度は、車種や条件に合わせて判断する

専門的な診断では、サブクール度(過冷却度)を確認することがあります。

サブクール度 = 凝縮飽和温度 − コンデンサー出口の液冷媒温度

適正値は、冷媒、車種、システム構造、運転条件によって異なります。すべての車両を同じ温度差で正常・異常と判断することはできません。

サブクール度や気泡だけで、冷媒を追加しない

過冷却度は大きければ大きいほどよい、というものではありません。サブクール方式では、サイトグラスの気泡が消える点と適正充填量が一致しない場合があります。気泡が消えたことだけで充填を終了したり、過冷却度を増やす目的で追加したりせず、車両指定量を重量管理します。

高圧異常は、放熱不足以外でも起こる

高圧側の圧力は、コンプレッサーだけで決まるものではありません。コンデンサーで十分に放熱できなければ凝縮状態に影響し、高圧側の圧力上昇につながります。

放熱不足による圧力上昇の例

冷却ファン不良 → 風量不足 → 放熱不足 → 凝縮状態の悪化 → 高圧上昇

冷媒の過充填

冷媒は多いほど冷えるものではありません。過充填は、高圧側の圧力が異常に上昇する原因になります。

冷えないからといって感覚やサイトグラスだけで追加せず、車両メーカー指定の充填量を基準に管理することが重要です。

空気などの非凝縮ガスの混入

冷媒回路に空気などが混入すると、通常の作動条件では冷媒のように凝縮せず、高圧側の圧力上昇などの原因になります。

部品交換後は、適切な真空引きで空気や水分を取り除いたうえで、指定量の冷媒を充填することが重要です。

高圧異常で確認したい項目

  • 冷媒の過充填
  • コンデンサーの放熱不足
  • 冷却ファンの不良や風量不足
  • フィンの目詰まりや通風経路の異常
  • コンデンサー内部の汚染・流路制限
  • 空気などの非凝縮ガスの混入
  • 高圧側配管の流路制限
  • 外気温や運転条件
高圧が高いという理由だけで、コンプレッサー不良と断定しないことが重要です。

圧力・温度・風量を組み合わせて診断する

高圧・低圧ゲージは重要な診断材料ですが、圧力は冷凍サイクルの状態を示す情報の一つです。次の項目を組み合わせて判断します。

  • 高圧・低圧の測定値
  • 外気温と運転条件
  • 冷媒充填量
  • コンデンサー入口・出口の温度
  • 冷却ファンの作動と実際の通風状態
  • 配管温度
  • エバポレーター側の状態

サブクールシステムでは、必要に応じて過冷却状態も確認します。測定方法と判定は、対象車両の整備要領書に従ってください。

高圧・低圧が両方高いときに確認すること

高圧・低圧がともに高い場合、DENSOの診断表では冷媒の過充填やコンデンサーの冷却不足が挙げられています。まず充填量の記録を確認し、コンデンサーのフィンに汚れや目詰まりがないか、冷却ファンが正常に作動して風が通っているかを確認します。

冷媒量の問題と放熱の問題では、必要な作業が異なります。原因に応じた処置をしたあと、整備要領の測定条件で高圧・低圧と冷え具合を再確認します。

技術参考:DENSO コンプレッサー診断表

高圧・低圧と症状から確認箇所を探す早見表

コンプレッサー交換時にもコンデンサーを確認する理由

高圧側の圧力が異常に上昇すると、コンプレッサーの駆動負荷が大きくなり、本体やマグネットクラッチに過大な負担を与える可能性があります。

故障につながる流れの例

コンデンサーの放熱不足 → 高圧異常 → コンプレッサーへの過大負荷 → コンプレッサー/クラッチの損傷

このような場合、コンプレッサーだけを交換しても、放熱不足という原因が残ってしまいます。

また、コンプレッサー内部の破損によって金属粉が流出していれば、コンデンサー内部も汚染されている可能性があります。

部品交換とあわせて、故障の原因を確認することが重要です。

コンデンサーの取り付け位置、風の当たり方、実際の放熱状態まで含めて、冷凍サイクル全体を確認します。

まとめ|コンデンサーは放熱と通風が重要

  • コンデンサーは放熱により、高温・高圧のガス冷媒を液冷媒へ変えます。
  • 前置き・サイド配置やファン構成によって、冷却の方法が異なります。
  • 専用ファンの有無や回転だけでなく、実際の風量と通風経路を確認します。
  • 「板コンデンサー」は現場で使われる呼称で、正式な構造分類名ではありません。
  • 外部の目詰まりと、内部の汚染・流路制限を分けて確認します。
  • レシーバードライヤーは、冷媒保持・気液分離・乾燥・ろ過を担います。
  • サブクール方式では、モジュレータや過冷却部を組み込む構成があります。
  • 冷媒過充填や非凝縮ガスの混入も、高圧異常の原因になります。
  • 圧力だけで部品不良を断定せず、温度・風量・充填量などをあわせて診断します。

冷え不良や高圧異常では、コンデンサーが十分に熱を外へ逃がせているかを確認することが重要です。故障部品とあわせて原因を調べることが、修理後の再発を防ぐうえでも大切になります。

次回のカーエアコン技術編

第4話:レシーバータンクの役割と同時交換の理由
液冷媒の保持・気液分離・ろ過・乾燥と、交換時の確認事項を解説します。

車種ごとの構造・指定値について

本記事は、一般的・代表的なカーエアコンの冷凍サイクルを中心に解説しています。コンデンサーの配置、ファン構成、レシーバー/モジュレータ構造、冷媒、適正圧力、充填量、サブクール度などは、車種・年式・メーカー・システムによって異なります。

実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書、メーカー指定値、冷媒・オイルの指定を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

ご注文前に、交換部品の適合確認を

車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンのコンプレッサーとは?種類・容量制御・故障診断と交換時の注意点

カーエアコン用コンプレッサーのイラストと、種類・構造・容量制御、故障診断と交換時の注意点を紹介するアイキャッチ

カーエアコン技術編・第2話

カーエアコンの冷凍サイクルの中で、冷媒を圧縮し循環させる中心的な役割を担っているのがA/Cコンプレッサーです。

「エアコンが冷えない」
「コンプレッサーから異音がする」
「マグネットクラッチが入らない」

こうした症状が出ると、まずコンプレッサー故障を疑われることがあります。

しかし、「エアコンが冷えない=コンプレッサー不良」ではありません。

カーエアコンは、コンプレッサー・コンデンサー・レシーバー・エキスパンションバルブ・エバポレーター・冷却ファン・冷媒・オイル・各種制御など、複数の要素が正常に機能して初めて冷えます。

今回はカーエアコン技術編・第2話として、コンプレッサーの役割、構造の違い、固定容量・可変容量の仕組み、マグネットクラッチ、電磁制御バルブ、故障診断、交換時の注意点まで詳しく解説します。

コンプレッサーは何をしている部品?

エバポレーターで車室内の熱を吸収した冷媒は、低圧のガス冷媒となってコンプレッサーへ戻ってきます。

コンプレッサーはこの冷媒を吸入して圧縮し、高温・高圧のガス冷媒としてコンデンサーへ送り出します。

低圧のガス冷媒
↓
コンプレッサーで圧縮
↓
高温・高圧のガス冷媒
↓
コンデンサーへ

コンプレッサー自体が直接「冷気」を作っているわけではありません。

冷媒を圧縮して高圧側へ送り出し、冷凍サイクル内に高圧側と低圧側を作ることで、コンデンサーでの凝縮、エキスパンションバルブでの減圧、エバポレーターでの蒸発を成立させています。

つまりコンプレッサーは、冷媒を圧縮・循環させ、冷凍サイクルを成立させる中核部品です。

コンプレッサーはすべて同じ構造ではない

カーエアコン用コンプレッサーには、複数の圧縮方式があります。

大きく分けると、ピストンを往復させて圧縮する「ピストン式(往復動式)」と、ローターやスクロールを回転・旋回させる「回転式」があります。

クランク式、斜板式、スルーベーン式、スクロール式のコンプレッサー構造を比較した図
図1:カーエアコン用コンプレッサーの代表的な構造を比較した概念図。クランク式、斜板式、スルーベーン式、スクロール式を紹介しています。実際の構造や採用方式は車種・メーカー・年式によって異なります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

ピストン式(往復動式)

ピストン式は、ピストンを往復運動させることで吸入 → 圧縮 → 吐出を繰り返す方式です。

代表的なものとして、クランク式や斜板式があります。

斜板式

シャフトに対して斜めに配置された斜板(スワッシュプレート)の動きを利用し、複数のピストンを往復させます。

斜板式には固定容量タイプだけでなく、斜板角を変えてピストンストロークを変化させる可変容量タイプもあります。

例えばDENSOでは、デュアルスワッシュプレート式に固定容量タイプ、シングルスワッシュプレート式に可変容量タイプがあります。

スルーベーン式

スルーベーン式は回転式コンプレッサーの一つです。

ローターに設けられたベーンによって圧縮室を形成し、ローターの回転に伴う容積変化によって冷媒を圧縮します。

ピストンを往復させる斜板式とは、圧縮方法そのものが異なります。

スクロール式

スクロール式は、固定スクロールと旋回スクロールという2つの渦巻き形状を組み合わせて冷媒を圧縮する方式です。

冷媒は外周側から取り込まれ、旋回スクロールの動きによって中心方向へ移動しながら圧縮されます。

自動車用スクロールコンプレッサーでは、DENSOやSandenのほか、三菱重工系のスクロールコンプレッサーも広く知られています。

三菱重工ではカーエアコン用に独自の3Dスクロール技術を採用したコンプレッサーを開発し、ベルト駆動式だけでなくハイブリッド車・EV向け電動コンプレッサーにもスクロール技術を展開しています。

構造と「容量制御」は別に考える

斜板式・ベーン式・スクロール式というのは、「どのような構造で冷媒を圧縮するか」という分類です。

一方、固定容量式・可変容量式は、「どのように吐出量を調整するか」という別の分類です。

圧縮機構
斜板式・ベーン式・スクロール式など

容量制御
固定容量式・内部制御式可変容量・外部制御式可変容量など

固定容量式・可変容量式の違い

カーエアコン用コンプレッサーの固定容量式、内部制御式の可変容量式、電磁制御バルブを使う外部制御式の比較
図2:固定容量式と可変容量式の容量制御を比較した概念図。可変容量式は内部制御式と外部制御式に分けて紹介しています。採用方式や電磁クラッチの有無は車種・メーカー・年式によって異なります。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

固定容量式

固定容量式は、基本的に1回転あたりの吐出量が一定です。

マグネットクラッチを使用するタイプでは、コンプレッサーをON/OFFすることで冷房能力を調整する方式があります。

内部制御式可変容量

内部制御式の可変容量斜板式コンプレッサーでは、内部の圧力状態などを利用して斜板角を変化させ、ピストンストロークと吐出量を調整します。

冷房負荷が大きい場合は吐出量を増やし、負荷が小さい場合は吐出量を減らすことができます。

外部制御式可変容量(電磁制御バルブ式)

外部制御式では、電磁制御バルブ(コントロールバルブ/ECV)を使用して容量を調整します。

車両側のエアコンECUなどが、温度・冷媒圧力・エンジン負荷などの情報をもとに、コントロールバルブへ電気信号を送ります。

可変容量斜板式では、その制御によってコンプレッサー内部の圧力バランスを変え、斜板角を変化させて吐出量を調整します。

外部制御式では、コンプレッサー本体が機械的に回転していても、制御バルブや制御信号に異常があれば十分な吐出量を得られないことがあります。

そのため、「プーリーが回っているからコンプレッサーは正常」とは判断できません。

マグネットクラッチ式とクラッチレス式

エンジンの回転をコンプレッサーへ伝える方法の一つに、マグネットクラッチを使用する方式があります。

作動条件が整い、クラッチのコイルへ通電すると、クラッチプレートが吸着してコンプレッサーシャフトへ駆動力が伝わります。

一方、外部制御式可変容量コンプレッサーには、マグネットクラッチを持たないクラッチレス式もあります。

この場合はコンプレッサーを機械的に回転させながら、コントロールバルブによって実際の吐出量を変化させます。

したがって、「クラッチがカチッと入らない=故障」という従来型の見方だけでは診断できません。

マグネットクラッチ不良では何が起きる?

マグネットクラッチ式で不具合が発生した場合、フィールドコイルの断線・焼損などが確認されることがあります。

コイルが断線すれば、通電しても磁力が発生せず、クラッチプレートを吸着できません。

また、コイルやクラッチに焼損が見られる場合は、クラッチ部分だけを原因と決めつけないことが重要です。

コイル焼損・クラッチ焼損の背景に、冷凍サイクル側の異常が隠れている場合があります。
  • 異常高圧
  • コンデンサーの放熱不足
  • 冷却ファン不良
  • 冷媒過充填
  • コンプレッサー内部ロック
  • クラッチ滑り
  • 電源電圧の異常

特に高圧側が異常に高くなると、コンプレッサーの駆動負荷が大きくなります。その負荷によってクラッチが滑ると、摩擦熱でクラッチ周辺が損傷することがあります。ただし、焼損の原因は異常高圧だけではありません。電源電圧の低下、クラッチのすき間、配線・接続部の状態、頻繁な接続・切離しも確認します。

焼けたクラッチやコイルだけを交換しても、根本原因が残っていれば再発する可能性があります。

クラッチが入らないときは、停止指令と電気系統も確認する

圧力異常などに対する保護制御で、クラッチへの通電が止められている場合があります。作動指令の有無、通電時の電圧、配線・アース、クラッチのすき間、コイルの状態を整備要領に沿って点検し、圧縮機構の故障と切り分けます。保護回路を短絡して強制作動させないでください。
技術参考:Sanden SDサービスガイド(クラッチ点検・滑りの説明)。記載の個別数値は対象製品用であり、全車共通ではありません。

「冷えない=コンプレッサー不良」ではない

エアコンが冷えない原因は、コンプレッサーだけではありません。次のような原因でも冷房能力は低下します。

  • 冷媒不足
  • 冷媒過充填
  • コンデンサーの放熱不足
  • 冷却ファン不良
  • レシーバー/ドライヤーの詰まりや機能不良
  • エキスパンションバルブの不具合
  • 配管内の詰まり・異物
  • 電気系・センサー・制御系の異常
  • 外部制御式コンプレッサーのコントロールバルブや制御信号の異常
高圧・低圧、冷媒量、放熱状態、制御状態などを確認し、コンプレッサー不良と判断できる根拠を持つことが重要です。

コンプレッサーオイルも非常に重要

コンプレッサー内部では、方式に応じてピストン・斜板・シュー・ベアリング・ベーン・スクロールなどが高速で作動しています。

これらを潤滑・冷却するために、コンプレッサーオイルが使用されています。

オイル不足や不適合なオイルの使用は、潤滑不良や焼き付きなど重大な故障の原因になります。

「R134aだからPAGなら何でもいい」「電動コンプレッサーだから必ずこのオイル」とは判断しないでください。

使用するオイルは、車両メーカー・コンプレッサーメーカーが指定する種類と量を確認することが基本です。

電動コンプレッサー

ハイブリッド車やEVでは、エンジン停止中でもエアコンを作動させるため、エンジンのベルトではなく高電圧電源と電動モーターで駆動する電動コンプレッサーを採用した車両があります。

電動コンプレッサーでは、スクロール式が広く採用されています。

圧縮機構だけでなく、モーター・インバーター・高電圧回路まで含めた構造になるため、ベルト駆動のコンプレッサーとは診断方法や取扱いが異なります。

コンプレッサー交換で一番大切なのは「なぜ壊れたか」

壊れたコンプレッサーを新品やリビルト品へ交換するだけで、修理が完了するとは限りません。なぜ故障したのかを確認する必要があります。

確認したい主な原因
  • 異常高圧
  • コンデンサーの放熱不足
  • 冷却ファン不良
  • 冷媒過充填・不足
  • コンプレッサーオイル不足
  • 不適合オイル
  • エキスパンションバルブ不良
  • 冷凍サイクル内の詰まり
  • 異物や金属粉の混入
  • 配管内部の汚染

原因を残したまま取り付けると、新しいコンプレッサーまで再び故障する可能性があります。

当社ではレシーバーとエキスパンションバルブを最低限同時交換

太田美品通商では、A/Cコンプレッサー交換時に、レシーバー(レシーバータンク/ドライヤー)とエキスパンションバルブの同時交換を最低限必要としています。

ただし、この2点を交換すればすべて解決するという意味ではありません。

故障した原因を取り除いてから、新しいコンプレッサーを取り付けることが重要です。

焼き付きなどでコンプレッサー内部から金属粉・異物が流出している場合は、冷媒回路全体の汚染状態を確認する必要があります。

サイクル洗浄や、構造上十分に洗浄できない部品の交換が必要になる場合もあります。

コンプレッサー交換では、冷凍サイクル全体を正常に戻す

コンプレッサー交換は、
冷凍サイクル全体を正常な状態へ戻す修理です。

故障原因を確認し、必要な関連部品を交換し、異物や詰まりがないことを確認したうえで、指定されたオイル・冷媒量で組み上げます。

交換したコンプレッサーを正常に使用するためには、こうした周辺の確認と整備も重要です。

まとめ|構造と制御方式を理解して診断する

今回のポイント
  • コンプレッサーは冷媒を圧縮・循環させる中核部品
  • 圧縮機構にはピストン式・ベーン式・スクロール式などがある
  • 「構造」と「容量制御」は別の分類
  • 固定容量式、内部制御式可変容量、外部制御式可変容量がある
  • 外部制御式では電磁制御バルブ(ECV)と制御信号を確認する
  • マグネットクラッチ式とクラッチレス式では診断方法が異なる
  • コイルやクラッチの焼損では、高圧異常などの背景原因も確認する
  • 冷えないという症状だけでコンプレッサー不良とは断定できない
  • 当社では交換時にレシーバーとエキスパンションバルブを最低限同時交換する
  • 故障した原因を特定し、冷凍サイクル全体を正常に戻すことが重要

コンプレッサーの種類や制御方式を理解せず、従来型と同じ感覚で診断すると、正常なコンプレッサーを故障と判断してしまう可能性もあります。

カーエアコン修理では、冷凍サイクル全体と制御方式を理解して診断することが重要です。

次回のカーエアコン技術編

コンデンサー・レシーバー・サブクールコンデンサーの役割

コンプレッサーで高温・高圧になった冷媒が、どのように放熱・凝縮されるのかを詳しく解説します。

ご注意

本記事では、カーエアコン用コンプレッサーの代表的な構造・制御方式を解説しています。

実際の構造、容量制御方式、使用冷媒、コンプレッサーオイル、交換手順、関連部品の交換条件などは、車種・年式・コンプレッサー型式によって異なります。

実車の点検・修理時は、対象車両の整備要領書およびコンプレッサーメーカーの指定事項を確認してください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

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車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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カーエアコンの仕組みとは?冷凍サイクルと5つの主要部品の役割

カーエアコンが冷える仕組みを紹介するアイキャッチ。吹き出し口から車内へ広がる冷風のイメージ

カーエアコン技術編・第1話

車のエアコンをONにすると、吹き出し口から冷たい風が出てきます。では、カーエアコンはどのように空気を冷やしているのでしょうか。

カーエアコンは、車室内の熱を冷媒に吸収させ、その熱を車外へ放出することで冷房を行います。

この仕組みを支える冷媒の循環と状態変化を「冷凍サイクル」といいます。

今回は、コンプレッサー、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターの役割と、冷媒が循環する仕組みを解説します。

基本例として、レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な構成を取り上げます。実際の構造や制御方法は、車種やシステムによって異なります。

冷媒は5つの主要部品を通って循環する

代表的なレシーバーサイクルでは、冷媒は次の順番で流れ、再びコンプレッサーへ戻ります。

  1. コンプレッサー:ガス冷媒を圧縮する
  2. コンデンサー:熱を車外へ放出し、冷媒を液化させる
  3. レシーバータンク:液冷媒を一時的に蓄える
  4. エキスパンションバルブ:冷媒を減圧し、流量を調整する
  5. エバポレーター:空気から熱を吸収し、冷媒を蒸発させる

エバポレーターを出たガス冷媒は、再びコンプレッサーに吸い込まれます。

コンプレッサー、コンデンサー、レシーバータンク、エキスパンションバルブ、エバポレーターを循環する冷媒の流れと状態変化
レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な冷凍サイクル。冷媒が圧縮・凝縮・減圧・蒸発を繰り返し、車室内の熱を車外へ運びます。
画像を押すと、大きな図を別タブで確認できます。

冷媒は、圧力・温度・状態を変えながら熱を運ぶ

冷媒は、同じ状態のまま循環しているわけではありません。サイクル内で圧力や温度が変わり、気体・液体・両方が混在した状態へと変化します。

工程 主な部品 冷媒の変化
圧縮 コンプレッサー 低圧のガスから、高温・高圧のガスになる
凝縮 コンデンサー 熱を放出し、ガスから高圧の液体へ変化する
減圧 エキスパンションバルブ 高圧の液体から、低温・低圧の液とガスが混在した状態になる
蒸発 エバポレーター 空気から熱を吸収して液体が蒸発し、低圧のガスになる

この「圧縮・凝縮・減圧・蒸発」を繰り返すことで、車室内の熱を車外へ運んでいます。

① コンプレッサー|ガス冷媒を圧縮する

コンプレッサーは、エバポレーターから戻った低圧のガス冷媒を吸い込み、圧縮して高温・高圧のガス冷媒にします。

圧縮された冷媒は、次のコンデンサーへ送り出されます。

コンプレッサーの役割は、冷媒を圧縮し、サイクル内を循環させることです。

コンプレッサーが直接、冷たい空気を作っているわけではありません。

コンプレッサーには、斜板式、スルーベーン式、スクロール式など、さまざまな構造があります。コンプレッサーの種類や容量制御方式、交換時の注意点は、カーエアコンのコンプレッサー解説もご覧ください。

② コンデンサー|冷媒の熱を車外へ放出する

コンデンサーには、コンプレッサーから高温・高圧のガス冷媒が入ります。

走行風や冷却ファンの風によって熱が車外へ放出され、冷媒はガスから液体へ変化していきます。この変化を「凝縮」といいます。

コンデンサーは、冷媒が運んできた熱を車外へ放出する熱交換器です。

放熱不足や冷却ファンの不具合は、冷媒圧力や冷房性能に影響します。冷却方式と高圧異常の確認ポイントは、コンデンサーの解説をご覧ください。

③ レシーバータンク|液冷媒を一時的に蓄える

コンデンサーで液化した冷媒は、レシーバータンクへ送られます。

レシーバータンクは、冷房負荷に応じて冷媒を供給できるよう、液冷媒を一時的に蓄えます。内部にストレーナや乾燥剤を備え、異物や水分を取り除く構造のものもあります。

ストレーナ
冷媒回路内の異物などを取り除きます。

乾燥剤
冷媒回路内の水分を吸着します。

すべての車両に、独立したレシーバータンクがあるわけではありません。車種によっては、コンデンサーと気液分離器(モジュレータ)を組み合わせたサブクールコンデンサー方式などが採用されています。構造や交換時の確認点は、レシーバータンクの役割と同時交換についてもご覧ください。

④ エキスパンションバルブ|冷媒を減圧し、流量を調整する

レシーバータンクを通過した高圧の液冷媒は、エキスパンションバルブへ送られます。

冷媒がバルブの絞りを通過すると圧力が下がり、低温・低圧の液とガスが混在した状態となってエバポレーターへ入ります。

また、エキスパンションバルブは、エバポレーターの状態に応じて冷媒の流量を調整します。構造や不具合時の確認点は、エキスパンションバルブの解説にまとめています。

主な役割は2つです。
  • 高圧の液冷媒を減圧する
  • エバポレーターへ送る冷媒量を調整する

⑤ エバポレーター|空気の熱を冷媒に吸収させる

エキスパンションバルブを通過した低温・低圧の冷媒は、エバポレーターへ入ります。

ブロワによって送られた空気がエバポレーターを通過すると、その空気の熱が冷媒に吸収されます。熱を奪われた空気は温度が下がり、車室内へ送られます。

一方、冷媒は熱を吸収して蒸発し、ガスとなってコンプレッサーへ戻ります。

エバポレーターは、空気から熱を吸収する熱交換器です。除湿・凍結・冷え不良の確認点は、エバポレーターの解説もご覧ください。

カーエアコンが除湿できる理由

エバポレーターには、空気を冷やすとともに除湿する働きがあります。

湿った空気が冷たいエバポレーター表面に触れて冷やされると、条件に応じて空気中の水分が結露し、水滴になります。この水はドレンホースを通って車外へ排出されます。

夏場、エアコンを使用した車の下に水が落ちていることがあります。正常なエアコン作動による結露水であれば、異常ではありません。

この除湿作用は、雨天時などの窓ガラスの曇り取りにも役立ちます。

高圧側と低圧側はどこで分かれる?

冷凍サイクルでは、コンプレッサーで冷媒の圧力が上がり、エキスパンションバルブで圧力が下がります。この2つを境に、高圧側と低圧側に分けて考えます。

区分 範囲 主な冷媒の状態変化
高圧側 コンプレッサー吐出側から、エキスパンションバルブ入口側まで 高温・高圧のガスから、高圧の液体へ
低圧側 エキスパンションバルブ出口側から、コンプレッサー吸入側まで 低温・低圧の液とガスが混在した状態から、低圧のガスへ

高圧側と低圧側の圧力は、故障診断の重要な情報です。ただし、圧力だけで故障部品を断定することはできません。

冷媒圧力は、外気温、コンプレッサーの作動条件、冷媒量、コンデンサーの放熱状態、冷却ファン、エキスパンションバルブの状態などによって変化します。

冷媒は多く入れるほど冷えるわけではない

カーエアコンには、車両ごとに指定された適正な冷媒量があります。

冷媒が不足している場合
エバポレーターへ十分な冷媒を供給できず、冷房能力が低下する原因になります。

冷媒を入れすぎた場合
高圧側の圧力が異常に高くなる原因となり、冷房性能の低下や、コンプレッサー・配管・コンデンサーなどへの過大な負担につながる可能性があります。

冷媒は、対象車両の指定充填量と整備要領に従って充填することが基本です。

「冷えないから、とりあえず追加する」という判断では、冷媒量が適正になるとは限りません。

サブクールコンデンサー方式などでは、従来のレシーバーサイクルと冷媒量の確認方法が異なる場合があります。対象車両の方式と指定値を確認してください。

冷えないときは、冷凍サイクル全体を確認する

コンプレッサーが正常でも、次のような原因で冷房能力が低下することがあります。

  • コンデンサーが十分に放熱できていない
  • 冷却ファンが正常に作動していない
  • 冷媒量が適正でない
  • エキスパンションバルブに異常がある
  • エバポレーターが正常に熱交換できていない
  • 冷媒回路や制御系に異常がある
「エアコンが冷えない」という症状だけで、コンプレッサー故障と決めつけることはできません。

冷媒量、圧力、放熱状態、関連部品の作動などを合わせて確認し、原因を絞り込むことが大切です。

冷凍サイクルを理解することが、診断の第一歩

カーエアコンは、冷媒が圧縮・凝縮・減圧・蒸発を繰り返し、車室内の熱を車外へ運ぶことで冷房を行います。

5つの主要部品の役割
  • コンプレッサー:ガス冷媒を圧縮する
  • コンデンサー:車外へ熱を放出して冷媒を凝縮させる
  • レシーバータンク:液冷媒を蓄え、ストレーナや乾燥剤で異物・水分を除去する
  • エキスパンションバルブ:冷媒を減圧し、流量を調整する
  • エバポレーター:冷媒を蒸発させ、空気から熱を吸収する

どこかが正常に機能しなければ、冷房性能が低下する可能性があります。部品交換を判断する際も、冷凍サイクル全体の状態を確認することが重要です。

次回のカーエアコン技術編

コンプレッサーとはどんな部品?種類・構造・役割を詳しく解説

冷凍サイクルの中心となるコンプレッサーについて、構造や方式の違いを解説します。

本記事の説明範囲

本記事は、レシーバータンクとエキスパンションバルブを使用する代表的な構成を中心に説明しています。

実際の構造、使用冷媒、制御方法、圧力、冷媒充填量は、車種・年式・システムによって異なります。実車の点検・修理では、対象車両の整備要領書、メーカー指定値、使用冷媒、指定充填量をご確認ください。

部品の適合確認には、品番・車両情報・現品写真をご用意ください。車台番号は省略せず全桁お知らせください。

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車両情報、ラベル・刻印の品番、部品全体と接続部の写真で確認します。

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